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〈第18-1話〉笑いとの戦い!? 山脈内の検問所!

ミコトが仲間に加わり、新たな目的地「ラグナス」を目指すために鉄道で移動することにしたクロームたち。

クロームは初めての鉄道に大きな感動とロマンを抱いたのだった。


 列車の揺れる感覚がする……

 俺は少しずつ瞼を開いた。


「……あれ……」


「あら、起きたみたいね。クローム」


 ミコトの声か……外はまだ明るいみたいだ。

 少なくとも、まだ夕暮れではなさそう。


「いいタイミングだな。もうそろそろ、終点みたいだぜ」


「え!?」


 お、俺、そんな寝ちまったのか!?

 くっそ~! 景色をロクに見れていないっていうのに!


 ええい、少しだけでもこの目に焼き付けておかないと!


 窓に張り付くと、そこには草木……が生い茂っている……

 文献を見た限りだと、ラグナスの首都は砂漠の中心にあるって……!?


「……クローム、まさかそのままラグナスの首都に着くと思っていたのか?」


「バカね、ヤマトとラグナスで鉄道の管轄が同じなわけないわ」


 そ、そういえばそうだ……!

 ヤマトはごく最近に鎖国を解いたわけだし、そこまで外国と手を取り合っているわけがないか……。


 再び腰を下ろした。


「にしても速いな、ヤマトの鉄道は。三時間であっという間に西端だ」


「そうなの? 私たちからしたら、これぐらいが普通よ」


 へえ……俺が鉄道に乗ったのはこれが初めてだから、何とも言えないな……

 カインが「速い」って言うことは、速いってことなんだろうか。


「ロイヤルの鉄道はもっと遅かったぜ。今は分からんが、昔は黎明期だからか知れないけど飛行船の方が圧倒的に速かったな。それに、時間通りじゃないのもザラだった」


「あら、蒸気機関の生みの親も割と苦心していたみたいね」


 え……ロイヤルの民として、なんだかもどかしいな……

 とはいえ、ヤマトも鎖国しているときに、何もしていなかったわけじゃないんだな。


 そんな話をしているうちに、列車が減速していく。

 窓を覗くと、ホームが見える。


「よし、着いたわ。ここからは歩きよ」


「え!?」


 ちょ、ちょ、ちょい待て、歩きってことは砂漠を横断するのか!?

 もし道に迷ったりしたら……!? ロマンはあるけど、危険が危ない!


「そんな驚くなクローム。歩きっつっても徒歩じゃねえ。現地の人の力を借りりゃあいい」


 流石、世界を流離(さすら)う盗賊……砂漠の渡りかたも心得ている……!

 彼が居れば安心できるだろうと思いながら、俺たちは列車を降りた。


「うわあ……でっけえ……」


 ヤマトとラグナスが挟む境界線。それはこの大きな山脈だ……!

 縦にでかいというよりは、横に広い……!


「アイギス山脈だな……」


「アイギス? 宝霊山脈でしょ?」


 ……どっちだ?


「えっ……ヤマトではそういう名前が付いているのか」


「ってことは、ラグナスだとその呼び名ね」


 そうか、境界線にあるから呼び名がマチマチなのか。

 となると、どっちの国の領土なんだろう……?


「行こうぜ。あのトンネルを潜った先が、いよいよラグナスの領土みたいだな」


 カインの指を差した方向には、丸く掘られたトンネルが大きく口を開いている……!

 内部からは、ラグナスからの商人らしき人物も行き交っている。


「お、おう!」


 俺たちはトンネルに突入した!


 中は薄暗いが、電球が所々に灯っているのが見える。

 そして涼しい……これから熱砂の砂漠が待ち構えていると思うと、まるで嵐の前の静けさみたいだ。


 それから進み続けて、大体山脈の中間辺りだろうか。


「……おっと、検問所……」


 カインが少し上ずった声で目の前を睨む。

 そこには、ラグナスの国境検問所が構えあった!


「ッチ……まさか、トンネルの中に検問所があるなんてな……」


「きっと、山の半分から先はラグナスってことなのかもね」


 なるほど……ミコトの言うとおり、どっちの物か分からないなら半分にすればいいってことか。


「さて、ミコト。お前の考えとやらはなんだ? どの道、このままだと国境を越えることになるんだろう?」


 そういえば、そんな話があったような……

 カインが盗賊だから入れないだとか何とか……


「フフフ……簡単な話よ。あなたの正体がバレなきゃいいって話でしょ?」


「なに? どういうことだ?」


 俺もカインと同じ気持ちだ。

 バレないようにってことは、変装かなにか……?


