〈第13-1話〉まさかの最終回!?
ヤマト皇国に着いたクロームたち。
今まで見た事のない物を目にしながら、ミコトに案内された先には大きな赤い建物が待ち構えていた。名物「限界階段」をなんとか踏破し、クロームたちはその建物の中へ上がることができたのだった。
「おお……!!!」
「なんだか落ち着く雰囲気だな」
建物の内部は、独特な床と扉をしている!
でも、なんか足らないような……ロイヤルでいつも見るようなものが抜けてるようだけど……?
「どう?これがヤマトの建物よ」
「すげえよ! ところで、この床とかあの扉みたいなのはなんていうやつなんだ?」
「床のは「畳」。あの外側の扉っぽいやつは「障子」で、内側のは「襖」ね」
畳……障子……襖……!
どれもロイヤルでは見たことが無い! これがヤマト……!
「じゃ、ちょっと待ってて作って来るから」
「頼むぜ!」
ミコトは部屋を後にしていった。
ヤマトの食事がどういうものか気になるぜ!
「ふう……ヤマト式の家屋の中はなんだか開放感を感じるな……!」
「ああ。でも、あいつ一人の家にしちゃあデカ過ぎないか?」
たしかに、それもそうだ。ミコトはまだ幼いように見えるし、部屋の広さから考えて3、4人くらいは楽に入りそうな規模だ……!
「……あれ?」
やっと違和感に気づいた……!
ヤマトに無くて、ロイヤルに有るもの……それは!
「なあ、窓枠が無くないか?」
「え?……ホントだ、よく気づいたな」
ヤマトの家屋は窓枠を無くすことで、ここまでの開放感を表現しているのか……!?
なんとも興味深い……ロマンだ!
「準備できたから二人とも取りに来て」
襖が開き、ミコトが呼び掛けに来た!
よーし、ワクワクするぜ!
「え、じゃあなんでこっちに……」
「それはお楽しみだからに決まってるじゃない」
「ええ……」
「カイン、細かいことは気にせず行こうぜ!」
ということで、俺たちは一番奥の右側の部屋に来た。
「おお……!」
そこには、三つの独特な四角くて黒いトレイの上に、食器が規則正しく並べられている……!
ライスとスープ、そして……何か特殊なソースのようなものがかかっている魚がある……!
どれが俺たちの分なのかを見分けるかは、簡単なことだった。
三つの内の二つに、フォークとスプーンが用意されていたからだ!
ちなみに、ミコトのほうには二本の木の棒のようなものがある。
ともあれ、早速いただくとするか!
ダダッと床に敷かれているクッションの上に座って、準備完了!
「いただきます!」
「はえーよ、クローム……」
「ちょっと、ヤマトでは全員そろってから食べ始めるのよ」
な、なんだって……! すっかり好奇心に駆られてフライングしてしまった!
ぬうう……! 早く~!
「もういいわよ。せーの……」
「い「いた「いたただきます!!!」
盛大にズレた……!
これにはカインとミコトも思わず苦笑いだ!
え……仕切り直しとかなのかこの空気……!?
「い、いいから食べなさいな!」
「よっしゃあ!」
よかった! 二度も仕切り直しにされたら、流石にキツかったかもしれない……!
さて、早速だけど聞きたいことは山ほどある。
魚にかかっているこの謎のソースは一体……?
スプーンを使って身を剥いで口に運ぶ……!
その瞬間、俺には電撃が走ったッ!
「う、美味い!!!」
「あら、それは鰤の照り焼きよ」
て、照り焼き!? 初めて聞いた料理だ!
口の中で広がる香ばしくも少し甘いこの味……! 新感覚だ!
「そのソースには醤油や味噌を入れて色んな調味料を……おっといけない。これは言っちゃダメだったんだ」
醤油……味噌……!? どれも聞いたことが無い!
「へえ、クロームがそこまで絶賛するとは気になるぜ……」
さあ、カインも照り焼きの味を知るのだ……!
