表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/38

〈第11-1話〉耳チャンス!

行き先が決まらずに困っていたクロームたちは、獣人の幼女「ミコト」にヤマトを案内してもらうかわりに、彼女も飛行船に乗せるという条件を結んで乗り込んだ。

すると、ミコトが大幣のトリガー「トツカ」のバッテリーであることが判明し、盛り上がるのだった。

 ふと、窓を眺めると、そこはもう空の上だった。


「おお、すっげえ……」


 思わず窓に張り付いた!


 高い空の上から地上を見下ろすなんて、初めてのことだ!

 夕焼けの緑の大地を彩るように各地にある村や町……そして、日に焼けて赤く染まった海原も近くに見える!

 ロマンだ……! こんな壮大な景色……見ておかないと絶対に損だ!


「まったく、おめでたいやつだよお前は」


 カインは幾度もそれを見て慣れているのか、腕を組んでいる。


「ちょっとクローム、見えないじゃないの。座って」


 後ろにはミコトが浮遊していた。彼女は魔法使いなのか?


「あ、ああ。ごめんよ」


 つい、熱くなってしまった……!

 再び腰を下ろすと、ミコトは浮遊を止めて窓を眺めている。


「……なに?」


「え?いや、さっき浮遊してたのは魔法なのか?」


 彼女は首を傾げた。


「魔法ってなによ。魔術じゃないの?」


 え? ま、魔術? どういうことだ?

 お互いの頭上にクエスチョンマークが浮かぶ……


「クローム、ミコト、教えておこう。ロイヤルでいうところの魔法、ヤマトでいうところの魔術は同じものだと思うぞ。ユニオンではマジック、シュタールではマギーなんて呼ばれているが」


「「へぇ……」」


 流石は盗賊!情報面はペーペーの俺の倍……いや、5倍はありそうだ!


「でも、共通の呼び名はよくわからんな……シャナは知っているか?」


 唐突に話題がトリガーへ振られていく!

 悠久の時を見てきた彼女たちなら、何か知っているかもしれない!

 注目の目は、それぞれのトリガーに向いた!


「ちょ、アタシに言われても……でも、確かに気になる」


「多分、私たちだと答えられないと思うよ」


「昔は全部同じ呼び名だったり……なんてな。昔のことを俺たちに聞いても無駄だぞ」


 「みんな違って、みんないい」まさにこの言葉通りだろう! ロマンだ!

 いつかはこの世界の「裏話」も知りたいんだけどな! そのためには冒険だ!


「そろそろ晩飯時だな。外も暗くなってきてるし」


 気づけば夕焼けは黒に染まりつつあり、海はまるで朱と黒でラインが引かれているみたいだ……!


「夕食のサービスです」


 ドアが開き、ウエイターが食事を持ってきた!

 さて……飛行船での初めての食事! 考えても見てほしい、俺たちは空中で食べ物を食べている。

 つまりは普通は何もないはずの空の中で、座って食べている……!


 シュールな絵が浮かぶだろう……だがしかし、その「シュール」というのは常軌を逸したもの……つまりは、ロマンの一つだ!


 さて、ウエイターから円柱状の食事の入った銀色の箱がミコトに、カインに、そして俺に渡される。

 渡し終わると、彼は足早に戻って行った。


 ワクワクしっぱなしだ! 早速、俺は蓋を開いた……!


「おおっ!」


 思わず声が!


「ははは、何今の。クロームって、変わった人なのね」


「ああ。単純っつうか、なんていうか……」


 中身は……ミートソースパスタだ! その隣にはサラダがある。

 フォークとスプーンで巻き取って口へ運ぶと、あの味と、懐かしさを思い出す……!


 たまに妹が作ってくれたことを……!


 そういえば、妹はどうしてるだろうな……。

 昔からいつも一緒にいたから、案外泣いたりするんだろうか……?


 いや、そんなことはない! レイアはいつも俺より頼れるし、自慢の妹だ! きっと上手く過ごしてるだろう!


「ふう……」


 少ししんみりしたけど、もう平気だ!


 外を再び眺めると、そこは綺麗な夜空が見える……!


「夜もすげえな……!」


 紺色の空に浮かぶ星々……

 それが地平線の彼方まで広がっている様は、まさしくロマンだ……!


「飛行船で見ると綺麗よね……」


「この景色は旅を語る上で欠かせないな。何度見ても飽きないんだからな」


 カインもこの景色はお気に入りみたいだ!

 俺たちはしばらくの間ただ窓の外を見ていた。


「……ふあぁ……眠くなってきた。私はそろそろ寝る……」


 ミコトは眠そうな欠伸をして、眠りにつこうとしている。

 やっぱり、そういうところは子供なんだな……口に出すとなにかされそうだから言わないけど……


 ん? これはチャンスじゃないか?

 ミコトのかわいいケモノ耳、いまなら完全に無防備だ! 少しくらい触ってもいいんじゃないか?


 俺は手を伸ばす……!


 あと少し……あと少し……!


 7cm……4cm……!


 届いた……!! と、思ったその時!


 ゴンッ!


 ミコトが寸でのところで寝返りを打ち、立てかけてあったトツカに彼女の手が当たり……

 それが俺の頭に落ちてきた!


「ッ……!!!」


「お、おい……大丈夫か?」


 痛い! 痛みのあまり声が出ず、思わず頭を押さえてしまった……!

 木で人を叩いてはいけない……! いや、木でできているとは思えないほどの威力だ……!

 トリガー恐るべし!


「あぁ……痛かった……」


「……クローム、俺たちもそろそろ寝ないか?明日は何か一波乱ありそうな気配がする。ミコトは只のマセガキじゃなさそうだからな」


 一波乱……!? 何が起こるっていうんだろう……。

 ヤマトという未知の大国で、一波乱……危険な気もするが、ロマンの予感もする!


 とりあえず、今日はもう寝るとするか。

トツカ「何か当たったのか?」


デュラ「クロームが倒れてきたあなたに直撃してたよ」


トツカ「そうだったのか。後で謝っとく」


シャナ「ミコトに何かしようとしてたからセーフよ」


トツカ「……じゃあいいや」


次回も楽しみにしていてくれ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