001 始まり
Another life 通称"AL"
ここ10数年ではやり始めた意識を電脳世界に沈め電脳空間で遊ぶ、いわゆるフルダイブ型のVRゲームの一種だ。
内容としては剣と魔法のMMORPGで特筆する特徴としては魔力をそこにあると感じ操れるという点だろう。
AIも最先端のものを入れているようでNPCである住人たちはまるでそこに生きているように生活しているようだ。
β版をプレイした人たちは異世界が確かにそこにはあったなんて言わせるほどらしい。
またこのゲームは多種多様な世界各国の一流会社が協力して作っているようで、国からいらしされて作られた、らしい。
「んで、俺にそのβの話を自慢しに来たのか」
「黒音は僕を何だと思ってるの?」
そう苦笑いする兄貴、邑上白音はそういうと後ろあった鞄から一つのカードを取り出した。
「はい、これが黒音の分のダウンロード用のパスコードね」
「いや、これどうしたんだよ。まだ発売前だろ?」
「ほらβ版の活躍とかそこら辺の最優秀賞を貰ってね、色々すごいものがあったんだけどどうせなら兄妹四人でしたいと思ってこれを選んだんだ」
「他が気になるが……、にしても朱音や蒼音にもこの話したのか?、二人とも忙しいだろ」
俺には双子の妹がいて長女が頭脳明晰で某有名高校に行っている朱音で、二女が運動神経抜群で薙刀部で有名な高校に推薦で入っている蒼音だ。
「したよ、一応時間の引き延ばしも起きてるからこっちの一秒はあっちで三秒に延ばされてるし、久しぶりに四人で遊びたいんだって」
「無理やり押し付けたんじゃなくてよかったよ」
「だからそんなことはしないってば。あ、ゲームの内容とかはあっちでだいたい教えてくれるから心配しなくていいからね」
「はいよ、兄貴はなんかこの後食べるか?、適当な男飯しか作れないが」
「いや、そこまでお世話にならないよ。この後帰ってレポート作らなきゃだしね」
「さすが文武両道の兄貴だな」
「ありがとう、それじゃまたあっちでね」
そういうと兄貴はいそいそと帰っていった。
「ダウンロードだけはできるんだっけか」
配信やサービス開始は一か月後の学生が夏休みに入ってからだがダウンロードだけは済ませれるようなのでパスコードを入力して事前の準備や設定だけは終わらせる。
普段別のゲームをしているのでそこらへんはサクサクと終わらせる。
その後は普段の日常を過ごしているとあっという間にサービス開始の日になっていた。
キャラメイク等が先にできるようなので時間に余裕を持たせVR用のヘッドギアを頭にかぶり別途に横になった
「ログイン」
そうつぶやくと俺の意識は電子の海へ沈んでいった。
目を開けるとメインメニューの真っ白な部屋のロビーに立っていた。
そしてそのままダウンロードしていたAL用のウィンドウをノックする。
するとパリンというガラスの砕ける音とともに白い空間は砕け真っ暗な空間に変わる。
『Another lifeを起動確認。認証中、認証を確認しました。ようこそ黒音様、ただいま初期設定用に案内用妖精を派遣します』
機械音の案内がした後目の前に小さな光が固まり小さな羽の生えた奇麗なフランス人形のような少女が現れる。
髪は金髪だが服装はいわゆるゴスロリの黒くてフリフリした感じだ。
「初めまして異界人様、私は案内役の妖精リリーと申します。最初にお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか。ここでおしゃった名前があちら側である地球ではないもう一つの世界"ベラ"での名前になりますので注意してください」
「クオンだ」
「クオン様ですね、次に容姿を決めていきましょう。外部に容姿のデータが発見されましたが、ダウンロードしますか?」
「ああ、頼む」
頷くと目の前に姿鏡が出てきた。
そしてそこには目つきが悪く不機嫌そうな顔をした黒髪の男性、まぁ俺が立っている。
服装に関してはいかにも初心者冒険者という風貌で、申し訳程度の皮防具に腰には小さなナイフと袋がついていた。
「手動で変更させるか言ってくださればこちらで違和感の出ない程度に変更いたしますがどういたしましょう」
「じゃあ頼んでいいか?」
「はい、何なりとどうぞ」
「じゃあ髪の毛を後ろの一房だけ長くして目を少し暗めのルビー色にできるか?」
「このような感じでどうでしょうか」
瞬きをした瞬間にもう変わっていて自分が思い描いていた通りの感じになっていた。
「……おぉ」
「どういたしました?、何か気に食わない点がありましたか?」
「ああいや、思っていた以上になってびっくりしただけだ、ありがとう」
「お誉めいただきありがとうございます。これ以外に変更点はありますか?」
「ないな」
「ありがとうございます。では次に種族を決めましょう」