「……やべえな」
彼は目を丸くしている……!
世界を流離っている盗賊の彼ですら、この味には驚いているようだ!
「いろんな国を飛び回ったとはいえ、ここまで美味い物はなっかなかないぜ……!」
「あら、そこまで気に入ってくれるとはね。ま、私のイチオシは味噌汁なんだけど」
味噌汁……ああ、このスープか……!
ミコトが太鼓判を押すほどの代物……思わず緊張してきた!
スプーンで掬ったその見た目は、コンソメスープ……いや、独特の色をしている。
ふと、ミコトの方を見る。
彼女は味噌汁の入った食器を持って、水を飲むように流し込んでいる……これがヤマトの独自の食べ方なのか……
とりあえず、俺も試してみるか!
「……ズズズ……うっ、ゲホッゲホッ……」
「お、おい、大丈夫か?」
申し訳ない! 美味かったんだ!
流し込んでいるときに味が分かった瞬間、思わずむせてしまった!
「……こんなに美味いスープが世の中にあるなんてな……!」
「フフフ、それが味噌汁よ」
感動の嵐だ……! ヤマト、ここまで素晴らしい食文化を持っているとは……!
ところで、ミコトがさっきから使っているあの二本の棒はなんだろう?
「ミコト、その道具はなんていうやつなんだ?」
「これ? 「箸」よ。使ってみるかしら?」
箸……! 外見はどう見ても只の二本の棒……これで一体どうやって料理を食べるんだろう……?
だが、気になる!
「是非とも使ってみたいぜ!」
「本気にしちゃって……冗談よ」
え!? じょ、冗談!?
「な、なんで!?」
「獣人だからこそ、この道具は扱えるの。クロームたちには無理ね」
何……!? 獣人専用道具だったのか……!
古くからこの国の食文化に関わっているであろう、ロマン全開の道具だというのに……ただ見るだけしかできないのか……!
悲しみを胸に、ヤマトの朝食を食べ終えた……!
「ふう、なんか物足りない気がするけど、満足だ……!」
「どっちだよ。それより、これからどうすべきか……」
カインの言うとおり、これからどうしようか……
そう思った時だった!
ガラッ……
「ただいま~!」 「あ、ミコトのやつはもう帰ってきてる!」
ドアの空いた音と共に、謎の声が玄関から聞こえている……
「本当だ……あれ? この靴は誰のものだ!?」
「明らかに外国人のやつっすよ……!」
え!? お、おいおいおい、これなんかまずいんじゃないか!?
口調から考えて、絶対此処の住人だ!
「み、ミコト……お前まさか……」
カインも思わず顔面蒼白だ……!
しかし、ミコトは待っていましたとばかりに嬉しそうな表情をしている……!?
「あ、みんな~! こっちだよ~!」
!?!?!? 言葉が出てこねえ……!
どういう状況なんだ!? このままだと俺たちがヤバい奴らみたいに……!
バッッッ!!
勢いよく襖が開いた!
そこには、複数の少女が槍みたいな武器を構えている……!
「曲者ッ!!」
そのうちの一人が俺を見るなり、上に跳びかかってきた!
避ける間などなく、反射的に仰向けになった俺ののど元には、その白い刃が付きつけられた……!
「ミコトに手を出そうとは、いい度胸じゃないか!」
やっぱり悪人扱いじゃないか!
飛行船で耳を触ろうとしたことはあったけど、まさかそんな……!
「クローム!!」
「そこを動くな! 外人!」
カインも動けない……!
や、やべえ……このまま俺たちの旅は終わっちまうのか!?
デュラ「これ不味いんじゃ……!?」
シャナ「私たちには残念ながら何もできない……歯がゆいね……!」
トツカ「そこまで心配するなよ。獣人は簡単に他人を殺したりしないさ」
デュラ「ホント!?じ、じゃあ助かるんだよね!」
トツカ「人は人でも、悪人は別じゃないかな……知らんけど」
次回……あるのか?