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〈第7-2話〉請け負い

王都を出発しようとしたアリス一行。

少年二人の厄介ごとに巻き込まれるが、事の背景にはトリガー持ちが絡んでいる可能性があった。

クロームとカイン。二人の力も借りて一時的な連合軍を結成し、アジトを襲撃する。

 さて……面倒事を引き受けたはいいが、とっとと終わらせて次に進むべきだろう。


 クロームとカイン。二人の持っているトリガーは、デュランダルとヅダルシャナっていうやつか。

 まあ、ゴブリン程度を蹂躙するには十分だろう。


「あれか……」


 まずは洞窟の入り口に着いた。

 外から見ると内部は薄暗く、斜面になっているのだが奥には明かりがともっているのが見える。

 まさか、こんな近場にトリガー持ちのアジトがあるなんてな……


「よし、突入しよう」


 滑り落ちた先には、坑道のような通路が広がっている。

 内部は、アリの巣のようにかなり入り組んでいそうだ。


「みんな、どこから敵が来るか分からないから、トリガーは抜いておいた方がいいわ」


 鬼も蛇も出ないとは思うが、相手はゴブリン。

 狡猾な戦い方をする個体もいるため、臨戦態勢で臨もう。


「……来たよ」


 フレイが早速敵を見つけたようだ。

 次第に、その方向からピタピタと足音が聞こえてくる……

 私たちは戦闘態勢を取って足音に備える……!


 ……見えた。三体のゴブリンが向こうから走ってくる。

 よし、ならばここは一つ、アレを試してみるか。


「アスカ、火炎を試させてもらっていい?」


「え?うん、いいよ!」


 アスカロンの切っ先を敵へ向ける……

 ゴブリンども……燃え盛る炎に抱かれるがいい……!


竜火(ドラゴンブレス)!」


 剣から放たれた火炎が、数体のゴブリンたちを包み込んだ。

 彼らは体に着いた火を消そうと身悶えている……まあ、もう火達磨だから意味はないだろうけど。


「うわぁ……」 「剣から炎が出たぜ!」


 ……正直、想像以上の威力だ。本当にドラゴンの火炎にそっくりだ……


「アルバス……お前、役取られちまったな」


「……ハインド、炎が撃てるくらいで私の「役を取られた」か。じゃあ、別の錬金術を少し見せてやろう」


 ハインドに触発されたアルバスはグリダを一旦納めて、何時も読んでいるあの魔導書を右手に開き、左手には水の入った瓶を取り出している。


 少しして、彼は水をばらまいた。

 撒かれた場所からは草木が芽生え、それらはもがき苦しんでいるゴブリン共に襲い掛かった。


 どうやら、彼の持っている錬金術の数は半端ではないとみて間違いないだろう。

 ゴブリンは草木に絞殺され、ひとまず片づけができた。


「さあ、行きましょう」


 しばらく進んで、十字路に出くわした。

 どっちに進むべきだろうか……下手に行き止まりに当たるのは嫌だな……


「私に任せろ。探索魔法を使う」


 アルバス……彼は前は内気だと思っていたが、役に立つ男じゃないか。

 彼はグリダを掲げて、探索魔法【ロア(階層)】を唱えた。


「……どうやら、此処は三層まであるみたいだ。そして……ここを直進すればすぐに2層目に着く」


「そう、ありがとう。助かったわ」


「すっげえな!魔法が使えるってのは!」


 私も魔法は使えるが、さほどレパートリーは多くない。だから、肉弾戦の方が得意なわけだ。

 彼が旅団にいて助かった。


 十字路を直進すると、二層目へ続く階段がある。


「気を付けて……下には沢山いるみたいだから……」


 ふん、されどゴブリンだ。フレイが警戒する必要はない。

 臆病にコソコソ行くより、猪突猛進で一気になだれ込むのがよさそうだ。


「行くぞ!」


 二層目へ全軍突撃だ!


「アルバス、三層目への階段は?」


「最初の三叉路を右に曲がって、そこから二つ目の十字路をまっすぐ行けばすぐに着く」


 なんだ、案外単純な洞窟なんだな。

 とはいえ私は結構な方向音痴だから下手したら迷っていたかもな……こいつがいて本当に助かった。


 ***


「邪魔だ!」


 進路を塞ぐゴブリンどもをアスカの炎で火だるまにしつつ、足を緩めない。


「……もう! あたいとロンの出番は!? 全部アスカがとっていくせいで、あたいは全然面白くないよ!」


「そ、そんなことをボクに言われても……」


「まあまあ、アリスは私たちを温存してくれるんだよ。今の私たちができるのは備えることだよ」


「むう……アスカのバカ……」


 シユウたちが初陣を飾るのはもう少し後かもしれないな……

 今はアスカのお蔭で出る幕が無い。


 ***


「ふう、こっからが三層目……そろそろ終点になりそうだな」


 三層目に来たか……あと少しなんだが……

 私は少しきつくなってきた。


「どうした?アリス、息を切らして……」


 火炎を撃ちすぎて一時的に魔力切れになってしまった。

 あれだけの火炎を連発したんだ。回復まではかなり時間が掛かりそうだ……


「ごめん、あの炎はしばらく撃てないかも……」


「……まあ、あんな業火を無限に撃てるわけがないからな。しばらく後方で休むか?」


 アルバス……普通なら彼の言うとおり、回復を待つのがセオリーだろう。

 しかし、私は団長だ。 魔力が無くとも、前線で剣を振ることはできる。


「無理しないでよ。盾役なら私とロンに任せて!」


「ああ、フレイ。頼りにしている」


 大事には至らないだろうが、前面にはフレイたちが出るべきか。


「ふふん、やっとあたいの出番ってわけね!」


「お互いに頑張ろう、シユウちゃん!」


 ということで、陣形を変えてみた。前衛にフレイ。その後ろの両サイドに私とハインド。最後尾にアルバスがいる。

 あれ? 誰かいないような……

 まあいい。この菱形陣で再び続けて攻め込むことにする。


「ロン、準備はいいね?」


「ばっちりだよ!」


 ロンとフレイが攻撃をすべて弾き返す鉄盾と化しており……


「うおらぁ!!」


「あたいの一撃を受けてみろ!!!」


 ハインドとシユウは、私よりも敵を的確に叩き潰していく強力な矛となっている……

 すこし歯がゆいな。


「ハインド、なかなかあたいの使い方上手いじゃない」


「へへ、そうかな」


「フレイ、攻撃とかはしなくていいの?」


「いいのいいの。私の専売特許は「ランスで攻撃を弾くこと」それさえできれば、二人が潰しに行ってくれるから」


 各々が役割を担っているな。

 まあ、これくらいできなければ、少数精鋭の意味がないんだけど。


「アリス、そろそろ大部屋にたどり着くぞ。おそらくはそこに対象がいるだろう」


 ついにトリガー持ちと対面か……一筋縄ではいかないだろうが、ゴブリンごときで根を上げていてはこの先の目標を達するなんて、夢のまた夢だ。

 絶対に勝って見せる!

シユウ「アスカ! ちょっと戦果を独占しすぎよ! あたいにも分けて!」


アスカ「ええ!?ちょ、それは……」


ロン「シユウちゃん?なんでそんな勝手なことをしてるの?」


シユウ「!? ……ロン……チッ、何でもないよ……」


次回もお楽しみに。

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