自分の前にウィンドウが出てくる。そこには種族が載っていた。
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・人間族
・獣人族
・妖精族
・土人族
・森人族
・悪魔族
・天使族
・ランダム
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もう一度タップすると詳細が出てきたためすべてを見ていく。
とりあえず俺自身は運がすこぶるないので一発勝負らしいランダムは除く。
そしてざっと見た感じ人間族以外は一長一短があり容姿にも少し影響が出るようで人によってはなれるには時間が少しかるようだ。
また種族での特有の称号というものがありそれが種族によって変わるようだ。
地球ではないほかの種族でこの世界を冒険するのもいいが、なれる時間も惜しいし人間族で決定を押す。
「人間族なので容姿変更はありません。微調整等を最後にできますがどういたしましょう?」
「いや、このままでいい」
「この後調整はできませんが本当に大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だ」
「ありがとうございます。では次にステータスを決めましょう」
「あ、それなんだが武器を先に決めたりできるのか?」
「はい、可能です。それによって特別な装備を選択が可能になります」
「それってもしかして種族もあったりしたのか?」
「はい、ありました。第一陣のみの特典となっているので第二陣以降はランダムにその特殊な種族が入るようになります」
「それは惜しいことをしたな」
「この後ランダムに入るということはそれだけ一長一短が大きく出る種族なのでよほどのことがない限りクオン様が選ぶ可能性は低いかと」
「……考え事が口に出てたか?」
そうぽそりと聞くと楽しそうにころころとリリーは笑いながら頷いた。
まだ設定の段階なのに保保が熱くなるような感覚を俺は覚えながら次の設定へと促す。
「ふふ、それでは先に武器ということでこの中から選んでください。特別な武器は一番下のランダムがそれにあたり、魔剣をランダムで生成し最初の武器として装備してもらいます。ベラの中に入ったときに持ち帰ることは可能なのでこちらに関してはお試しで押してみるのも一興かと思います」
さっきの慎重な一言をいじりつつも説明してくるリリーに対し小さくため息をつきつつ言われた通り物は試しとランダムボタンを押す。
すると周りの真っ暗な空間からぞわりとした何かが吹き抜け一か所に集まり始める、その後集まったなにかは姿を変えて俺の手に収まる。
その瞬間俺の周りに何か黒いエフェクトが見えたと同時にリリーのあっという間の抜けた声が響く。
「物を持った状態でステータスと念じればそのもののステータスが見れます」
と言われたので早速念じてみる。
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◆嘆きの大鎌◆
とある墓守が握っていたであろう大鎌
その大鎌には墓にいた霊の怨念が込められている
◇武具称号◇
・嘆きの亡者
装備者に呪いの状態異常を付与する
装備者のATKとINTを1.3倍しDEXを1.2倍する
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呪いの効果の部分をもう一度タップすると詳細が出てきた。
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◆呪い◆
状態異常の一種
この状態異常を持っている限りHPが少しづつ減っていく
この状態異常でHPが0になり死亡することはない
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「あたり……か?」
「一応、という言葉は付きますがあたりです。ペナルティは大きいですがその分大きなメリットが付きますし魔剣は鍛冶で成長させることができます。なので初期のステータスでここまで高いのは珍しいですよ」
「わかった、あらかたこの魔剣のおかげで方向性も決まったしランダムを奨めてくれてありがとうな」
「いえいえ、クオン様をよい方向へ案内するのが私の役目ですので。では最後にお待ちかねのステータス割り振りをしましょう」
そういうと今度はステータスのウィンドウが出てくる。
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◇ステータス◇
名前:クオン
種族:人間族
Lv:1
HP:450/450 (4)
MP:150/150 (4)
STR 4(4)
DEF 4(4)
INT 4(4)
RES 4(4)
DEX 4(4)
AGI 4(4)
