会議
俺が死ぬことになるXデーを回避するため、この研究所でゾンビが作られてしまうこと、つまりはZウィルスが作られることを阻止しなくてはならない。
それには、ここでの研究がスムーズに進むこと、および、人間強化アデノウィルスを早く完成させることが不可欠だ。
Zウィルスは、研究がうまくいかずに方向性が逸れたいった結果、生み出されてしまったものだからね。
つまり俺は死なないためにも、この研究に全力でサポートするべきなのだ。
「あさー、あさだよ〜。朝ご飯食べて会議いくよ〜」
ブ・ソアによる目覚ましコールによって俺は早めに起きた。
シャワーを浴びたかったが、蛇口に手が届かないので洗面台で頭だけを洗った。
ブ・ソアにシャワーを使えるようにしておくよう指示を出し、俺は部屋を出たのだった。
朝食を済ませて部屋に戻ると、ベッドの上にスーツと下着が置かれていた。
きっちりとドレスアップして、これからの会議に挑むのだ。
会議には研究員たちとボブ、マリー、それから数名のスロープ社のお偉いさんが居た。
「ここにいるジョニーは天才だ。一種のアドバイザーとして雇用を検討している」
俺は肩をすくめた。
「コンサル。俺はコンサルとして入るよ」
ボブマリー以外の人たちは、俺のことにビビっているらしい。というよりは好奇の目を向けてきていると行った方が正しいのかもしれない。
しかし実情は猫の手も借りたいといったところか。研究が難航し始めているんだろうことがなんとなく伝わってくる。
会議とは名ばかりの報告会だった。研究の成果について研究員から報告があり、経営側は発注の状況や予算感などを報告した。
俺はできる範囲で逐一質問を挟み、理解を深めていったが、あまり重要ではない部分に関しては、マリーを見て時間を潰した。
肉体の若さゆえか、頭の回転は転生前よりもかなり早くなったような気がした。
それと未成年であるがゆえに責任を取らなくてもよさそうだという点で、かつてよりも大胆な提案をしたりすることもできるだろう。
この会議で分かったことは、研究はあまり進んでいないように見えるが、研究員達が主張するように、一応遺伝子導入の原理としては可能なのでいずれは実現できるであろうこと、それに対して経営側がしびれを切らし始めていて、予算を削り、ゆくゆくはこの研究自体をクローズし、研究員を総入れ替えして別のプロジェクトを始めるつもりであるということだった。
この経営陣のパワハラがZウィルスを生み出した間接的な要因と見て間違いなさそうだ。
俺がすべきことがだんだん見えてきたな。
まず、研究成果の見せ方をきちんとディレクションして経営側との軋轢を無くすこと。
そして、経営側には投資する研究予算に対して、改めて生み出されうる利益等を具体的なデータとして明確化して提出しておけばいいだろう。その上で、今後の投資や経営戦略として、どのようにこの島の役割やなされる研究を位置付けていくか、提案することも必要になってくる。
うーん、前世の職業が役に立ちそうだな。
会議が終わったので、俺は仕事を始めることにする。
「マリー」
「何?」
「俺にオフィスは与えられないのか?」
「必要であれば用意できるよ、ジョニー」
「頼むよ。そこにブ・ソアが使えるデスクも必要だ」
「んじゃ、手配しときます。それでこれからどうするの?」
「一緒に研究してるとこを見て回ろう。マリー、手を繋がないか?」
「迷子にならないでね」