表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/38

〈第2-1話〉旅の扉へ……

ウォルタに住むロマンに生きる少年、クローム。

村長から錆びついたトリガーを借り、鍛冶屋で修復したところそのトリガーを貰い、バッテリーとなった。彼はロマンの炎に包まれながら、帰宅したのだった……


「レイア!念願のトリガーを手に入れたぜ!」


 帰ってきて一番に意気揚々と報告する!


「へえ、良かったじゃない。ところで、夕ごはん食べよう?」


 うーん、妹には今ひとつ反響がないな……

 ま、まあいいや、食事の準備をしてからゆっくり話すとするか。


「今日はお兄ちゃんの好きなものを用意しておいたよ〜」


「おお、ホントか!?」


 俺は好きなものを想像して、ワクワクしながら鍋を開けてみた。


 そこにはやはり、期待を裏切らない幸せがあった。


「よっしゃ、これだ!」


 カレーライス……!!

 かつて幼い時、まだ生きていた祖母が用意してくれたご馳走……それ以来、滅多に食べる機会はなかった!


「ありがとうな、レイア!」


「ふふん……ねえ、お兄ちゃん。なんでカレーを用意したと思う?」


「え?」


 さあ……一体どういうことなんだろう?

 気まぐれで用意してくれたわけじゃないってことか?


 レイアは少し切なそうな表情で、話を続ける。


「なんだかね……昨日の夜、お兄ちゃんがどこか遠いところへ旅に出る夢を見たんだ。それで気が変わって用意したんだ」



「……マジか、俺が!?」


 遠いところ……旅……なんだかよく分からないけど、体の芯が燃えている。

 熱い情熱と見たことない世界への妄想……旅に出る確証があるわけじゃないけど、考えるだけでも果てしなくワクワクする!


「旅……ロマンを感じるぜ……レイア、そのために用意してくれたのか」


「うん。だって、もしかしたら……いや、しばらく会えなくなるかもしれないから、ね」


 我ながら、なんて良い妹なんだ! そこまで謙虚に……!

 お兄ちゃんは誇りに思っているぞ!


 情熱に唸る手でポンとレイアを撫でた。


「大丈夫さ。俺は必ず、各地のロマンを体験して、絶対帰ってくる!心配しなくて良いぞ!」


 彼女の表情はたちまち、素の明るい笑顔に戻ってくれた。


「まったく、ロマンバカなんだから……」



 さて、今日の俺の警備は非番。

 明日が気になるし、シャワー浴びて早く寝るか。


 食事を済ませて、俺は早速シャワー室へ向かった。


「ふう……やっぱ、ワクワクしながらシャワーを浴びると、違った気持ち良さがあるな〜」


 浴びる水滴が本で見た砂漠の熱砂にも、北国の吹き付ける吹雪の雪のようにも見えてくる。

 もうすっかり気分は、旅のリハーサルだ。


 でも、いくらリハーサルしても、それは単なる予行練習。

 実際の暑さや、寒さなんて俺の想像を遥かに超えるものだろう……


 明日が楽しみだ。トリガーを持って、寝台へ向かおう。


 リビングに立てかけておいたトリガーを持つと、何か不思議な気分になった。

 近くに見えない誰か……まるで、カメレオンみたいな「透明人間」がこっちを見てるような……


「……どうかしたの? お兄ちゃん」


 近くには裁縫をしている妹しかいない。


「え?ああ、いや。なんでもないさ……じゃあ、ちょっと早いかもしれないけど、俺はもう寝るぜ」


「おやすみなさ〜い」


 おかしいな……明らかに、トリガーを持ったところで……

 まあいい、それはそれで一つのロマンを感じる!



 よし、寝るか。

 ……といっても、ワクワクして、寝台に横になっても、なかなか寝れそうにないな。


 だが、俺には睡眠の必勝法がある!


 まず、目を閉じる。

 そして次に頭の中に単語を思い浮かべて、その頭文字でしりとりをする。これなら一発で眠りに誘われる。


 今日は……旅にしよう。

 旅……タイガ……タービン……タイガー……ターコイズ……

 ……よしよし、眠くなってきた……太陽……怠惰……対決……タイマー……






「…ム…て………きて……クロー…起きて」


 なんだ?……妹か?……シャワーの水はちゃんと止めてきたはずだけど……


「!?」


「やっと起きてくれたね、クローム」


 目を覚ますと、そこには薄桃色の髪の少女……いや、俺と同じくらいの歳かな?

 俺に起きてと言ったのはこの子だろう……可愛い。


「あ、えっと、誰?」


「初めまして、私はデュランダル。そして、この姿はトリガー・フェアリーっていう状態」


 で、デュランダル……トリガーフェアリー……ってことは、あの剣か!

