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〈第4-2話〉魔法本格解禁!!

地獄の二日目で受けた疲労を解消したアリスは、気分転換に団員たちと出会う。

フレイの提案で食堂に来たところ、ハインドとアルバスも合流してきた。

それぞれの特徴を確認したアリスは、足早に退出したのだった。

 目に朝日が当たる感覚がする……もう朝のようだ。


「んん……はぁ、うーん……」


 さて、背伸びもしたことだし、今日もやるか。

 リストベルは、予想通りに今日は模擬戦があることを伝える赤色の光を発している。


 木剣と、鎖帷子と、鎧と……よし、今日も団長の座を勝ち取るために、勝つぞ!


「よう、アリス。懲りずにまた来てやったぜ」


 またか……って、奴以外にもフレイとアルバスもいるじゃないか。


「アリスって、朝はけっこうぼんやりしてるんだね〜」


「……」


 フレイはおっとり、アルバスはだんまり、ハインドはウザい……。

 まあ、とりあえずは中庭へ行こう。


 ***中庭***


「よーし団員諸君、今日は模擬戦の最終日だ。まだ筆記試験が明日あるとはいえ、気を抜かず、全力を尽くして戦ってくれ! 今日は魔法も使用できるぞ!」


 よしきた! 魔法が使えるようになってから、そこから私の本来の力が出せるってものよ。


「なんだ?アリス。笑みを浮かべて……良いことでもあったのか?」


「アンタには分かんないかもね……私の本当の実力が……」


 さて、バカは放っておくとして組み合わせは……あっ……


 2回目にまさか、ハインドと当たることになっているとは……ふん、まあいい。

 ここであのバカ野郎に、引導を渡してやるまでだ!


 ***


 一人、また一人と、戦いが過ぎていく。

 誰もかれもが、最終日だけに気合いを入れて魔法や、浮遊魔法を用いた空中戦を展開している。


 しばらくすると、リストベルが光った。

 来たな……教本を読んでたお陰で待ちくたびれはしなかった。

 気合十分で土俵へ向かう。


 向こうには、杖を持った魔法使いがいる……

 普通の奴では力不足だということを、この戦いで思い知らせてやる。


 《始め!!!》


「【アイド・フロート】……」


 まずは浮遊魔法。この魔法は発動すると全身から魔力を放出し、浮遊できる。

 そしてこの魔法は、魔力の回復が消耗に追いつき易い。


 私はこの魔法を使った空中戦が大得意だ。


 さあ、一気にカタをつけるぞ。


「【ボルゼ】!」


 今の相手の詠唱は雷撃魔法か。ならば……!


 地面にわざと足をついて、走り込む。

 ジグザグに不規則に跳びながら近づき、雷撃を避け、躱していく。


 着地を狙ってきたならば、そこから浮遊へ移行して、魔力を一気に消費してダッシュ!


 そして、相手の眼前に迫った時に柄で杖を打ち、回転斬りからの、縦一文字……


 完璧に決まった!


 《勝負あり!!!》


「は、早え……」「すごいね〜、アリス……私じゃ、あんなこと出来ないや……」


 当然だ。私の努力を簡単に上回られたら困る。

 そんなことより、いつも通り休憩所に行って、明日の奴をなんとかしなきゃ……

 昨日みたいなことはもう御免だ。


 ***休憩所***


 おそらく、明日は昨日みたいな問題が来るはず……

 ……よしよし、それなりの対策は練れそうだ。


「アリス、さっきの観てたけど、やっぱすげえよ」


「あの練習と、同じ動きをやってのけるなんて……すごいことだよ!」


 ハインドとフレイか……邪魔者が増えたな……


「あれ、もう明日の勉強をしてるんだ……マジメだなぁ……」


「なによ……マジメじゃダメかしら? 私はね、この試験に絶対に落ちるわけにはいかないのよ」


 早く帰ってくれないだろうか……集中できない。


「別に悪いとは言わないさ。むしろ、尊敬すべきだと思うよ」


「じゃあ、あっちに行って……私を尊敬したいなら、黙々と本に齧り付くことね」


 さあ、これで戻っていってくれるかな……


「ねえ、これはどういうのか教えて欲しいんだけど……」


「ああ、そこは俺も気になってたんだ。アリス、教えてくれよ!」


 逆効果かよ……まあ、邪魔されるより頭に入りそうだし、試してみるか。


「わかったわよ……いい? ここは、解答だと川に飛び込めってあるけど、素直に降伏すべきよ。その方が誰も傷つかないし、手っ取り早いわ」


「へえ……アリスってやっぱり、かっこいいなぁ。戦っても強いし、こういうことにも積極的だし……」


「だよな! だから、みんなにも教えてやろうぜ!」


 みんなに教える……?

