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〈第19-1話〉ポル砂漠の激闘!

鉄道を降りたクロームたちは、ラグナスの国境検問所に差しかかる。

ミコトが、カインが通れるように変化魔法を顔面に撃ち、クロームは爆笑、検問官の人も爆笑。そしてカイン本人は爆発寸前だった。

ともあれ、検問所を通り抜けた三人は新たな景色を見るのだった。

 検問所を抜け、洞窟を通り抜けると、そこは朱に染まった広大な砂漠が広がっている……!


「おお……! すっげえ広い……!」


「そうね……一面砂だらけなんて……!」


 砂漠に実際に来たのは初めてだ……!

 本当に砂だらけだ! 砂以外の物って言ったら、人の足跡か、茶色い岩石ぐらいだ。


「二人は初めて来るんだったな。ここはポル砂漠だぜ。道は俺に任せな」


「いや、私もよ!」


 カインとシャナ……二人が居て本当に良かった!

 俺だけだったら、絶対この砂漠の迷宮で行き倒れていただろう……!


 今の彼はさっきの面白い時とは一転して、一番頼りになる!


「さて、やることは簡単だぜ。俺の後についてくるだけだ」


 シンプル!


「いいのか?そんなシンプルで……」


「ふん、トツカ。前も言ったが、俺は前はこの国に居たんだぜ。まかせろよ」


 彼は笑って親指を自分の胸に向けている。

 かっこいい……!


 彼は『旅人用』と書いてある、近くの荷車から大きな布と傘みたいな帽子を、三枚取ってきた。


「これを着てくれ。砂嵐になった時とか、服が汚れるからな」


「お、おう! ありがとう!」


「あら、親切ね。礼を言うわ」


 マントのようなそれを羽織ると、一層、臨場感が高まる……!

 すっごいワクワクしてくるぜ!


「さっ、行くぞ!」


 カインに続いて出発だ! 目的地はラグナスの中心地!

 俺たちは砂漠の大地に足を踏み出した!


 ***夜のとばりが降りたころ***


「……砂漠ってそんなに熱くないんだな……」


 しばらく歩いていたけど、正直驚いた……!

 熱砂の砂漠と聞くから、てっきりメチャクチャ熱いのかと思ったら、布を羽織ったり帽子を被っていれば大したことはないのだ。


「まあな。道に従って、完全装備なら大したことはあんまりないぜ。……けど、砂漠の恐ろしさっつうのは……」


 すると、右手から謎の地鳴りが聞こえてきた……!

 俺たちは足を止めて、そこを見ると、砂がどんどん盛り上がって……砂丘みたいにデカくなっていく……!


「噂をすれば来たわね……!」


 カインはシャナを取り出し、いつでも投げられる態勢を取っている!

 俺たちも、それにしたがってトリガーを構える……!


 ズバーン!!


 まるで、鯨が息継ぎのために海から現れるかのような大きな音を発しながら現れたのは……

 巨大なミミズだ!


「きゃあ! む、虫!」


「で、でけえ……!」


 その大きさは、ドラゴン・オークの全長と同じくらいだ……!

 ミミズはこちらに気付いているのか、先端のグロテスクで大きな口を向けている!

 それは暗い夜でも、月光ではっきりと見える……!


「デス・ワーム……よく砂漠をうろついてるんだが……こんなにデカいやつだとはな……!」


「今回のって、いつもの1.5倍くらいデカいんじゃないの……!?」


 カインとシャナが驚愕するほどの大きさ……!

 こ、こんな奴に勝てるのか……!?


「ど、どうすればいいんだ!? このままだと戦闘は避けられないだろ!?」


「に、逃げましょ! こんな虫、相手にしてるだけ無駄よ!」


 カインは気を取り直すと、再び落ち着いた口調で話を続ける。


「落ち着け。デスワームは魔法攻撃には弱いんだ。そうでなくとも、こっちにはトリガーがある。そして、逃げようにもコイツは音で動きを感知してくるし、「狙った獲物は逃さない」執念深いやつだから厄介なことになるぜ」


 倒せない敵ではないってことか……!

 ……よし! 俺は再びデュラを構え直す!


「そう……分かったわ。こんな虫、とっとと退治しちゃいましょ!」


 一番怖気づいていたミコトも気を取り直した!

 これで戦闘準備は万端だ!


「よし、行け! シャナ!」


「【雷式・天撃】!」


 二人の先制攻撃が最初に叩き込まれる……!

 ……が、あまり効いていなくないか……!?


「硬いな……! なんだコイツは!?」


「ちょっと、魔法に弱いんじゃないの!? 全然効いてないじゃない!」


「あ、ああ……どうなってんだ!?」


 二人が困惑している間に、俺はミミズがシレッと地面に潜っていることに気が付いた!


