空気を読まない………ごめんなさい!マジで!
誤字報告ありがとうございます!
お母様が泣いている時、私はなにか出来ないかと考えていた。
「失礼します。お爺様は身体を壊されているんですよね?体力増強剤などは大丈夫ですか?」
先帝陛下…………お爺様にシオンは尋ねた。
「うん?ああ、食事もろくに喉を通らないのでな。そういう飲み物は良く飲んでおるよ」
ピコッーーーーン!!!!
「僭越ながら、この薬を飲んで頂けませんか?」
シオンは収納魔法からとある魔法薬を取り出した。
「これは?珍しい色だな?」
シオンが取り出したポーションは緑色で輝いていた。
「多分、龍王様がいうには、【世界樹の雫】と呼ばれる聖薬です」
ガバッ!?
泣いていたお母様が突然、顔を上げた。
「シオン、今………世界樹の雫と言ったかしら?」
「え、ええ。アスタリスクの頂上にそびえる世界樹の1番上に、空を飛べる龍族の方が行ってみると、小さな泉が出来ていてそれを汲んできたそうなんです。龍王様が見て、世界樹の雫と言って私にくれたんですよ」
お母様はワナワナッと震えて指をさした。
「シオン、世界樹の雫とは別名エクリサーと呼ばれる幻の………いえ、伝説の万能薬よ!どんな病気でも癒し、大怪我も治す。場合には死者すら甦らせると云われているわ!」
!?
「マジで?」
あっ!素がでちゃった!?
お母様の真面目な顔を見て、これって感動の再会に水さすやつじゃない?と思ってしまった。
「と、取り敢えず飲んでくれますか?」
「あ、ああ!本当にそんな貴重な物であるなら申し訳ないが頂こう」
ゴクゴクッ……………
先帝陛下は世界樹の雫を飲み干した。
すると─
「がっ!?」
突然、苦しみだした。
「えっ!?嘘っ!だ、大丈夫ですか!」
「貴方!?」
「お父様!」
心配をする家族の見守る中……………
「くっ……………これは、すごい!」
「えっ?」
突然、先帝陛下は笑いだした。
「くはははははっ!!!!さっきまでの苦しみが嘘のようじゃ!力が漲ってくるぞぃ!」
先帝陛下は起き上がると、床に立ちゴキゴキッと身体をほぐした。
「あ、貴方、大丈夫なの?」
前王妃様が心配そうに声を掛けると、信じられないことが起こった。
「ああ、大丈夫だ!力が溢れてくる…………フッン!!!!!!!」
ビリビリッ!
バッーーーーーーーーン!!!!!!!
「うっそーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!!!!!」
先帝陛下は急に筋肉モリモリのビルダーのような体型になった。
(北斗の拳みたいなやつね!)
「今までありがとう。お前の看病がなければすでに死んでいただろう。そして、全盛期の力(筋肉)を取り戻したぞ!」
「ああ…………もう見ることが出来ないと思っていたのに…………」
そうだよね。もう立ち上がる姿をみる…………
「私の愛した筋肉(大胸筋)…………素敵♪」
あれ?
今なんて?
「お、お母様?」
「し、知らないわよ!あの人の性癖なんて!!!!」
あ、お母様も頭を抱えた。
先帝………面倒だからお爺様とお婆様は抱き合って幸せそうにしている。
あっ!ちょっと!お爺様!?ここで筋肉ポーズを取るの止めてください!
お婆様も!さっきの健気な王妃様の姿が見る影もないよ!?
お爺様のポーズをみて、きゃー!きゃー!言ってるよ!?
「もう帰ろっか?」
「ええ、そうね…………」
なんか疲れちゃったな…………
お母様と帰ろうとしたとき、待ったが掛かった。
「これこれ!待たんか!?このまま帰す訳にはいかんぞ!」
「そうよ!こんな命(筋肉)の恩人にお礼もせずに帰らせる訳にはいきません!」
何気に、お婆様も若返ってない?シワが消えてるよ?
はっ!?
今、お爺様とした接吻で、少し世界樹の雫がお婆様にも流れたのかな!?
お爺様はすぐに人を呼び、またカイル達がやってきた。
「まったく…………老い先短い兄上を家族水入らずで過ごさせようと思ったのに…………どうして、兄上が全回復しているんだ?」
現皇帝は頭を抱えた。お母様と同じである。
「シオンには驚かされるばかりだよ。まさかエリクサーまで持っているとは………」
カイルは呆れる様に言った。
「安心しろ。すでに私は死んだような扱いだ。お前から玉座を奪おうなど考えんよ。それより、今までありがとう」
「兄上………」
「ワシはこのままレイラと一緒に新しい国の首都アスタリスクへ行こうと思う」
はっ!?
「えっ?先帝陛下?」
「シオンよ、お爺様と呼んでくれんか?もう、帝国でワシのやれることはない。なら、今までワシの世話に10年以上尽くしてくれた愛する妻に旅行などさせてやりたいんじゃ」
「あなた………私は貴方(筋肉)と一緒に居られるだけで幸せよ!」
ガシッ!
また人前で抱き合うお爺様とお婆様。なんか、副音声まで聞こえるし!
こうしてお母様は、命の助かったお爺様を見て喜んだが、知りたくもないお婆様の性癖を知って、素直に喜べないのだった。




