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The Dead In The Water 〜ザ・デッド・イン・ザ・ウォーター〜  作者: しじみちゃん
The Dead In The Water: The Beginning Of The End
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所長

 エレベータを13Fで降りて所長のオフィスにやってきた。


 やたら高級そうな木材を使った重厚なインテグレイテッド・デスクに腰掛けているばあさんが研究所長だ。


 髪の毛が薄くなってきたのか、パンチパーマのゆるいやつみたいな髪型をしていて、若干染髪しているらしい。


「こっちにきて飴ちゃんをおあがりなさい、ジョニーぼうや」


 俺は特に表情を変えることもなく、デスクの前に用意された椅子によじ登り、皿から一粒の飴を取った。


「あなたの話は聞いています」


「もぬ」


 頷こうとしたが、もらった飴が4歳児の口には大きすぎた。


 しかも味は渋すぎる。


 黒飴なぞ4歳児は食べんのじゃ。


「私も所詮は天下りの雇われ所長。あまり経営には詳しくありません。研究もです」


 飴がでかいので、なぜお前が選ばれた、とは言えなかった。


「聞くところによれば、あなたがスロープ社の経営陣にいろいろと話をつけてくれるとのことです」


 汚いと思ったけれど、一旦口から飴をつまみ出して喋ることにした。


「どうして俺にそんな期待してるんだ?」


「ボブですよ。彼が手放しで称賛するのなら、私も負けていられませんので」


「なるほど。ボブとは旧知で?」


「昨日も寝た仲です」


「そっすか……」


 まあプライベートなことを突っ込むのはよしておこう。ボブが凄マムシX的なものを飲むところを考えるのも失礼だ。


 彼女には、俺がこれからやろうとしていることについて小一時間喋ることになった。


 合間合間にやたらと飴を勧めてくるが、喉が乾くのでアイスティーを要求した。


 この人工島内部の人間と、スロープ社本部との研究に対する認識には齟齬がたくさんあるようだ。


 この所長は研究は危険なもので安全性が担保されていない限り全てを失敗だと考えているようだし、スロープ社の方は半分くらい生き残ればいいみたいに考えている。


 完璧に仕上げてから送り出すのが、理想だってのはわかるけどね。というか、薬みたいなもんだし、そうじゃなきゃヤバいんだけど、俺の状況的にはそうも言ってられないのよな。


「なぜそこまで安全に気を使うんだ?」


「研究者を守るためです。ここの人たちは、兵士を救うために研究を行なっているんですよ? 投与されたら半分は死ぬようなものを世に出せるものですか」


「なるほど。しかし、こう考えることもできる。実験によって死んだ兵士は戦死の先払いであると」


「はあ?」と所長は言った。


「強化されなかった100の兵士より、100のうち強化されて生き残った30の兵士の方が、多くの命を助けるかもしれない」


「まだ、小学校には上がっていないのでしたね」


「ああ」


「簡単な算数です。無傷で強化された100の兵士が一番多くの命を救うんですよ」


 そんなことは分かっていた。でも、形だけでも進捗として上手に報告できないと予算が下りないんですわ。


 ま、この所長の立ち位置はなんとなく分かったからいいや。


 研究員的には結構いい所長なんじゃないだろうか?

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