 ひょっとすると、あの透明人間はこの子だったのかな。


 ロマンだ……これがトリガーの少女ってことか。


「な、なるほど、デュランダル。ところで、此処はどこなんだ?真っさらで、何もないけど……」


「デュラでいいわ。此処は、トリガーと、バッテリーの精神世界。憩いの場みたいなところよ」


 つまり、トリガーと談笑できるって感じかな。

 いいねえ!いろんな妄想が膨らむし、聞きたいことでいっぱいだ。


「デュラ、どうして俺の名前を……?」


「それは私が目を覚ました時に、あなたの妹から名前を耳にしたのよ」


 ってことは、風呂に入っていたときか……?

 知らない相手に名前を呼ばれるのは、なにかむず痒いものだ。


「……そろそろ、時間よ。とにかく、これからよろしくね。クローム」


「え?まって、時間?なんの?」


「そろそろ朝だから」


 早くないか?もう朝か……。

 聞きたいことがまだ全然残ってるけど、致し方ないか。


 開けていた瞼がいきなり降りてきた。




 そして次に目を覚ますと、そこはいつもの寝台の上だった。

 ……そうだ、明日が来たんだ。早く朝ごはんを食べなければ!


「……クローム、まって……」


 この声は……デュラ!

 危ない危ない。デュラを置いて行くところだった。


 鞘のまだないデュラを持って、リビングへ向かう。


「あ、お兄ちゃん。おはよー」


 妹は俺より先にリビングにいた。

 昔からだけどやっぱり、早起きの速度じゃあレイアには勝てないな……


「お兄ちゃん、今日は急いでるでしょ?ほら、一度寝かしたカレーがそこにあるよ」


「そうか、相変わらず気が効いてくれて助かるよ」


 カレーをよそって、トレイに乗せる。

 そして、テーブルに着き、持ってきたスプーンでそれをよそって、口へ運ぶ。


「!?」


 ぐっ……なんだこのカレーは……!?

 一口目でもう辛い!!舌が、胃が痛い!昨日の3倍くらい滅茶苦茶辛い!


「ははは、ドッキリ大成功ってね。ちょっとイタズラしちゃった」


「ヒ〜!ミルク〜ミルクはどこだー!」


 なんとか、保存庫からミルクを見つけて、口に流し込む。


「ふう……俺の情熱並みだ……ミルクがなかったらノックアウトされてた……」


 とはいえ美味しかった。(代わりに舌と胃が死にかけたが)


「流石にやりすぎじゃないか……?」


「ごめんごめん、つい魔が差しちゃって……」


 まあいいか。

 それより、そろそろ村長のところに行かないと。


「行ってくるぜ! レイア!」


「行ってらっしゃい、お兄ちゃん」


 さあ、何が待ってるかな……ワクワクが止まらない。


「お、クローム。それはあのトリガーか」


 警備の仲間だ。腰にはエストックと呼ばれる剣が下がっている。


「ああ。デュラ…デュランダルっていう剣さ」


「へえ、かっこいい名前だな!ところで、エレナさんがお前を探してたぞ」


 エレナさんが……聞けば聞くほどワクワクが込み上げてくる。

 レイアの夢……デュラ……俺は、新たな世界への扉に近づいているみたいだ。


 その扉の目前……村長の家についた。


「あら、クローム。探していたわ、さあ、中へ」


 リビングに通されると、昨日はデュラが置いてあったテーブルには鞘のようなものが置かれている。


「あれは……コレの鞘ですか?」


「その通り。鞘がない剣なんて不便極まりないだろう?おやっさんが作ってくれたのよ」


 その鞘は、強固な皮で覆われ、触ると、金属のフレームが入っているのが分かる。

 すごい……特注品だ。おそらく、普通に作るなら何時間もかかるだろう……


 エレナさんの言う通りデュラを納めてみた。

 ……ちょっと大きいかと思ったが、不思議にもぴったり収まった。


「おっと、クローム。もう来ていたか」


 ドアから村長が入ってきた。その手には何やら包みのようなものを持っている。


「あっ、村長。お邪魔して……その包みはなんです?」


 村長は、包みをデュラの入った鞘のとなりに置いた。

 大きさからしてリストバンドかブレスレットだろうか。


「うむ。実はな、旅に出そうと思うんだ」


「旅……俺がですか!?」


「そうだ。お前は昔から冒険に興味を持っていたからな。 昨日、みんなと話し合って決めたんだ」


 レイアの夢の通りだ……ホントに旅に出れるのか……!!!

 ロマンの焔が、俺の心を包み込んでくる。

 新たな世界への扉が開いた瞬間だった……


 ……が!俺は旅に出る前に、一つ大きな問題があることを思い出したのだった……

俺が旅立てない理由とは……


次回も、楽しみにしていてくれ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