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〈第5-2話〉クロス・レギオンズ

第一章、プロローグの完結です。


四日目の決戦に臨むアリス。彼女は果たして、団長の座に就くことができるのか!?

 おや……朝だ……

「決戦だ」ということを呼びかけるように、朝日が私を照らす……


 今日の筆記試験は前回のような地獄と違って、出題する場所がある程度把握できている。

 そのため、うまく対策を練ることができた。


 試験のすべては模擬戦に非ず……いざ、最後の決戦へ向かおう。


 ***筆記試験会場***


「団員諸君、もうわかっているとは思うが今日で試験は最後だ。諸君らは、志を持ってこの試験に臨んでくれた。 最後の最後まで全力を出し切って、この試験を乗り越えて見せろ!」


 〈開始!〉


 お望み通り、全力を出して、刀折れ矢尽きるまで……あれ?


 三日目の問題と比べて難易度や、問題に大した変化が無い……どういうことだ?

 あの教本で出てきた奴もあるが、ほとんど同じだ……これではザル試験もいいところだぞ……?


 と、とはいえ、絶好の好機! 逃すものか!

 徹底的に潰して団長の座に王手をかけてやる!



 〈終了! 回収!〉



 よし……満足な出来だ。これなら、一敗の不利を覆せると見ていいだろう。


「アリス、今日は嬉しそうだな!」


 ハインドの奴、これで追いつけまい! これで少なくとも、一勝一敗……おあいこだ。


「ふん、これで貸し借りなしよ」


「おう!……そうだ、飯食いに行こうぜ!」


 またそれか……だが、コイツは一度私を打ち負かしている。

 ひょっとしたら、団員に選抜されるかもしれない……よし、また行ってやるか。


 食堂に着くと、フレイとアルバスが先に着いていた。


「あ、ハインドたちも……。って、アリスがハインドと一緒にいて、嫌味言わないなんて珍しいね。ひょっとして、好きになっちゃったとか……?」


「ち、ちょっと、誰がこんなバカと……」


「お、おい……傷つくなぁ……」


 別に言いたくないわけじゃない……これも団長としての務めだ。

 ……フレイは、意外と毒舌な奴だな。


「……三人とも、試験の結果は正午には、分かるらしいよ」


 あ、アルバスがついに口を開いた……い、いや、それ以上に、正午に結果が分かるだと!?

 食堂の鳩時計を見るに、今は11時50分程度……そろそろじゃないか!


「それホントか!? いくらなんでも集計が早すぎないか?」


「リストベルで告知するみたいだよ」


 眉唾物としか思えないが……



 しかし、それは確信へとすぐさま変わったのだった。



 12時を境に、私たちのリストベルが急に鳴り始めた……!



「お、おい、ホントに来たぜ!?」


 まさか、本当だとは……とりあえず行くしかない!

 呼び出す場所と言えば……会議室か!



 私たちは廊下をぐるりと回って、その反対側にある会議室へ着く。


 並ではない緊張感のなか、意を決してそのドアを開く……!




 目の前には白い帽子を被り、赤と黒の変わった服を身に纏った金髪の小さな少女が、椅子に座ってこちらを待ち構えていた。


 あの方は……! 女王陛下「シャルロット・クローディア」様の妹、「イリス・クローディア」様……

 姉とともに、幼いながらも、民主と軍事で双璧を成しており、この妹様は軍事においては姉顔負けの素晴らしい勘と、才能の持ち主と聞く。


「うむ、選ばれし四人の勇士たち……かなり早く着いてくれたか」


 四人の勇士……? そういえば、私たち以外に来た人物がいない……!?

 あれは出来レースだったのか!?


「君たちは、私が直々に判断して決めた旅団のメンバーだ。とりあえず、そこの椅子に座ってくれよ」


 女王陛下のお姿は幾度か見たことがあったが、妹のイリス様と実際に会うのは初めてだ……


 自分より明らかに年下で、経験も積んでいるのは私のはずだが……違う。

 あの煌めく赤い眼は、並の人物のそれじゃない。


 そして、テーブルの前には長方形の箱が四つ置いてある……これは……?


「フフフ……アルバス、フレイ、ハインド、そしてアリス……君達はやっぱり、面白い目をしているね……選んだ甲斐があった」


 何だこの感覚は……。相手は幼児の見た目だというのにもかかわらず、普通に作戦指揮官と打ち合わせをしている気分だ……これが、()()()()ってやつなのだろうか……。


「さて、君たちには私からちょっとしたプレゼントがあるよ。その箱をあけてごらん」


 私たちは、それぞれの箱を開く……



 これは……! 大体予想できていたが……


「トリガー……!」


 私の物には剣が、ハインドには斧が、フレイにはランス、そしてアルバスには杖のトリガーが入っていた。


「その四つのトリガー……剣は「アスカロン」、斧は「シユウ」、槍は「ロンギヌス」、杖は「グリダウォル」だ。ロイヤル持つ緊急用のトリガーなんだが、これを君たちに授けるよ」


「ほ、本当ですか!? そ、そんな大切なものを……」


 トリガーを集中配備するなんて、絶対何かがあるに違いない。

 普通はトリガー自体が希少なもののため、一部隊に一人くらいしか持ってはいけないはずだ。


「実は、こいつらを死蔵するわけにはいかなくなってね……」


 彼女は一度目を閉じ、再び目を開いた。

 その時の眼光……さっきとは風格が変わった……!


「最近手に入れた極秘情報なんだが、モンスターがトリガーを用いて一定の支配体制を確立していることは四人も知っていると思う。だが、そのトリガー持ちをも統合しようとするモンスターの動向があるみたいなんだ」


 トリガー持ちのモンスターを統合!? 普通のトリガー持ちでさえ強力だというのに、それを統合するとなると……人間と戦争を始めるつもりか!?


「モンスターを取りまとめようとするこの存在、「魔将」を討ってもらいたい……のだが、一つ重要なことがあるんだ。こいつの正体や、居城、そして現存する戦力は分かっていない……この意味、リーダーの君ならわかるかな?」


 妹様は、私に目を向ける……


 って、ええ!? 私がリーダー……!? だ、団長なんだ!


 そして、その意味とやら、私流に解釈するならば……!


「一から調べなきゃいけないって、ことですか……」


「イグザクトリー、大正解だ」


 すると、彼女は金塊の入った箱と、着用する専用服を取り出した。

 金塊は言うまでもないが、専用服は普通の物じゃない。ルーン文字が所々に刻まれているのだ。


「ここに、できる限りの備えをしておいた。これとトリガーを駆使して、その「魔将」を突き止め、討ち取ること。これが君たちの第一目標。 出発は明日だ。 はい、解散して」


 そう告げてスタイリッシュな妹様は、去って行った。


「……行っちまったな……。へへっ、アリス! フレイ! アルバス! よろしくな!」


 ハインドは相変わらず、調子のいいやつだ。

 こっちは団長になったこともあり、考えなければいけないことが満載だっていうのに。


 ともかく、今日のところは自室へ帰るか。


「じゃあね。また明日」


「おう!リーダー!」


 「リーダー」か……!

 四人の仲間に、四つの武器……ついに、世界への扉が開く……。

 夜が明けるとき、私たち王立遊撃旅団「クロス・レギオンズ」の魔将征伐の旅が始まる……!

ハインド「リーダー!」 フレイ「リーダー」 アルバス「り、リーダー」


アリス「よし、みんな、行くぞ!(いつも通りの「アリス」で呼んでほしいな……)」


第一章、終幕です。 よろしければブクマ、感想で批評や指摘をお願いします!

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