雲行きが怪しくなりました。
当初は魔物の数から王都の騎士団と衛兵のみで十分と思われたスタンピード(魔物の氾濫)であったが、1度の魔物の大軍を殲滅した時点で次の魔物の大軍が現れる事となり、王国軍はどんどん疲弊していった。
しかし、騎士団長の機転で早期に援軍要請を出した事により、3度目の大軍を撃破した所で周辺の領主達の援軍が到着したのだった。
「遅くなり申し訳ありません!王国の一大事と聞いて参上致しました!」
各貴族の代表が騎士団長に挨拶しにきたのだ。
「ああ、援軍感謝する!魔物達は1体1体は弱いが、数がわからない。東の森から定期的に現れるのだ。すまないが、我々は1度休ませてもらうぞ」
「はっ!了解しました!」
「それと、密偵の得意な部下はいるか?東の森を見張らせているが、内部に入れる者を使い、スタンピードの元凶を叩きたい」
斥候ならいくらでもいるが、スタンピードの起こった内部を偵察できる者となれば、数は絞られてくる。
「では、私の部下にいかせましょう。元冒険者だった者がいるのです!」
1人の貴族が名乗りを挙げた。
「すまないが、そなたは?」
「はっ!私はダレス・バード男爵であります!」
騎士団長はバード男爵と聞いて、はっ!?となった。息子を骨抜きにした『聖女』の父親であるのだ。
「貴様がバード男爵…………か?」
含みのある言い方になったが、バード男爵はわかっていたのか頭を下げた。
「はっ!騎士団長殿の思い至った者で間違いありません。その節は大変申し訳ありませんでした!」
正直、バード男爵が悪い訳でも、その令嬢が全て悪い訳ではなかった。骨抜きにされた自分の息子が1番悪いのだ。もっと、肉体だけではなく、『心』を鍛えるべきだったのだ。
「今は国の一大事だ。個人の感情は置いておく。お互いに命を掛けてこの国を守るぞ!」
「はい!この命に掛けて!!!」
こうして、正面から魔物の大軍を叩く部隊と、軽装で東の森に突入する部隊に別れての作戦が立てられるのだった。
・
・
・
・
・
・
・
さて、少し話はアスタリスクへと変わる。
「大変です!西の森から魔物が集まって来ているようです!」
各国の要人を招いての接待は大成功していた矢先の出来事であった。もし魔物が頻繁に現れると、商人や観光客の誘致に問題が出てしまう。
放っておくことは出来ない!
「まずは、どこからどれほどの魔物が集まっているのか確認するように。そして、騎士団に防衛準備をさせろ!良い訓練になるだろう」
兵士は礼を取って、すぐに出ていった。
「はっ!?シオンに注意させなければ!」
トラブルメイカーのシオンには危険な事をさせないように、デルタ大公は執事を呼んだ。
「すまないが、魔物が集まってきている情報が入った。シオンに注意するよう伝えてくれないか?」
執事のセバスは首を振って答えた。
「少し遅かったようですな。既にシオンお嬢様は出て行かれました」
デルタ大公は手で顔を覆った。
「はぁ~遅かったか…………」
セバスが遠慮がちにいった。
「言いにくいのですが、守護精霊様や奥様なども一緒に出ていかれました」
「なにっ!?」
「なんでも、最近のアスタリスクは楽しすぎて、飲み食いし過ぎたためダイエットしてくるとの事です」
魔物を狩るのがダイエットって……………
「うちの家族はどうしてこうなんだ?」
デルタ大公は1人残されて寂しく思うのだった。
「お父様、大丈夫かな~?」
ウッド君が引く馬車に乗りながらシオンは呟いた。
「旦那様は大丈夫よ♪でも、旦那様がいないと執務が滞ってしまうし、仕方ないわ」
母レイラはあっけらかんとして言った。
「ワシとしては愛する娘と可愛い孫に危険な事はさせたくないのだが?」
お目付け役としてお爺様が同伴していた。
「お爺様(お父さん)は自分の力(筋肉)を試したいだけでしょう!!!」
もともと武人として、若い頃は戦に明け暮れていた先帝陛下だったが、長い間の闘病生活で回復した身体を、試したいという欲求が強かったのだ。
「まぁまぁ、そういうな。長い間、動けぬ辛さはワシも身に染みておるからのぅ?」
似たような口調でしゃべるのは龍王のお爺ちゃんだった。
「流石は龍王殿じゃ!どうじゃ?魔物退治の勝負といかんか!」
「おお!それは面白そうじゃ!」
「「ダメです!!!!」」
母と娘から待ったが掛かった。
「「お爺ちゃんズが前に出たら私達が戦えないじゃない!」
う~ん?実に似た者親子だった。
「あ~の~?どうして私がここにいるのでしょうか~?」
守護精霊のスフィアだけは、どうして連れてこられたのかわからなかった。
『ううぅ…………帰りたいです~!』
次回!元凶は…………やっぱりね!
楽しみに!
『よろしければ感想、評価、ブックマークよろしくお願いします!』