LUK 4(4)
SP 35
◇種族称号◇
・器用な不器用
◇武具称号◇
・嘆きの亡者
◇装備中称号◇
・
・
・
・
・
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・器用な不器用
人間族の種族称号
すべてのことを平均的にこなすことができるが全体的に少し成長速度が遅い
ただし称号によって取れなくなるものの影響は受ける
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「ステータスに関しての説明は致しましょうか?」
「一応頼む」
「はい、わかりました。では上から名前、その名の通りお名前が記載されます。基本的に変わることはありませんがもしあちらで名字や二つ名などができれば随時ここに記載されます。種族、こちらもその名の通り現在の種族がここに記載されます。自分を鍛えることや特殊な条件下で別の種族になった場合もここに記載されます。Lv、現在のレベルをここに記載しています、レベルを上げることで自動的にHPが50、MPが25上昇します。また1レベルごとにスペシャルポイント、通称SPを5貰えます。」
HPとMPは自動的には上がるが、戦闘での役割によっては多く降る必要がある感じか。
「HP、生命の活動するための力を数値化したものになります。これが0になると死亡扱いとなり復活には様々なペナルティがあります。またあくまで目安なので首を落とされた場合などで即死してしまうことがありますので気を付けてください。SP1でHP100上がります。MP、魔法を扱うときに使う体内の魔力を数値化したものです。これは0になった場合一割回復するまで強制的に気絶してしまうので気を付けてください。こちらはSP1でMP50上がります。STR、筋力に直結するステータスで、物理攻撃を高めたり重いものを持ち上げたりするときに使われます。DEF、物理的な防御力に直結するステータスで、熱いものや寒いものに対する耐性にも影響を及ぼします。INT、魔法を放つ際の威力に直結するステータスで、頭の回転の速さにもつながってきます。RES、魔法に対する防御力に直結するステータスで、状態異常に対する抵抗力にも関係します。DEX、器用さに直結するステータスで、武器を扱うときの上手さにも影響を与えます。AGI、足の速さに直結するステータスで、スタミナにも影響を及ぼします。LUK、運に関するステータスです。SP、これをステータスに割り振ることでステータスが上がっていきます」
リリーが一息ついて後半の称号について説明に入る。
「さて、最後に称号ですね。これはクオン様達プレイヤー、異界人の皆さんが行動することで得られるものや元々武具や種族が持っているものです。効果は先ほどの大鎌の魔剣のように能力に対して倍率で効果を表したり、状態異常や特殊な効果や色々なものを付与したりと多種多様な効果を与えます。ほかの世界でスキルや技といった強制的に体を動かす奇跡はこの世界には存在いたしません。また称号で能力値が倍になったからといってそのまま倍で早く走れたりなどもしませんのでご注意ください。そして称号は修得したときに数分だけその効果は乗りますがその後は装備しなければ効果はありません。装備枠はレベル上昇当の手段で増やすことも可能です。以上でステータスの説明は終わりますが何か質問はありますか?」
「特にない……な、聞きたいことは全部言ってくれたしな」
「ならよかったです。では、初期でSPを持っているのでそのポイントを振り分けてください。振り分けたSPは戻らないのでお気を付けください」
ステータスを開きさっきの武器であらかた方向性が決まったのでそのままポイントを割り振る。
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◇ステータス◇
名前:クオン
種族:人間族
Lv:1
HP:450/450 (4)
MP:150/150 (4)
STR 4(4)→14(14)
DEF 4(4)
INT 4(4)→9(9)
RES 4(4)
DEX 4(4)→9(9)
AGI 4(4)→19(19)
LUK 4(4)
SP 35→0
◇種族称号◇
・器用な不器用
◇武具称号◇
・嘆きの亡者
◇装備中称号◇
・
・
・
・
・
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いわゆる回避系の前衛、といった感じだろうか。
一応魔法も使うつもりなのでINTを上げたがMPも消費次第では随時上げていくつもりだ。
「振り終わった様子ですね。では次は魔力を感じてみましょう」
そういうとまたパキンと音が響き景色が移り変わる。今までなかった風が頬を撫で、緑の匂いがあたりに充満する。