「みんな! ミミズが……!」


「なんだ……潜航しやがったのか! くそ! みんな、ばらけて逃げろ!」


 カインの指示通り、俺たちは散開して必死に走る!

 何が起こるっていうんだ……!?


 ズバーン……!


 カインの逃げた方からだ!

 この音……何が起きたのかは粗方見当がつく……!


 ***


「くそ……かってえ奴だぜ……!」


 ミミズと交戦している彼の元に着いた!


「大丈夫か!? カイン!」


「ああ。俺はな……だが、走ってる時に、シャナを落としちまった……!」


「な、なんだって!?」


 忘れてはいけないことだが、彼のトリガーはチャクラム……暗器だ。

 いつもは「小さい輪っか」にみえる代物だから、落としたとなると……!


「……わかった! ここは俺が何とかする! だから、カインは早くシャナを!」


「すまねえ……無理はすんなよ!」


 無理はするな……か!

 けど、少しばかりこれは無茶になりそうだな……!

 デュラは接近戦しかできないトリガーだから、遠距離で安全に対処なんてできないし……肉薄するしかねえ!


 ……けど、見るからにヤバそうなあの口が向いてるところに突っ込むのは、流石に気が引けるな……

 ん? 気が引ける……? そうだ! 何とかして注意を逸らせれば……!


 さっきカインは、「音で感知してくる」って言ってたから……何か音を立てれば……!

 よし!


 デュラの鞘を取り出して、ミミズの後ろへと投げ上げた!

 放物線状に軌道を描いて、見事にソレはミミズを越えて、砂にバサッっと音を立てた!


 ミミズは新たな音の正体を確かめるために、こちらに背を向けた……今だッ!

 一気に砂を蹴り、肉薄する!


 ……が!


「うわっ!」


 砂に足を一瞬だけ取られて、そのせいで転んでしまった……!

 ミミズはこちらへ振り返り、今まさに、その恐ろしい口でこちらを……! 摂食しようとしている!


「……!!!」


「クローム……!!!」


 もう助からねえ……!

 今度こそ最終回だ……! 俺は……目をつぶった……!


 完……作者の次回作に期待してくれ……!



















 と、思った次の瞬間だった……!


「はああああああ!!!」


 この高い声は……ミコトか!?

 それと同時に、大きな衝撃音が上から響いた!


 徐々に目を開けると、ミミズは別の方向……ミコトの方を向いていた……!

 つまり、俺は助かったのか……!?


 少しの間、生きた心地がしなかったけど、立ち上がって服の砂を払う。


「クローム……大丈夫?」


 デュラの呼びかけで、やっと心が現実に戻ってきた……!


「ああ……大丈夫だ! 行くぜ! デュラ!」


 鞘を拾って、ミコトの元に向かう!


「くう……!」


「驚いたな、あんな音がしたってのに、まだ動けんのかよ……!」


 ミコトとトツカも、苦戦を強いられているみたいだ……!

 けど、これは逆手に取ればチャンスだ!

 今なら注意が彼女の方に向いているし、一撃を叩き込める絶好のチャンスだ!


「うおおおおおお!!!」


「「クローム!」」


 月光にデュラが煌めく中、渾身の斬り上げをデス・ワームに放つ!


 刀身は背中をザックリと切り裂き、そこからは緑色の体液らしきものドクドクと出ている……!

 ミミズは辺りをのた打ち回り、最終的には、逃げるように潜って行った!


「あんなザックリ入ったなら、もう来ないでしょうね……」


「ああ……さっきはありがとな。あのときにミコトがいなかったら、今頃俺はおいしく頂かれているところだったぜ!」


 ミコトたちと勝利の余韻に浸っていると、カインも合流してきた。


「あれ、もう決着は着いたのか……なんか、すまんな」


「ごめんなさい。あれだけ意気揚々としてたのに……」


 二人はどうやら、かなり責任を感じてるみたいだ。

 夜だけにダークな空気が広がりそうだ……! けど、そんなことはさせないぜ!


「そんなに気にするなよ! 終わり良ければ全て良しだぜ!」


「そうよ。気にしたら負けよ」


「元気出せよ、シャナ。そういうこともあるさ」


「トツカの言うとおりだよ!」


 俺たちが必死に励ました甲斐あって、二人の顔は元のクールな顔に戻った!


「デュラ……トツカ……ありがとう」


「気にしたら負け……か。勉強になったぜ。……さて、あと少しだ!」


 街はまだ見えそうにないけど、彼が言うなら多分そうだ!

 いったい何が待っているのか……楽しみだぜ!

クローム「みんな、ここまで読んでくれてありがとな! 今回で、俺の第二章は終わりだぜ!」


カイン「次からは第三章ってわけだ。これからもよろしくな」


ミコト「これからどんな敵や味方、そしてトリガーが出てくるのか。楽しみに待ってなさいよ」

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