ボブ
うちのダイナーは最初のイベントが起こるステージということもあって、たびたびゲーム中に出てくるのだった。
二作目の終盤では、倉庫が武器庫になっていたような……
そのおかげか、ゲームの中での重要な人物が、実は晩飯を食いにこのダイナーに来ているってことがわかってきた。
で、トムの派遣される人工島についての情報収集をしておこうと言うわけだね。
今、カウンター席の真ん中に、黒い肌に黒子と皺だらけの顔で白髪のでかい爺さんがいて、肉を食っている。
あれはボブ爺さんだ。
知的な感じで、場違いにビシッとした黒いスーツを着ている。
どう見ても、その筋の偉い人だ。
俺は4歳というあどけなさを活かし、彼の隣の席の上に立った。
カウンターに肘を立てて寄りかかると、じーっとボブの様子を間近で観察する。
「きみのお父さんはタイヤでも切って出してるのかね? とても固い肉だ」とボブは言った。もぐもぐごっくんしてから、「だが、それがいい。歯の健康のためになる」と続ける。
俺は鼻で笑った。
特に返す言葉もないから、ボブの食べる肉をじろじろ見続けた。
「私が食べるのを見るのが面白いかね? ジョニー、お母さんに頼んで新しいコーヒーをくれ」
どうやら、俺を追っ払おうとしているらしい。
やれやれという感じの表情をして、手を高くあげた。それからママを一瞥し、高い位置から爺さんを指差した。
デキャンタを持ったママがコーヒーを注ぎに来て、俺に怒りの表情を向ける。
「おお、怖い。きみのお母さんは随分と怒ってるみたいだが」
「いつものことだよ」と俺。
「ふてぶてしいな。最近、ずっと私のことを観察しているだろう? スーツが珍しいかね」
「うん」
「スーツは男のドレスだ。ジョニーみたいな、泥まみれになるお年頃にはオーバーオールがお似合いだがね」
「お仕事は?」
「マネィジメン」
俺は年頃らしく難しくて分かりませんみたいに首をかしげる。コ●ンくんみたいな気分だよ。
「ボブは車ごと船に乗るんでしょ」
で、人工島に乗り込んで、監査なりなんなりすると。あてずっぽだが。
ボブ爺さんの表情がちょっと険しくなった。
図星か?
「ジョニー、誰から聞いたんだい?」
俺は首を振った。
「そう思っただけだよ」
他に何を言ってもボロが出そうなので、とりあえず変顔をし、片手をケツに突っ込んでポリポリ掻いて誤魔化そうとしてみる。
ボブ爺さんは顔をしかめて肉を切っていたが、何度か頷いてから手を止めて、ナプキンで口元を拭った。
それから軽く手を上げてママを呼びつけると、カードを渡しながら「これで」と言った。
「これから島に行くんだね」
ボブ爺さんは、一瞬、オイオイこいつ何言い出してやがんだ、みたいな顔をした。
ちなみに、たまにくる特徴的な客に対して、毎回こんな感じの流れをやってる。これだけ図星を突きまくれたっぽい人はボブだけだが。
「ジョニー、私の仕事について、きみが考えてその答えにたどり着いたんだとしたら、非常に興味深いよ。非凡な才能をお持ちのようだ」
ボブはママからレシートとカードを受け取った。
「ジョニーをちょっと借りてもいいかな? 遊びに行こうかと思ってね」
「え、本当ですか? いや助かります。この子、お客さんに絡みまくるので本当に困ってて。かといってシッターを雇うのも、性的によろしくないですしねぇ。この子は多大な迷惑をおかけすると思うんですけど、それでもよろしければ是非!」
「ええ、問題ありませんよ。男同士ですから」
ママがこっちを見て、大人しくしないとゲンコツを叩き込むみたいな顔とジェスチャーをした。
ボブは俺をどうする気なんだ?