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〈第15-1話〉巫女

ヤマトの味を楽しんだクロームたちは、ミコトの三人の姉妹に危うく殺されかける。

しかし、客人ということを知った三人は武器を納め、非礼を詫びたのだった。

態度を改めた彼女らは、クロームたちに幽霊退治の露払いを頼んだ。

 外はもうすっかり暗闇に包まれている……。

 あれから何時間が経過したんだろうか。


「はぁ……はぁ……」


 長い……40㎞って、やっぱ長いな……!

 度重なる戦いで消耗が大きくなってきている……!


「大丈夫?あと少しで到着よ。【治癒】!」


 ミコト……これは回復魔法……!

 体が軽くなった! あと一押し……あと一押し頑張るぜ!


「うおおおおお!!! 道を開けろおおおお!!!」


 進路を塞ぐモンスターを一蹴!

 狼だろうが、クマだろうが関係ない!


「おっと!」


 でも、そう簡単にはいかない……!

 目の前にいるモンスターは、変な太鼓みたいなものを持った怪人だ!


「そいつは「ゴロガラドン」ってモンスターだ! 雷に気をつけろ!」


 ゴロガラ……ヘンテコな名前だけど、だからこそ侮れないな……!


「【迅雷】!」


「おわっ!」


 コイツ……太鼓を鳴らした時に雷を落としてくんのか……!?

 くそ! 数も多くて接近できない!


「落ち着けよ、クローム。ここは俺らがやる」


 後衛にいたカインたちが……そうか、「接近できなければ、接近しなければいい」ってことか!

 発想の逆転だ、ここは彼らに任せよう!


「行って来い、シャナ」


「やるっすよ……ツキ!」


「トツカ、【炎式・業火弾】!」


「撃ち放て、アメ!」


 あれ? アメって矛なんじゃ……?


「【水狼牙】!」


 なんとアメの刃から、水色の衝撃波が発生した!


 ツキの矢、アメの衝撃波、トツカの火球、そしてシャナが相手に向かって襲い掛かる!


「グアアアアアアアア!!!」


 流石に耐えられまい!

 全ての攻撃が命中し、ゴロガラドンは爆発を伴って倒れた……!


「おお……!」


「……いこ。もうすぐそこだから」


 そうして道を抜けると、目的地の霊園にたどり着いた。

 辺りには墓が見える……人魂が飛んでいても不思議じゃない雰囲気だ……!


「よし……二人ともありがとう。幽霊は私たちがやる……ついてくるか?」


 消耗を抑えていたために、四人はいつでも動けるみたいだ。


「あ、ああ。もちろんだ!」


「おい、クローム……」


 それに、ここまで来たんだ!

 幽霊とやらには身の危険を感じるが、四人の幽霊退治というのも気になる……!


「わかった。じゃあ、私たちについてきてほしい」


 道中とは逆に四人が先頭に立ち、その後ろに俺たちが続く。


 夜の墓場ほど怖さを具現化したものはないだろう……!

 不気味な墓石、枯れかけの木、そして何時置かれたのかも知れない供物……!


「なんかヤバそうな雰囲気はするけど、モンスターの気配はしないな……」


「当然よ……こんなところに、モンスターが近寄るわけがないんだから……」


 モンスターも怖がっているのだろうか……ということは、それほどまでに危険な場所ってことか……!

 四人はいつもこんな場所を……!?


 しばらく進むと、暗がりには似合わない明るい場所がある……!

 どこか青白くて、燃えているような……その光源は……!?


「人魂っすよ!」


「ああ。みんな、戦闘準備だ!」


 一斉にトリガーを構える……相対するのは、無数の青い火の玉!

 ……一体どうすれば、ダメージが与えられるんだ!?


「トツカ、出番よ!」


「おうよ。任せな」


 トツカの先端が伸長したかと思うと、白い紙のような装飾が展開された!

「変形ギミック」っていうやつか……すごくロマンを感じる!


「【転生式・円軌】!」


 ミコトの前に特殊な文字のようなものが浮かび上がる……!

 彼女はそのままトツカを人魂へ振る!


 すると、人魂たちにも同じような文字が浮かび上がった!


 何が始まるんだ……!?

 俺は息をすることすら忘れて、状況をひたすらに凝視する……!


「「「「界!」」」」


 次の瞬間、人魂たちは白い光に包まれていく……!


「おお!?」


 眩い光は青い炎を白く染め、人魂の中心にある珠のようなものがはっきりと見える……!


「よし。三人とも、いくぞ!」


 なんだかよくわからないけど、四人は人魂の方へ向かっていく……!


 人魂を一つ……二つ……四人は次々と射抜き、切り裂き、叩き込んで珠を壊していく!

