閑話3(アクエリアス家)
王子サイドの話はもう少しお待ち下さい。
あれから1ヶ月経った。
我らが天使であるシオンが居なくなって、我が家から火が消えた様に感じる。
しかし、シオンの家族は忙しく動き廻ることでその悲しみと辛さを忘れようと動いていた。
「さて、クズダナ(ナダズク)子爵、この不正をどうしてくれるのかな?」
アクエリアス家当主にして、シオンの父親である【デルタ・アクエリアス】がクズダナ子爵に不正の証拠を突き付けていた!
「こ、これは何かの間違いです!私はそんな不正は行っておりません!」
完璧な証拠を突き付けても、いまだに言い訳をするクズダナ子爵に軽くため息をつく。
「何が間違いだというのだ?貴様が国からの支援金を不正に着服しているのは明白だろう?そもそも、開拓に失敗した村も貴様が支援金を着服さえしなければ成功して、巨万の富を築いていただろうに………目先の利益に手を出した挙げ句に、困窮したのは自業自得だ!」
そう、クズダナ子爵の領地を調査した結果、開拓に失敗した村も支援金が打ち切られ、立ち行かなくなったことが判明したのだ。しかも、適度に魔物を兵士が間引きすれば、修道院近くの浅い森のため、希少価値のある薬草類に質の良い檜木やなどなど、莫大な利益が出る事がわかった。
「貴様は言ったな?不正はしていないと!ならばどうしてもう廃墟になって打ち捨てられた開拓村の支援金を貰っている?」
「そ、それは…………」
言葉に詰まる子爵にデルタは畳み掛ける!
「貴様の罪は明白である。領地の税率も王国法より高いのも問題だ。領民が困窮しているのに貴様は何も思わなかったのか?本当にクズダナ!」
流石の子爵もここまで侮辱され、言ってはいけない禁句を言って反論してしまった。
「そういう公爵の娘も【犯罪】を犯して北の修道院へ送られたではありませんか!?身内から犯罪者を出したのはそちらだろう!」
ピキピキピキッ!?
「……………先代のナダズク子爵は立派な方だった。修道院にも手厚い援助をして、修道女達が質素でも生活に困らないように気配りをしていた。その功績に免じて平民に落とすだけで許してやろうとしたのだがな」
そこでデルタ公爵が言葉を止めると、クズダナ子爵は勘違いしてさらに言い出した。
「ああっ!そういう事でしたか!?修道院へ送られた娘さんを公爵が援助すれば国から目を付けられますからな~?そこで私に援助するようにと言う訳ですな!」
ピキピキピキッ!?
そこに、デルタ公爵と一緒に付いてきた信頼ある執事が飛び出し、クズダナ子爵の胸元を掴み壁へ押し付けた!
「ぐはっ!?き、貴様!私にこんな事をしてただで済むと思う…………」
クズダナ子爵は最後まで言えなかった。執事の力がこもり話せなくなったからだ。
「旦那様、もう私も限界でございます。ここからは私から話させて頂いても?」
必死に殺気を押さえていた公爵が頷いた。一言でも発すれば押さえ切れず、殺してしまうからだ。
「まずは訂正しておきましょう。お嬢様は無実です。国の王子達に嵌められただけでございます。そして最大の誤りですが、あなたは何を援助するとおっしゃいましたか?」
クズダナ子爵は苦しそうに答えた。
「だ、だから修道院の援助を………」
執事はため息を付いて真実を話した。
「修道院など無いのですよ!5年も前に!!!全ての修道女が高齢化や病気で亡くなり、廃墟と化しているのですよ!!!!!」
執事にはあるまじき行為ではあるが、声を張り上げて、殺気のこもった目で子爵を睨み付けた。
!?
「ば、バカな………!?」
子爵も驚き、目を開いた!?
「何度も懇願書が届いていたのに、握り潰していたのは貴様だろう!修道院の者達がどんなに辛く苦しかったか、貴様にわかるか!?」
まぁ、修道院は守護精霊の加護により高齢者でも簡単に田畑が実ったので、そこまで苦しい生活を送ってはいないのだが、それはここにいる者にはわからないことである。
執事はクズダナ子爵を公爵の居る方へ投げ、地面に叩きつけた。
「がっ!?」
余りの痛さに呻く子爵だが、すぐに何も感じ無くなった。
「自らの愚かさを呪いながら死ね!」
デルタ公爵が子爵の心臓に剣を突き刺したからだ。こうして子爵は呆気なく死んだ。
そして、壁際で震えている家族と使用人に対していった。
「クズダナ子爵は【病死】された。他にも病死予定の者はいるか?」
ガクガク!?
ブルブル!?
震えながら首を振る。
「すでにこの不正の証拠は国へ提出してある。今日限りで子爵家は取り潰される。そして我がアクエリアス家がここを治める!」
!?
「そんな!?あんまりです!私達に野垂れ死ねとおっしゃるのですか!?」
婦人が叫ぶが、デルタ公爵は何を当たり前の事を言っているんだ?とばかりに言い返した。
「そう言っているのが理解出来ないのか?修道院の院長様は5年間も誰にも弔われず放置されていたぞ!」
すると、公爵が連れてきた騎士団が入って来て無理矢理、子爵家の者達を外へ連れ出した。
「旦那様、出過ぎたマネをして申し訳ありません!」
執事は先ほどの事を謝った。
「良い、私の事を思ってしたことだ。いつも感謝している」
「いいえ、旦那様。今回は私情でやりました。あれ以上、お嬢様を悪く言われるのが、我慢なりませんでした」
執事は深く頭を下げた。
「そうか………ならば罰を与えなければならないな?」
「はっ!覚悟は出来ております!」
執事は悔いのない顔で公爵を見つめた。公爵は懐から手紙を三通出すと執事に渡した。
「では、罰としてこの手紙を【確実に】シオンへ渡して欲しい」
執事はハッとなって手紙を見つめる。
「だ、旦那様!それは旦那様が直接渡された方がお嬢様も喜ばれると思いますが………」
そう、これは罰ではなくご褒美ではないか!
「確かにシオンに会いたい気持ちはあるが、まだ準備が整っていない。それにシオンには家族みんなで会いたいからな」
「旦那様………!?」
執事は涙を流した。
「今の話は愚息には言うなよ?面倒だ」
そう言うと、少し恥ずかしそうにデルタ公爵はその場を後にするのだった。
次回、ファンタジー小説で有名なアレが登場!
この小説が変わってしまうかもしれない危険があります!
お楽しみに!
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