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〈第19-2話〉苦しい戦い

翼竜と交戦するクロスレギオンズ。

しかし、翼竜はどこまで深く斬りつけても死なないという、異常なタフネスを見せた。

さらには、その背中にはギャラクス四天王の一角「オロス」が控えており、奴もトリガーを持つバッテリーであった。

今まで以上の苦戦を強いられ、ハインドとフレイは身動きが取れなくなってしまう。

そして、アリスもゾンビのような翼竜に、危うく飲み込まれるところであったが、ギリギリで間に合った少年のフォローで難を逃れた。が、頭部を負傷してしまう。

血を流しながらもアリスは奮闘し、ついに翼竜の首を刎ねることができたのだった。

 やっとのことで、翼竜を倒せた。

 しかし、私は今すごく気持ちが悪い……思わずアスカを手放し、膝を着いてしまった……!


「あ、アリス!? どうしたの!?」


 こ、込み上げてくる……これは……!


「うっ……オエッ……!」


 口から出た黄色いソレは、今も流している自分の血と混ざって、さらに気味の悪い色に変わった……

 くそ! 頭はズキズキするし、翼竜の背中にしがみついていたときの揺れで酔ってしまったのか……!


「「【キュア】!」」


 アルバスと少年から回復魔法の詠唱が聞こえると同時に、鉛のように重かった自分の身体は少し軽くなった。これなら、もう一戦ぐらいはできそうだ……!


「大丈夫か?アリス」


「ええ……あとは……」


 残っているのはオロスだけだ。

 奴は今、首のない翼竜の傍にいた。


「フッ、この翼竜を倒して、このオロスを追い込んだつもりか?」


 そう言って奴は、亡骸に鞭を打った。


 すると、もう首のないはずの翼竜が再び動き出した!


「な……!?」


 おかしい、奴はもう死んでいるはず……!

 頭のない生き物が動けるはずが……!


「フハハハハハ!!! どうだ! 恐れたか!? 恐怖したか!?」


「この翼竜が無くならない限り、永遠に戦い続けるのよ! 人間!」


 翼竜はこちらを再び捉え、攻撃態勢を取っている……

 ……そうか、ようやく分かった。あの鞭の能力が。


「あの鞭、どうやら打ちつけた生物はなんでも使役できるようね……!」


 ハインドは、鞭に触れてから体が言うことを聞かなくなったと言ってたし、あの翼竜が再び動き出したのも、鞭を打たれたからだった。


「そのようだな……どうする?」


 対策は簡単だ。「鞭に当たらなければいい」

 とはいえ、言うは易し行うは難しだ。一度もあの鞭に当たることなく、オロスを倒さねばならない。

 それは並大抵のことではないだろう。アイツには自ら名乗っていたように、ギャラクスの四天王という肩書がある。


「アルバス、そして君。不意打ちをあのインプに喰らわせるよ」


 この手に限る。しかし、こちらの動きは向こうも大体見ている。

 あの翼竜を盾にしてくるだろう。


 そこで、分断する。


「アルバス、もう少しだけあの翼竜を相手してくれない?」


「了解」


「君は私に精霊をつけて」


「え?オイラは動かなくていいの?……分かった」


 作戦はまとまった。


「どうした? 怖気づいたのか?」


 とうとう煽って来たか。

 だが、この作戦がうまくいけばなんとかできる……!


「【ボルゼ】!」


 アルバスの雷撃魔法を合図に、肉薄を開始する。

 翼竜は雷撃によって痺れており、股の間をすり抜ることができた。


「来たか……!」


 まずは一騎打ちだ。

 アスカを振り抜き、走りながら剣で斬りかかる……!


 一撃は躱され、カウンターの鞭が飛んでくる!


「【フィンガーフラッシュ】!」


 咄嗟に左手から光弾を放ち、鞭を払いのける……


「ほう、やるな!」


 再び互いに武器を向け、膠着する……血と汗が頬を伝う……!


 ヒュルルルルル……


 そこを狙って、オロスの背後から精霊の攻撃が放たれる。


「おっと!」


 その攻撃を辛くも躱したオロスの着地を狙って、私は待ち構えていた……!


「もらった!」


「おう!?」


 渾身の斬り上げを放つ!

 それはオロスに致命的な傷を与えることはできなかったが、鞭を弾き飛ばした!


「しまった……!」


 あと一息だ……!


 ヒュルルルルル……


 すると、最後の一撃とばかりに、精霊が強烈な突風を引き起こした!

