マッチポンプなんですけどね!
圧倒的な攻撃力を前に王国軍は安堵したのと、アクエリアス公国と敵対する事への恐怖の2つがあった。しかし、その後のアクエリアス龍騎士団の対応に感謝した。
魔物の発生源を叩き潰した龍騎士団は、戻ってきて貴重な回復薬を無料で提供したのだ。
「(クソ)聖女がいるとはいえ怪我人が多い!この『シオン様』が産み出した【エリクサー】を薄めて飲ませれば大勢の怪我人を癒せます!」
エリクサーはそんなに量は無かったが、市販のポーションに一滴垂らしただけで最上級のポーションに早変わりした。そのお陰で、重傷者にポーションが行き渡り、大勢の兵士を救ったのであった。
龍騎士団は王国の兵士の治療の手伝いをしながら、状況を確認した。どうやら散漫的に魔物は発生しているが、王国で1番酷いのはこの場所だったようだ。
「では、ここ以外には魔物が大量発生している場所はないのですね?」
「はい!御協力、ありがとうございました!」
王国軍の兵士達は感謝の言葉を述べ、頭を下げた。
「ちょっといいかな?」
王国の騎士団長が声を掛けた。
「助太刀、感謝する!それと、1つ聞きたいのだが、なぜ【王国の領地】に【他国】の兵士がいるのか聞きたい」
騎士団長はこのスタンピードが、もしかしたらアクエリアス公爵が起こしたのでは?と、疑っていたのだ。
「騎士団長!その言い方は余りに失礼では!?」
周りの側近が非難の声を上げるが、龍騎士団は気にした様子もなく言った。
「我々は確かに許可なく、王国の領地を飛んでいました。私達はデルタ大公から、魔物の活性化に伴い、帝国と王国の魔物を狩り取るように命令された次第です」
「デルタ大公の指示だ…………と?」
「はっ!新しいアクエリアスの首都『アスタリスク』にもスタンピードが発生し、魔物が大挙して攻めてきました。龍王様やシオン令嬢のお陰で無事に殲滅しましたが、周辺国が心配とのことで巡回させて頂いた次第であります!」
!?
「デルタ大公は自国だけではなく、周辺国にも注意を払ってくれていたのか!?」
もともと、アクエリアス公爵は領民に心を砕く善良な領主であった。娘のシオン令嬢で王国を恨んでいても、民の事を考えて援軍を出してくれていたのか!?
周りの王国軍の兵士達は感動していた。
「おーい!もう片が付いたのか?」
バッサ!バッサ!と、1人の龍が降りてきた。
「これは、クオン様!お疲れ様です!」
アクエリアス龍騎士団は一斉に敬礼を取った。
「遅れてすまない。それよりも、ここにくる途中に、魔物が数十体ほど村を襲おうとしていたぞ?お前達は何を見ていた!」
!?
「なっ!?申し訳ありません!」
「我々には大した数でなくても、村人には魔物が数十体も現れれば脅威になる!これからは魔物を一体でも見つけたら狩るようにしろ!」
「「「はっ!」」」
龍騎士団は片膝を付いてクオンに頭を下げた。
「クオン様、その魔物達は?」
「すでに駆逐したに決まっているだろう?さっさと次に向かうぞ!」
クオンは龍に乗り、飛び立とうした所で呼び止められた。
「待って下さい!」
アリアが慌ててやって来たのだ。
「……………なんだ?私には話すことはないぞ?」
「わ、私を恨んでいる事は承知しています。シオン様はお元気でしょうか?」
「お陰様でな」
クオンは不機嫌な顔で答えた。
「あの!一言だけ、シオン様にお伝え下さい!【ごめんなさい】と!」
クオンは一瞬目を開いたが、わかったと言って飛び去っていった。
アリアは小さく呟いた。
「………ここはゲームの世界じゃない。現実世界なんだね。だったら私は罪を償わなければならないよね」
本来は、ちょっとしたオタクなだけで根は真面目な少女だったヒロインは、自分のすべき事をみつけて、行動していくのであった。
後に、アクエリアス公国の『世界樹の巫女・シオン』とファーランド王国の『癒しの聖女・アリア』という2つ名で周辺国から一目置かれる存在として成長していくのであった。
この二人が再び出会い、友情を育むのはもう少し後のお話である。
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どうでもよい情報だが、騎士団長の息子はこれを機に騎士団を脱退し、冒険者となる。魔物を狩ることに生き甲斐を見つけた息子は、高ランクの冒険者となりそれなりに成功する。しかし、だれもパーティーを組もうとは思わなかった。戦闘中に性的興奮を覚える変態となったため変態狂戦士と呼ばれるようになる。
宰相の子息は、身体の自由を奪われて命懸けの戦いをさせられた事により、対人恐怖症となり自宅で誰にも会わない書類整理を行う仕事をするようになる。そして生涯自宅から出ない生活をする引きこもりになった。
そして逃げ出したエリック王子については後に述べようと思う。
次回予告!
久々のお色気回!ようやく世界樹の儀式です。
そしてシオンが儀式の為に脱ぎます!
痴女爆誕!
お楽しみに!
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