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君がもとへ
金木犀のうちけぶる
壁のうちなる小さき庭に
あはれ今年も秋ぞ来にける
かなしき百舌鳥の鳴き声に
引き裂かれたる わがたましひ
せめてひとひらにても、おん身へとどけ
この冷たき風に あまき香をのせ
君がもとへ
涙の流れに いと小さき花をのせ
君がもとへ
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居間では衆人環視の中、暖炉の明かりに照らされてナタリアが歌を歌っていた。ナタリアが少女のころに音楽を受け持っていた家庭教師が、ギターで伴奏を付けている。古典的な調子の曲だった。あちこちから感嘆の声が漏れる。セドリックは、喉を震わせてソプラノを歌う娘の姿を満足気に見ていた。
――――(第三章第十二話「ダミアン・カーター」より)―――――――――――――――