今までいくつかのVRゲームをしてきたがこんなに現実に近いものはなかった、正直この中で生活を始めたら現実と違う点を挙げるのが難しいぐらいだ。
「少し感覚の数値をいじらせてもらいますね」
リリーがそういうと胸の心臓のあたりが温かくなる。
「今感じ取っているものが魔力です。この空間の時間の引き延ばしは五倍になっているのでゆっくりでいいので少しづつ動かしてみましょう」
さらっとすごいこと言った気がするが、とりあえずは置いておいて胸にある大きな塊に集中する。
その後に血液のように体の中を巡らせるような感覚で少しづつ動かしていく。
最初に感じたのはさらさらとした水の塊だったが、いざ動かしてみると急にスライム状の何かに変わってしまう。
ずるずると動かせるには動くが引っ掛かりを感じたりぶつぶつと途切れる、それでもあきらめずに根気よく流していると30分ぐらいたったころからとりあえず途切れることはなくなった。
「クオン様、ステータスを見てみてください。メニューの開き方は中指と人差し指を立てて上から下へとおろすと開きますのでそこからステータスをお選びください」
言われた通りにメニューを開きステータス画面を呼び出す。
この開き方昔兄貴に教えられてみた結界を使う漫画みたいだな。
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◇ステータス◇
名前:クオン
種族:人間族
Lv:1
HP:450/450 (4)
MP:150/150 (4)
STR 14(14)
DEF 4(4)
INT 9(9)
RES 4(4)
DEX 19(19)
AGI 9(9)
LUK 4(4)
SP 0
◇種族称号◇
・器用な不器用
◇武具称号◇
・嘆きの亡者
◇装備中称号◇
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・
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・
◇通常称号一覧◇
・魔力を扱い始めた者 Lv1 NEW
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・魔力を扱い始めた者 Lv1
魔力を感じ取り動かし始めた者の称号
レベルを上げることで魔力の扱いの扱いがうまくなっていく
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「この称号が取れたから上手くなったって感じか?」
「はい、そうなります。魔力を扱ううえでの補助にこの称号がなっているのでこの称号を上げれば上げるほど魔力の扱いに長けるようになります」
感覚が戻る前にちょちょいと装備をしておく。
「装備をしたら次に魔法を使ってみましょう。あ、一応今回私のほうにステータス画面は見えていますがベラではステータス画面右上の設定から相手に対してどこまで可視化するか設定できるのでご心配なく」
そういうとパチンという指を鳴らす音とともに小さな的が数メートル先に出現する。
「基本的に魔法は魔力の操作をして一点に集める、イメージをしながら詠唱をして形作る、トリガーとなる言葉で発射するという三工程に分かれます」
「基本的ってことは別の方法とか無詠唱的なものがあるのか?」
「はい、ですがここで教えられるのは基本的なものだけなので別の方法などはベラに行ってから探してみてくださいね。では、まずはお手本を見せますね」
リリーは的に向かって小さな手をかざした。
「風よをが声に答え相手を切り裂く刃となれ、風刃」
詠唱をし魔法の名前を言い放つと手から少し見難いが透明なブーメランのようなものが出て的を真っ二つに切り裂いた。
「おお、すごいな」
「ありがとうございます、私は風魔法しか使えないので見難い魔法で申し訳ないのですが、あのような感じで魔法は発動させることができます」
「俺もやってみてもいいか?」
「どうぞ」
もう一度パチンという音とともに的が修復する。
さっきの大鎌で扱う魔法の属性は決めていたからあとはイメージと詠唱だ。
とりあえず途切れないように魔力を手の平へ集める。
「我が闇よ、這い、進み、食い破れ、ダークスネーク」
そしてなるべく簡単でイメージをつかみやすいような詠唱にしてみたのが功を制したのか、一発で発動が成功して真っ黒な蛇が宙を這い的の真ん中より右辺りにあたり突きにけて後ろの木に当たり消える。
威力としては申し分ないが、命中精度的にはうねって進むせいかそこまでいいとは言えないな。
「一発で魔法が発動するなんてすごく珍しいんですよ?」
納得いかない顔をしていたのかリリーがふわりと前に出てくる。