 その珠が壊れると同時に、人魂は光とともに消えていく……!


 何が起こっているかは大体察しがついているけど、幽霊退治ってここまで派手なことだとは、正直思っていなかった!


 あれだけ多かった人魂たちは、もう既に片手で数えるぐらいの数しか残っていない……!


「さて……あと少しっすよ……」


 もう戦いは終わっているように見えるが、四人は真剣な後ろ姿でトリガーを構えている……!


 すると、人魂たちは妙な動きをし始めた!

 一箇所に集まり、それはまるで寒さを防ぐために密集するペンギンのような状態だ……!


「油断するな……!幽霊は追い詰められた時が一番危険だ!」


 それらは少し上に上昇すると、形が変化し始めた!


「集合体……やはり、やらねばならぬか……!」


 集合体……!

 その姿は大きな球体で、いたるところに目をくり抜かれた人の顔のようなものが浮き出ている!

 ろ、ロマンっつうか、なんというか……怖い!


「グェア!」


 なんと、光線を放ってきた!

 それも無数にある顔の口に当たる部分から、バシュバシュとばら撒いている……!


「お、おい、まさかアレもやるのか!?」


 四人は慣れているのか、カインの質問にはさも当然のような顔をしている……!


「そうね……でも、アレって割と慣れれば大丈夫よ」


「そ、そうなのかよ……!?」


 俺たちにとっては得体の知れない謎の敵が、四方八方に乱射しているようにしか見えない……!


 ミコトたちは、そんな相手に物怖じすることなく挑む……!


「【雷式・天撃】!」


 先陣を切ったのはミコトだ! 集合体は雷撃魔法が直撃する!

 が、大したダメージには見えない……


 いや、これは牽制だ!


「【徹閃攻】……!」


 右側面から回り込んできたアヤノのムラサメが一閃!

 強烈なその一撃は、集合体に深く突き刺さっている……!


「【天泣】!」


 今度は左側面から、アイカのツキから矢が放たれた!

 集合体の真上に撃ち上げられた大きな矢は、なんと無数の矢に変化して雨のように降り注ぐ!


「ガァ……!」


 この攻撃は流石に効いたのか、ノイズのような声が聞こえる……!


 しかし、怒涛の連続攻撃は終わらない!


「【水狼牙】!」


 後方からアメの強烈な斬撃波が襲い掛かる!

 ……この状況こそ、相手からしたら言葉通りの四面楚歌ってやつだな……!

 完全に息の合った連携攻撃だ!


「ガァ……ギィ……ゲェ……!!!」


 嵐のような連続攻撃を受けて、集合体からはおどろおどろしい悲鳴のような声が聞こえる……!


「仕上げだ! ミコト!」


「はいはーい! 【転生式・珠砕】!」


 トツカに謎の文字が浮かび上がり、それを片手にミコトは集合体へ突撃する!


「【飛翔】!」


 途中で浮遊魔法で跳び上がると、集合体の中心にトツカを思いっきり叩きつけた!

 鈍器の衝撃音と、電線が切れたときのようなバチンという音が発生した……!


「ゴォ………ガァ……グェ……!!!」


 その一撃に悶えるような集合体の悲痛な声が聞こえる!

 それと同時に、その姿は溶けるように崩壊して、あの白い光に包まれていく……!


「よし、やったわ!」


「お、おお!!」


 俺たちはずっと釘づけになっていた……!

 あんな見たこともない相手との戦闘……それも、戦いを挑む方も卓越した戦い方をしていた……!


「あ、あのさ、すっげえよ! もう、すごいとしか言いようがないぜ!」


 くそう! 語彙力が足りない! 今の俺にはすごいとしか言えない!


「半端じゃないな……あんたらには感服した……」


「そうか! でも、全力が出せたのは二人が露払いしてくれたお蔭だ!」


 獣人って……巫女ってすげえな……!

 ヤマトに来てよかった! こんな戦い、他じゃ絶対に見られないだろう!


「あっ、そうだ。帰りもお願いね」


「え!?」


 ミコトが言うまで、すっかり忘れていた……!

 幽霊退治とは、帰るまでが幽霊退治……!


 ……よし! やってやろうじゃないか!


「任せろ! やろうぜ、カイン!」


「えっ……あ、ああ! しょうがねえな!」


シャナ「ねえ、出番少なくない?」


デュラ「しょうがないよ……だって、幽霊なんてノータッチだし……」


ツキ「ノータッチでも」


ムラサメ「弱点を狙えば」


アメ「平気だぞ!」


トツカ「俺はただ幽霊退治に特化しただけさ。退治だけなら他でもできるさ」


次回も楽しみにしていてくれ!

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