1/2
プロローグ 「遠い記憶」
黒い服を着た人混みの中に、まだ幼い俺がいる
見覚えのある女性に手を引かれて、不安そうに周りを見ている
どこか沈んでいる空気と、均等に並べられている墓標
生気を失った目をしている大人達
俺はこの光景に、酷く嫌悪感を抱いて、今すぐこの場から逃げ出したくなったのを覚えてる
でも、俺はそれをしなかった
そこに、一人の少女が立っていた
彼女を見つけた瞬間、俺の感じていた空気や気持ちは霧散して、彼女だけに意識が向けられる
長くて綺麗な黒髪と、同じ色をした大きな瞳、着ている服も黒かったから、彼女の白い肌は一層際立っていた
彼女の全てに魅了された
それは、今の俺も同じだ
また、彼女に魅せられている
物心つくより前の記憶のはずなのに、彼女との出会いは、鮮明に覚えている
きっと俺は、この出会いを一生忘れられないだろう
彼女と出会って、俺は俺のために生きようと決めたんだから