仕様
詳しい科学的なことはさっぱりわからなかったが、 資料に書かれていたこの研究施設での研究内容の全貌は、想定の範囲内だった。
人間の遺伝子を書き換えて最強にするっていうアデノウィルスね。
元経営コンサルらしく、気持ち的にはもっと深く考察して、深夜1時くらいまでは作業したいところなのだが、体力が全然持たなかった。
なんせ、俺は今4歳の肉体なのだ。
今日はお昼寝もしなかったし、19時を回った今、もうすでに眠かった。
「ブ・ソア」
「ご用件は? ジョニー」
「眠い。寝る」
「おしっこは済ませましたか? 歯磨きは?」
「めんどい」
「口の奥でガタガタ震えて虫歯が抜ける準備はOK?」
「わかった。わかったからそれ以上やめろ」
俺は歯磨きをした。
ベッドに横になると、部屋の照明が徐々に暗くなっていった。
俺は寝る前に大体考え事をするのだが、歯磨きをしてちょっとだけ目が覚めたせいで、今日は捗りそうだった。
俺の身体には、おそらく二つのパラメータがある。
HPとスタミナだ。
この世界でケガをしたりしてダメージを受けると、視界が赤らんで狭くなっていくのだ。
数年前、赤ちゃん期を終えて立てるようになった時に、無理やり歩こうとして失敗したときに気づいたのだが、たとえばすっ転んで頭をぶつけたりして生命の危機に陥ると、音は遠くなるし殆ど何も見えなくなる。
ただ疲れてたり眠いだけではこの現象は起きない。
そして、しばらくじっとしていれば、視界は元どおりになる。物陰に隠れて回復できるタイプのシューターみたいなもんだね。
ちなみに、痛みは、痛いと感じるのではなく、その部分が痛んでることがわかるという感じ。
どうやら全人類共通みたいで、即死さえしなければなんとかなるらしい。
ママが変態に刺されたときも、包帯を巻いたら血が止まったし、しばらくしたら傷が塞がっていた。もし包帯がなかったら、血は一生止まらなかったのかもしれないが。
このシステムは、ゲーセンのガンシュー版には無かった仕様だ。
コンシューマ版から導入されたはず。
没入感のためにHUDやらインベントリやら、全部表示されないのだ。
だから、ステータスオープン、の言葉は虚空に消えるので二度と言わない。
はあ、今日は晩飯食いそびれたな。