 馬鹿なことを……そんなことをしたら、ライバルを強化することになってしまう。

 そんなことは断じて出来ないね。



「おっと、リストベルが……アリス、次は俺たちの出番だな! 行こうぜ!」


 さて、馬鹿野郎のハインド……コテンパンにしてやる……今日、ここでな!



 定位置に着いて相対する……。

 相変わらず楽しそうなツラしやがって……歪めてやるよ……!


 《始め!!!》


 さあ、まずは【アイド・フロート】。

 そして一気に終わらせてやる!



 ハインドの眼前へと、一気に近づく。


 間合いだ、渾身の一振りをお見舞いする!



 が、攻撃が入るその一瞬……なんと、ハインドは斧の腹を見せた。

 その盾のような部分で、私の攻撃を防ぐ。


「ふん、少しはやるようね……」


 さらに攻撃を斧の隙間から叩き込もうとするが、ことごとく避け、躱され、弾かれてしまう。

 戦い方もウザいやつだ、とっとと負けろ!


 ガードしかしないのならば、こちらはフェイントの回転斬りだ!



 っが、これも後ろに一歩だけステップをされて躱される。


 追撃をかけようと奴に目線を合わせると、重い一撃が私の肩に叩き込まれた。


「ぐあっ……っく、はあぁ!!」


 まさかあいつ、バックステップのときにはもう攻撃態勢だったのか!?

 一本奴にとられたが、すぐさま返す刃で突きを入れることが出来た。


 これでおあいこだ。とりあえず、高度を取って……


「どうしたんだよ、怖気付いたのか?」


 なんだと!? 「怖気付いたのか」だと!?

 ハインド……貴様! 許さない! 絶対に、その身体に終わりの二撃を叩き込んでやる!


 剣先を向け、奴の頭めがけて急降下を仕掛ける。


 奴の頭……剣先が到達する……その時だった。


 剣が下から何かを当てられて変えられ、奴には当たらなかった。

 その上、その隙を突かれて横っ腹に一撃を貰ってしまった。


「ぐぅっ……!!」


 地面にぶつかり、2回転ほど転がされたが……まだ動ける!


「はああああ!!!」


 地面スレスレを低空飛行して、奴の足に一撃をお見舞いしてやった。


 私は負けない……負けるわけにはいかないんだ……!! 絶対にこんな奴なんかに……!!!


 これでトドメにしてやる……!

 私は剣を両手に持ち、怒りとともに、相手へ向ける。


 ハインドもこちらに合わせてか、両手で斧を構える……


 風が唸り、観衆からの雑談は一言も聞こえない。


「ハインド!!!」


 目にしみる風も無視して「怒」の力をただそのままに、縦一文字の斬撃を振り抜いた……!




 けど、遅かった……

 私の一撃が奴に届くその刹那の一瞬、先に奴の斧が私の体に触れていたのだ……!


 《勝負あり!!!》


 私はしばらく動けなかった。

 悔しいのか、悲しいのかは知れないけど、涙が頬を伝うのがわかる……


 負けたのか……こんな奴に……


 込み上げてくる気持ちが、私を素直にさせようとしてくる……


「二人とも、すごい戦いだったね……って、アリス、泣いてるの……?」


 う、うるさい……!!!

 なんで……なんでこんなに悔しがってんだよ……!? なんで、こんなに複雑な気分なんだよ!?


「……アリス、もう泣くなよ。実戦だったら、さっきのは間違い無く俺が死んでた。タッチの差だったんだよ」


「タッチの差!?アンタ、嘘言わないでよ!魔法を一度も使わずに!」


 思わず、ハインドの胸ぐらを掴んで、涙を流しつつも恨めしく目を見る。


「お、おいおい、そんなことはないぜ。第一に、俺は魔法が使えないんだぜ?」


「えっ……!?」


 言ったことがお門違いだということに、言い表せない感情になった。

 魔法は、使える人もいれば、使えない人もいる。

 当たり前だと思っていた自分を必死に消したくて、胸ぐらを離した。


「ご、ごめん……知らなかった」


「なに、いいってことよ。それより、いつもの四人で飯食いに行こうぜ!」


「……」


 何も言いたくない……


 ***


 食事中、何を言うまでもなく、ただやさぐれていた。


「気は済んだか?アリス」



 ……何時までも、こんな気持ちでいるわけにはいかないか。


「うん。……ありがとう。……明日、頑張りなさいよ。アンタは私勝ったんだから」


 本当は、こんなことを言いたくないはずなんだけど……

 あんな負け方をしたんだ。認めるしかない。


「じゃあ、私、先に戻っている」


「おう、アリスも頑張れよ!」


 当然だ、次は負けない。

 一敗した借り……明日は必ず返して見せる!

ハインド「なあ、俺のこと、見直してくれたか?」


アリス「……さあ、どうかしらね。団長の座は譲んないわ!」


ハインド「そうか。でも、怒って泣いてるアリスもかっこよかったなぁ……」


アリス「……褒めても何も出ないわよ」


次回もお楽しみにね。

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