表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The Dead In The Water 〜ザ・デッド・イン・ザ・ウォーター〜  作者: しじみちゃん
The Dead In The Water: The Beginning Of The End
5/73

島へ

 ボブの勤め先が、俺の目的の人工島だったらいいんだが。


 まあ、時間はたっぷりあるし、あんまり期待しないでおこう。


 俺はママとの別れの挨拶もそこそこに、ボブの車に乗り込んだ。


 助手席に乗り込んで、シートベルトを締める。


「チャイルドシートは用意していないが、構わんね」


 俺は口元を歪め、問題ないことをアピールする。


「ポート63へ」


 ボブがハンドルに向かってそう言うと、車が走り出した。


「どうして分かった? 私がスロープ社の専務であるということが」


 いや、そこまでは知らなかったが。


 とはいえ、只者ではない感じを出しておくのは必要なことかもしれないな。


「簡単だよ。ここが『西海岸』だからね」


「なるほど…… どこまで知っている? 誰から吹き込まれた?」


「全部推測さ。誰もボブの仕事のことは詳しくは知らないってね」


 ボブは驚いたようだった。


「ジョニー、本当はいくつなんだ?」


 俺は呆れた風に肩をすくめると、指を四本差し出す。「4歳さ」


「なるほど天才児。これは貴重な人材に出会ってしまったようだな」


「4歳だからね」


「欲しいものはあるか?」


「スーツを一着。あとはサングラス。ビシッと決めたいからね」


「用意しておこう」


「でもなんで?」


「きみはしばらく家には帰れない。我々の研究を手伝ってもらうからね。天才児としての頭脳、存分に発揮してもらおうじゃないか」


「4歳なのに?」


「安心しろ。性的な意味で刺激的なお姉さんはいない」


「分かった」


 車はポート63と呼ばれる目的地に到着したらしい。何の変哲も無い埠頭だった。


 ボブが自動運転から手動に切り替えて、とある倉庫の前に徐行して近づいた。入り口の近くにあるブースから警備員っぽい人が出てきて、ボブの素性を確認すると、倉庫のシャッターが開いた。


 中には一台のコンテナが開いて置かれていて、車はその中に入って行った。


「さて、ここから一時間ほど、この狭くて暗いコンテナの中だ」


「やれやれ」と俺は言った。真っ暗なのでニヒルな表情をしてもボブには見えないからね。


 車が盛大に揺れた。たぶん、コンテナが船に乗せられたんだろう。


 前は船酔いはしないタイプの人間だったが、転生して初めて船に乗るので、酔ったりしないか少し心配だ。まあ、吐けるものは胃袋に無いので、車を汚すことは無いと思う。


 ボブは誰かに電話している。


「ああ、ジョニーですけど、お利口さんにしていますよ。……ええ、それで、私たちすっかり意気投合しましてね、数日預かりたいと思うんですがどうでしょうか? はい、妻も喜んでましてね」


 どうやらママと連絡を取っているらしい。そんな断らなくても、俺が後で叱られるだけだから放っとけばいいと思うんだけどね。


「ええ、なるほど。うーん、そうですか。……たしか、換気扇が壊れかかってると言っていましたよね? ええ、もちろん。妻もジョニーを気に入ったみたいで。換気扇に関しては、私たちが直しますよ。はい。全部出しますんで、大丈夫です……」


 とまあ、こんな感じでボブは交渉しているのだが、要約すると、ダイナーの換気扇の修理代を全部持つからジョンを数日貸してくれ、といった内容だった。


 ママもパパも、こういう条件には弱いと思う。


 車内はゆらゆら揺れていた。


「お母さんからオッケーを貰っておいたから」


「ママの弱点をよく知ってるね」


「人間、カネさえ積めば何でもするもんだ。ジョニーの働き次第では、換気扇を最強にしてあげよう」


「親孝行、やっちゃいますか」


 そして、コンテナが開いた。明るくて目が眩んだ。


 人工島に到着したのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