 私は風上にいたから平気だったが、その暴風はオロスを吹き飛ばした……!


「ぬう……! お、おわああああああ!!!」


「ちょっとーーーーー!!!」


 オロスは自分とトリガーの断末魔とと共に、蒼い海へと落ちて行った……

 戦いは終わった……私はドッと押し寄せてきた疲労で、力なく膝を着いた。


「はぁ……はぁ……」


 目の前がぼんやりとするし、頭はズキズキしっぱなしだ……

 ポタポタと、汗と血が混じった液体が流れ落ちている……気持ちが悪い……


「アリス!……って、おい! 大丈夫か!? 血まみれじゃねえか!」


 うるさいな……ハインドの奴は……。

 ……流石に体が限界だ……次第に私の目の前は暗くなってきた……


 ***


「……うん……?」


 目が覚めると、私は部屋で毛布を掛けられて寝ていた。

 自分の身体を起こすと、身に纏っているのは専用服ではなくその下のインナーだった。

 長いこと血を流していた頭には、包帯が巻かれていて、まだズキッと痛む。


 しばらく何も考えずにボーっとしていると、おもむろにドアが開いた。


「……あ、アリス! 目が覚めたんだ、良かった!」


 フレイが入ってきた。


「ええ……私、あの後どうなってたの?」


 記憶がない。寝てしまったからかもしれないが、誰かに担がれた記憶がない……


「大変だったよ~。血まみれで倒れてたから、包帯を頭に巻いて、頬の血の跡を消して……」


 長いから簡略する。

 私が意識を失ったときに、フレイたちが駆けつけてきた。

 しかし、アルバスと少年は魔力切れで、回復が出来なかった。


 ところが、そこに救急道具を持った乗客や乗組員の人々が集まって来たらしい。

 そのお蔭で、私は大事に至らずに済んだのだ。


「でさ、アリスのことを『英雄だ!』ってみんな言ってたよ」


「そう……」


 ガラッ!


「この船を救った英雄ってのは、そこの嬢ちゃんかい!?」


 勢いよくドアが開いた……何事かと思って声の方を見れば、そこにはハインド……じゃなくて、記者らしき男がいた。

 なんか、めんどくさそうな気がする……


「え、ええ……」


「おお、そうか! まず言わせてほしい、ありがとう!」


 英雄……か。一度呼ばれてみたいとは思ったけど、実際だと面倒事が増えるだけなんだろうな。

 そして、男はメモ帳を取り出して話を続ける。


「すごい怪我を負ったみたいですけど、相手は強かったのかい!?」


 そんなの見れば分かるだろ……この包帯が目に入らないか?


「そうね……かなり手強い相手だった」


「じゃあ、どうして甲板に向かったの?」


 どうもこうもあるか。素直に任務と……いや、待てよ。

 旅団のことをバラすのは何かと不味いんじゃないか? 事実、ロイヤルにはもう予備のトリガーが無い。

 それを知った列強が攻めてくるかもしれない……ここはシラを切るか。


「ええと、持ってるトリガーがドラゴンスレイヤーだから、何かしらできるかな……と」


「おお! 勇敢だね! まるで絵に描いた英雄みたいだ!」


 うるさいな……頭がまたズキズキしてくる……


「ねえ、お兄さん。どいてくれない?」


 記者の後ろには、あの少年が居た。


「え、君は彼女の知り合いかい?」


「いや、オイラはちょっと手を貸しただけさ。ほら、どいて」


 記者をあっさりとどかして、彼は部屋に入ってきた。

 フレイの隣に座った少年は、気分がよさそうな笑みを浮かべている。


「気分はどう?」


 冷やかしか……?

 どう見ても悪いに決まってる。


「悪いわ……頭はズキズキだし……それより、なんか用?」


 少年は頷くと、真剣な顔で話を続ける。


「ラグナスの……オイラの父さんに会ってくれないかな?」


「え?」


 表情からして本気だろうけど、何故……?

 寄り道をしているヒマはないんだけど……


「実はオイラの父さんは国王なんだけど、ちょっと困ったことが起きてるんだ」


 !? 国王だと!? 思わず、頭痛が吹っ切れた。

 この少年は、ラグナス4世の息子なのか……!

 それなら手を貸さねばならない……ロイヤルとラグナスは同盟を結んでいるから、NOとは言えない。


 はたして、あの国では何が起きているんだ……?

読者の方々、ここまで読んでくれて本当にありがとう。

これにて第二章「情報収集」は幕引きよ。


第三章もお楽しみにね。

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