2話 チャイム
家族、友人…何も思い出せない。
寝起きで意識がはっきりしてないだけなのか、それとも何か他の理由があるのか?
考えれば考えるほど記憶が無いことに気付く。
真っ暗の穴の中で遭難しているような
妙な不安が押し寄せて来る。
男は空気の重さを感じたのか、それとも同じことを考えていたのか
『まあ、そのうち思い出すでしょー。』
と言った。
ーふと、疑問が浮かんだ。
「僕の名前は伊藤 優
君の名前は?」
『遠藤 相太だよー。
好きな食べ物はメロンだよ。
…あれ?自分の名前は覚えてるね。』
「それと、メロンが好きなこともね」
記憶が全く無いという不安感の中で光を見つけた気がして、少し嬉しくなった。
だんだん周りのざわつきも大きくなってきた。
ーキーンコーンカーンコーン
キーンコーンカーンコーン
突然スピーカーからチャイムが鳴る。
【ジジッ…ジジジッ…】
教室のスピーカーから不具合を示す電子音が聞こえる。
【アー、テス…テス…テテステ…スト…テステス。
コーナイホーソ。テステ…テテテテス…】
スピーカーから男が話しているようだ。
あまり上手ではない言葉で気味の悪いリズムで語っている。
周りのざわつきが一気になくなる。
すると、突然若い女性の声に変わった。
【ハーイ☆
校内の皆さんおはようございまーす☆
今日集まってもらったのは、皆さんにゲームをしてもらうためでーす☆
ゲームの説明はセバスチャンおねがいしまーす☆】