〈第12-1話〉ヤマト
飛行船に乗り、ヤマト皇国を目指すクロームたち。
「ん……もう朝か……」
目を覚ますと、もう既に日が登っていた。
「よう、目が覚めたか」
青い空に輝く太陽が、俺たちをいつものように照らしている。
「ああ……あとどれくらいだ……?」
おもむろにチケットの裏を見ると、到着時刻は8:30と書いてある。
「今は大体7時くらいよ。あと一時間半ってとこね」
割と早いな……そうだ、地上はどうなっているんだろう。
窓から下を覗き込んだ。
「おお……!」
下は緑の大地が広がっている!
ちなみに、砂漠地帯が見える。
「やっと見えてきたようね。ここまで割と長かった」
一体、どんなものがあるんだろう……!
ドキドキが止まらない! いつの時も、初めて向かう土地にはワクワクするものだろう!
「あの大きな山は天王岳。ヤマトで一番大きな山よ」
ミコトが指をさした先には、雪を被った大きな山がある……!
他の山々より跳び抜けた存在感を放っているし、なんだか不思議な感じがする……!
「あれ、元々は活火山だったんだけど今は噴火しないのよね。それに、天に続く山だなんて言われてるわ」
「へえ……」
天に続く山……!!! いつか登ってみたいものだ!
でも、活火山ってことはまたいつか噴火するんだろうか……?
とてもそんな風にはみえないけど……
「二人とも、準備しといたほうがいいぞ」
「あ、ああ」
時間は早く過ぎていく……もう飛行船は高度を落とし始めていた。
上着を着込んで、デュラを身につける。
さて、いよいよ到着だ……!
ゴトン……という音とともに、俺の鼓動が一層高鳴るのを感じる……!
「よし、いくぞ」
飛行船から出ると、新鮮な空気を感じる……!
まだ建物の中のはずだけど、ロイヤルとはまるで違う雰囲気だ……!
港を出ると、そこはまるで別世界のような街が広がっている……!
「おお……!!」
「ふう、やっと着いたわね。ここはヤマトの経済特区、北都よ。案内するわ」
ロイヤルでは見たことのない建物が沢山ある……!
どこか原始的で……独特な……なんというか、此処以外には無いような独創的な感じがする!
「ヤマトって……すげえな……!」
洋ナシみたいな形の容器みたいなものが店先に吊るされていたり、妙な形をした剣のようなものを下げた人々もいる。
見るもの全てが新鮮で、独特なソレらは俺のロマンを掻き立てる!
「ところでミコト。どこへいくんだ?」
「それは着いてからのお楽しみよ」
そういえばカインの言う通り、俺たちはどこへ……?
市場のようなところを抜けていくと、次第に人気の少ない場所へ向かってる……。
その途中、道の外には細長い木のようなものが生い茂っている。
「ミコト、あれはなんていう木なんだ?」
「木? ああ、あれは「竹」よ。ロイヤルじゃ見ないのかしら?」
竹……聞いたことがあるぞ。たしか、電球の中にある「フィラメント」っていう部品に使われているとかなんとか……竹そのものはまるで笛みたいだ……!
「俺も、こんな広くて長い竹林は見たことがないな……」
カインですら初めて見るものなのか……! 独特っていうのはロマンだ!
石造りの道をただひたすらに進んでいくと、大きな建物が見えてきた……!
あれはいったい……?
「アレよ。もうじき着くわ」
「なんだありゃあ……?見たことないぞ」
カインや俺は見たことないけど、ミコトはまるで実家に帰るような足取りで、非常に嬉しそうだ。
それからも歩き続けると、ついにその建物にたどり着いた。
が……
「な、なげえ……!」
長い、長すぎる! すごい数の階段だ……!
70……いや、80段はあるんじゃないか!?
「これ登るのかよ!?もっと迂回とかしないのか?」
「何言ってるの、カイン。ここまで来たんだから登るしか無いでしょ?」
マジかよ……朝から水しか飲んでないし、登りきれるのか……?