「多分その様子だともう称号を出ているので装備しちゃいましょう」
ステータスを開くと言われた通り称号が増えていたので装備する、その時にMPの消費も見てみたが一発50少し減っていた。
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・闇魔法を扱い始めた者 Lv1
闇魔法を扱い始めた者の称号
レベルを上げることで闇魔法の扱いがうまくなっていく
この称号を手に入れることで手に入れずらくなる称号が存在する
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「もう魔法を使えるようになったので実践戦闘の練習もできますがどうなさいますか?。もう少し魔法を練習することも可能ですが」
「いや、実践に進ませてくれ」
「わかりました。クオン様は18歳以上なのを確認できていますので残虐的な表現等の規制のオフや、痛覚の遮断を切ることができますがいかがしましょう?」
「どちらもオフで頼む」
一応ゲーム内で痛覚は20%以下になっているが、18歳未満は痛覚の遮断がされていたりと安全面の対策もされている。
「敵は中立でなく敵対状態で出てきますのでお気を付けください」
そういうと奥の草むらのほうでがさりと音が聞こえた。
がさりという音が聞こえた方向へ顔を向けると小さな汚い緑色の肌をした小鬼が立っていた。
いわゆる"ゴブリン"というやつで手には棍棒を握っていた。
Gugigigigigi
そう小さくゴブリンはうなると俺に向かって直線に向かってきた。
直線的な攻撃を体をどこまで動かせるかの確認がてら横にステップで避ける。
「現実よりほんの少し動けるか、ぐらいか」
二度目、三度目と敵の攻撃を目でしっかりと追いつつ避ける。
VRを始めたての頃は目を瞑ってしまって被弾をしていたがこれでもある程度数をこなしてるため難なく避けていく。
その間大鎌は一応握らずにいたが手で持ち構えない限り呪いは発動しないようだ、ただ武具称号自体も発動されてないためか倍率も変わらないようだが。
「我が闇よ、這い、進み、食い破れ、ダークスネーク!」
至近距離でゴブリンに対して魔法を放つ、さすがにほぼゼロ距離だったため狙いを外すことなく脳天に刺さり食い破り貫く。
脳がやられればいくらモンスターとは言えど動けないようでバギンという音がしてHPのバーもすべてなくなり血を魔法が貫いた穴から出しながら倒れた。
普段のVRゲームだと剥ぎ取りとかしなくてもアイテムが出るんだが……。
「初戦闘勝利おめでとうございます。解体は自分でしていただくか腰についてあるナイフで簡易解体をすることができます」
「自分でやった方が報酬もよくなったりするのか?」
「それはもちろん、町に行けばお金を払い解体してくれるお店もありますが今はどちらかを選んでもらうことになります。相手が落とす換金できる魔石だけは簡易解体でも同じ大きさのものが出るのでそこは気にしなくても大丈夫です」
残念ながら漫画やアニメのように解体術を習うような家系でもないため自分でするのは早々にあきらめて簡易解体をする。
「簡易解体をした場合腰の袋の中に報酬が送られます。インベントリとつながっているため異次元の袋になってはいますが配布している袋はそこまで大きくないのでお気を付けください」
「もしかしてだがこの袋を掏られたりしたら……」
「一応生きているときにとられそうになった場合大きな音を立てる防犯は付いていますが、もし取られた場合インベントリ内のものもすべて持っていかれるのでお気を付けください」
なかなか厳しい世界のようだ。
「時間は余っているのでこのまま模擬戦闘を続けますか?。経験値は倒した分もらえますよ」
「まだ武器を試してないしな、頼む」
「わかりました」
この後も模擬戦闘を繰り返し武器の具合を確かめたり他の魔法を試してみたりとしているうちに開始の時刻が近づいていたようでリリーから終了を言い渡された。
「クオン様お疲れさまでした。まもなくサービス開始なのでここでチュートリアルを終了させていただきます」
「ああ、リリーも付き合ってくれてありがとうな」
「いえいえ、クオン様がた異界人を導くのが私たちですから礼にはおよびません。とAI的には言いたいところですが私が素直に感謝を受け取りたいので受け取っておきますね」
「そうしてくれ」
「はい。ではベラの世界へクオン様をお送りいたしますね。クオン様の旅路がより良いものになるように心から祈っています。行ってらっしゃいませ、そして、またお会いできることを楽しみにしておきます」
最後の言葉に引っ掛かりを覚え訪ねようとしたがその時にはもう遅く目の前が煌めきまぶしさに反射的に目を閉じる、そして瞼を再び開けるとそこには大きな噴水がある石畳の広場が広がっていた。