表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/38

〈第1-2話〉王国の剣士

こちらの1-「2」話では、女主人公の視点が中心となっております。

クロームと間違えないよう、気を付けてください。

「彼女」をよろしくおねがいします。

 __世界には、魔法と、錬金術、そして新たに、工業というものがある。

 でも、そのどれにも当てはまらないものがある……「トリガー」と、「バッテリー」というものだ。

「私」は、この二つには浅からぬ感情を抱いている。

 なぜならこれらが、人とモンスターを二つに分け、世界を歪め、私から大切なものを奪っていったからだ。

 もし、こんなものがなければ……父さんも、母さんも……!


 そして「私」の名は、アリス・ランドール。

 この北西の大陸の王都「ロイヤル・キングダム」の剣士の一人だ。


 今日からは、モンスターの持つトリガーを奪い取る王立遊撃旅団「クロス・レギオンズ」の団長の座を他の団員と巡る争奪戦が始まろうとしている。


 さてと、そろそろ例の訓練の時間だ。

 鎖帷子に鎧と木剣……これが実戦訓練の用具だ。


 私は目的を果たすため、負けるわけにはいかない。

 必ず隊長の座は私がいただく!


「おお、噂をすれば来たか、アリス」


 この男の名前はハインド・バーツ。

 同じ団員の一人で、めんどくさい斧使いだ。


「何の話よ、ハインド。下らない恋愛話をする暇があるなら、もっと別のことをしたらどうよ?」


 まったく、他の団員はもう少し使命感を持ってほしいものだ。

 遊撃旅団は遠足のような生易しいものではないし、旅行のように人生謳歌をするものでもない。


「おっと、名前を憶えてくれてたか。……まあ、誰が団長になっても、お前とは一緒になるんだろ?へへ、よろしくな」


 握手か?つくづく気安いやつだ。

 団員の中でも、こいつは特に口数が多すぎる。


「はいはい……でも、私が団長になったら、無駄なことはさせないわ」


「お堅いな~。ま、お互い頑張ろうぜ」


 コイツとそんな話をしていたら、いつもの訓練場に着いた。


 ちょっと大きい庭くらいの大きさで、そこには3つの土俵や、魔法で使う的が置いてある。

 此処でいつも私は自主練習や、訓練に勤しんでいる。


「よーし、団員諸君。今日は早速、模擬戦をやってもらう。組み合わせは決めてあるぞ。そして、魔法は使用禁止だ」


 さて、ちょっと説明だ。

 団長を決める方法は、今日からの4日の間に「戦闘能力」、「指揮能力」を試す。

 そして、どの日にどの訓練が来るか、そしてそのルールは決まっていない。完全にランダムだ。


「おいおい、早速模擬戦かよぉ~」


 チッ、ハインドめ……私を常にイライラさせる……!


「ちょっとハインド、やる気あるのかしら?」


「え?ああ、まあ。やるからにはやるけど……」


 今一つ、はっきりしないやつだな……


 ともかく、戦いは戦いだ。

 組み合わせは……よかった、ハインドとは組まされてないな。


「あっ、アリスさんはあなたですか?」


 声のする方を見るとそこには大きな木でできた、先端の丸いランスを持った薄桃色の髪の少女がいた。


「ええ、そういうあなたは、フレイ・ハーキュリーズね」


「はい! よろしくです」


 彼女はおっとりした性格の持ち主だが、見かけによらずカウンターを得意とするガードのエースと聞いている。

 ……面白い戦いになりそうだ。


 定位置に着き、騎士道の精神として互いに挨拶を交わす。

 そして三回。三回相手に打撃を与えたものの勝利というのが模擬戦のルール。


 《始め!!!》


 こちらは剣を、向こうはランスを構え、互いに出方を窺っている。


 案の定、カウンターを狙っているのか、向こうから攻めてくる気配は見えない。

 まるで岩の要塞のような様だ。こちらから攻めるより他になさそうだ。


 剣を立て、正面に走り出す。

 相手は真剣な表情を崩さず、迎え撃つ構えをしている。


 よし、ここだ!


 フレイがランスで突く……そのギリギリを狙って横へ跳ぶ。


「あっ、しまった!」


 側面をもらった!

 今ならカウンターはおろか、ガードすらできまい。

 片足だけを地につけて、遠心力で大回転切りを叩き込む!


 その一撃は、フレイの肩に命中した。これでまずは一つだ。


「ガードと攻撃は同時にできないようね」


「バレちゃってましたか……でも、次はそうはいきませんよ……!」


 そういうと、彼女から流れる気迫が変わった。

 さっきののような「不動」ではなく、岩の悪魔「ゴーレム」のようにも感じる。


「行きますよ!」


 彼女は私との距離を縮め始めた。

 ガードを待っているわけではない。単純な接近戦ならば、明らかに槍より剣のほうが有利だ。


 何か魂胆があるのなら調べてみるしかないが……


 渾身の跳び斬りで、彼女の胴を捉える。


 ……が、次の瞬間、驚くことが起きた。


 なんと、ランスを回転させて柄でこっちの攻撃を弾き、返す刃でこちらに反撃をお見舞いしてきた。

 なんという早業……これがガードのエース……!


「っく、やるわね……!」


 すぐさま、カウンターの隙を狙って攻撃を仕掛ける。

 戦いは常に相手の意表を突くことだ……


 私は手が滑ったように、剣を真上へブン投げた。


「はぇ!?」


「おいおい、なにやってんだ?アリスは」 「剣を上に……」


 フレイ含め、観衆も驚いている。


 そして、上空から私の投げた木剣が落ちてきて、フレイの脳天にコンっと当たった。


「あいた……!うぅ、痛いよ~」


「二本目よ」


 続いて、彼女が痛がっているすきに、武器を回収してトドメに出る!


「あぁ!えい!」


 彼女の焦り気味の反撃なら、見切るのは容易い。

 体勢を低くして躱し、無防備な胴に最後の一撃だ!


「うわあぁ!」


 その一撃を受け、彼女は後ろにコロンと倒れてしまった。


 《勝負あり!!!》


 よし……!無事勝つことができた。

 私は、休憩所へと向かって歩いていく。


「おお……」 「やっぱ、強いのは見た目だけじゃないんだな……」


 当然だ、この四日間のために私はいつも鍛錬を続けてきたんだ。

 蜂蜜酒呑んで笑い合っているやつと一緒にされるのは、いささか不満だな。


「よお、アリス。さっきの戦いはすごかったなぁ!」


 またハインドか、うざったいな……早くどっかいけよ。


「なによ、アンタは私に興味でもあるわけ?あったとしても、私からはノーサンキューよ」


「お、おいおい、つれないなぁ……少し話をするくらい、いいだろ?」


 ナンパに付き合うなんて御免だ。それに今、私は日記を書いてるところなんだ。


「日記書いてんの?」


「やだ、見ないでよ!」


 不用意に近づいてきたハインドの顔面に、反射的な直突きを見舞う。


「あだ!……いててて……」


 すると、私の腕にはめていたリスト・ベルが鳴った。

 次の模擬戦の用意が出来たようだ。


「じゃあね。私、次の模擬戦があるから」


 ハインドにそう吐き捨てて、私は再び土俵へ向かった。

一話目、読んでくれてありがとう。


次回もお楽しみにね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