「化ければいいのよ。私の術でね」


 術……!? そうか、その手があったか!


「お、おい、まさか変化魔法を使うのか!?」


「バレないわよ。私を見くびらないでほしいわ」


「いやいや、万が一バレたら……クロームからも何か言ってくれよ!」


 カインの言うように、バレたら不味いかもしれない。

 でも、旅人は賭けに出る必要もあるはずだ! それがロマンだ!


「ミコト、やろうぜ!」


「お、おい……どうしてお前まで……」


「いいじゃないか、カイン! まだやってもいないのに、無理って決めつけんのはロマンじゃないぜ!」


 何事も挑戦だ!

 それが危険の伴うものだとしても、失敗が9割を占めているとしても、やらないで諦めるより、やってから後悔するほうが何倍も意味がある!


「わ、わかったよ……しゃあねえな……」


 観念したカインに、ミコトはトツカを向けた。


「じゃあ、【変顔】!」


 ……カインの身に大きな変化は見られない。

 身長が伸び縮みするとか、体色が変わるとか、そんな様子もない……


 そして、顔を見た……


「……! っぷ、くふふふ……!」


 思わず笑いが込み上げる……! なんだあの顔は!?


「ははは! なんだあの顔! ミコト、お前やっぱ最高だぜ!」


「うわあ……人間じゃないみたい……」


「カイン……その顔……ククク……はははははっ、ゲホッゲホッ!」


 トリガーたちまで抱腹絶倒している!

 特に、シャナは笑いすぎて咽ている!


「おい! 何笑ってんだ!」


 鼻が……鼻が豚っ鼻になって、眉がでかい……!

 くっ……面白すぎる! いつもクールなカインが……こんな顔に……!


「似合ってるじゃない」


「うるせえ! どこがだよ!」


 本人には申し訳ないけど、こ、ここは……笑いを堪えながら……進もう……!


 検問所は割と空いていた。少なくとも、飛行船の時よりは大分マシだ。

 でも、代わりに笑いを堪えるのが辛い……!


「……ええと、次」


 俺たちの番だ……さて、どうなるか……!


「……ぷっ……!」


 検問の人まで笑ってるじゃないか……!

 くそ、こっちまでつられて笑いそうだ……!


「……い、行ってよし……次」


 凌いだ……! うまくいったぞ!

 きっと、カインを長く見たくないから急いで済ませたのか……?


「ブフォ……!」


 けっこう危なかった……ギリギリだったぜ!

 あと少し遅れたら、検問の人の前で吹きだしていた……!


「……ミコト、解けよ」


 彼の顔はレッドドラゴンのように赤い……!

 そのせいで、余計に笑いが……!


「解け? おいおい、それがレディに物を頼む態度か?」


「あ”!? へし折るぞ! この木の棒!!」


 水を差したトツカに、カインはすごい形相に……!

 やめろ、それはかえって笑いが……!


「いいわ、トツカ。私はやさしいからね。解いてあげるわ」


 トツカの先端が光り、カインの顔は再び元に戻るのか……


「っぷ……ははははははは!!!」


 戻るどころか悪化した! 唇を大きくするのは反則だろ!

 不意を突かれてついにトンネル内で溜めこんでいた大笑いを……!


「おい! 人の顔で遊ぶな!!」


「あら、間違えちゃったわ」


 笑いすぎて腹が…腹がいてえ……!

 再びカインの顔を見ると、今度は元に戻っていた。


「次やったら、承知しねえからな……!?」


 あゝ、面白かった……笑い死ぬかと思った……。

 口角がまだヒクヒクしてる……腹筋も痛い……!


「お前はいつまで笑ってんだ。周りから目線向いてんぞ」


 大分彼の怒りゲージが溜まってる……

 これ以上は気を付けないと、大噴火してしまうだろう……!


 笑いを必死に押し殺しつつ、俺たちはラグナスの大地へ向かう……!

シャナ「トツカ……今日は笑わせてもらったわ」


トツカ「このくらいお安い御用だぜ。ミコトの術はすごいもんだろ?」


デュラ「いいなぁ、私も術とか使ってみたいよ」


シャナ「デュラには「研がなくていい」っていう長所があるでしょ? 私たちはその分を魔法で補ってるのよ」


トツカ「おっと、それはメタい話だから止めておけ」


次回も楽しみにしていてくれ!

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