「【飛翔】」
え?……ミコトは浮遊して、階段を登ることなく平気で上の方に……
「っち、あいつ【アイド・フロート】なんぞ使いやがって……」
くっそ〜! 俺もカインも浮遊魔法は使えないんだぞ!?
まさか、新天地に来て早速こんな試練が待ち受けているとは……!
「……登ろうぜ、カイン!」
「あ、ああ……そうだな……!」
だからこそ旅というものが気に入った!
こんなところで立ち止まってはいられない! きっと、乗り越えた先には自分を強くする何かがあるはずだ!
「うおおおおお!!!」
「あ、おい、ゆっくり……」
全速前進だ!
どんな高さの階段でも、一気に登ればすぐ終わる!
がっ……! そんなに甘いものではなかった……!
「ぜぇ……ぜぇ……」
「おい、クローム。大丈夫か?」
くそ……本気で駆け上がっても、まだ30段くらいあるじゃないか……
それに、ゆっくり登ってきたカインにも平気で追いつかれた……
このままじゃ、普通に上がれるかどうかも……
「まったく、世話の焼けるやつだ……【キュア】」
魔法……?
体の疲労感が無くなっていく……! 回復魔法ってやつだ!
「どうだ、登れるか?」
「あ、ああ! ありがとな! カイン!」
魔法ってのはほんとに便利だな……!
出来るなら俺も使ってみたい……が、残念ながら俺には魔力ってのがなんなのか分からないから、コントロールのしようがないのが実情……。
「うおおおお!!!」
あと少し! 根性で走りきる!
20段……15……10……!
3……2……1……!
きた! 来たぞ! 俺は試練を突破したぞ!!
「やったぁ……! ぜぇ……ぜぇ……」
解放感と達成感で、思わず地面に崩れた。
目の前のことはあまりわからない……
「おいおい、起きろよ。ほら、ミコトのやつが奥で余裕そうに待ってんぞ」
「あ、ああ……よっこらせ……」
腹が減った……とはいえ、ゴールは目の前だ……!
必死に体を起こし、脚で地面を踏む……
「二人とも、あと少しよ~」
ミコトが建物の前で手を振っているのが見える……!
「クローム、がんばって!」
デュラの応援が後ろから聞こえる……!
あと少し……あと少し……!
ミコトはもうすぐそこにいる……!
「はい、二人ともお疲れ様。名物「限界階段」はどうだった?」
「どうだったじゃねえよ……自分だけ浮遊魔法使いやがって……見かけどおり、滅茶苦茶厳しいじゃねえか……!」
ゆっくり上っていたカインですら息を切らしている……。
あんな階段、老人や子供は登りきる前にダウンしてしまうだろう……。
まあ、俺もダウンしかけて今は伸びてるんだけど……。
「まあまあ、そんなことよりご飯にしない?お腹すいたでしょ?」
「なに!? 飯!? 食べるぜ!」
やったぁ……やっと飯だ……登ってきて正解だった……!
「じゃあ、中に入って」
ミコトの言うとおり、俺たちはその独特な建物に入った……!
「そこで靴を脱いでね。ヤマトでは靴は脱いでから部屋とかに入るのよ」
「「へえ……」」
変わった決まりだな……ロイヤルだと土足で家に上がるのが普通だけど……
とりあえず、靴を脱いでお邪魔する。
なんだか新鮮だ。木の模様が足の感触でよくわかる……!
「こっちよ」
ミコトに案内されるままに、俺たちは部屋へ通された……!
デュラ「クロームがトツカにぶつかったとき悶絶してたけど、ひょっとしてトツカは打突武器なの?」
トツカ「いや?俺は大幣っていう武器さ」
シャナ「なにそれ……本来の用途が別にあるっていいたいの?」
トツカ「そうだな。でも、それはここで言ったら詰まらないだろ?」
次回も楽しみにしていてくれ!