森の中の休憩所
森の中といっても、ここは都会のど真ん中。
公園の奥深い木々の中にあり、あまり知られてはいないが、ひっそりと、ではなく、けっこう騒がしく・・・そして、ドカッと建っている休憩所。
ここに居るのは、小柄の人の好さそうなお話し好きな月子さん
なんでも疑い深いカラスのクロウさん
やさしい心のハトのホワイトさん
噂好きな雀のブラウンさん
そして、月子さんの仲間の京子さんに、聖子さんに、敬子さん、裕子さん、
そしてそして、この休憩所の管理人の太陽さん
ここの人たちは、みんな個性豊かで良くも悪くも賑やかで騒がしい
静かな森の木漏れ日に、幸せを感じ、のんびりと一人静かに過ごしていたのに
あれよあれよと言わんばかりに、建物が立ち、人が入り、
毎日毎日騒がしく、俺様の憩いであり幸せな空間が180度変わってしまった。
最初のうちは、とても不愉快で、睨みつけたり、引っ掻いたりしていたが、
どういうわけか、効き目は全く・・・・
けっきょく、俺様の根負けじゃ
今では、いいように使われてる。
そうそう、俺様の名は、シャム。
もともとは名前など必要なかったが、シャム猫だからと月子さんが付けた名前だ。
カラスのクロウさん、ハトのホワイトさん、雀のブラウンさんと同様に、
月子さんの名前のセンスは全くと言っていいほどない・・・
悩むことが苦手だからって見たままつけるこのセンスの無さに最初はみんな呆れていたが
他のみんなも月子さんと似たり寄ったり「わかりやすくて、いいんじゃないの」ってさ。
それからこれは秘密だが
ここの住人は、ほかの人間と違って、動物と会話ができる
まぁ、誰も信じないだろうがね・・・・
ハトのホワイトさんが戻ってきたぞ、こりゃまた一つ仕事が増えそうだ。
「月子さん、いま、公園にとても悲しそうな顔で男の子と手を繋ぎトボトボと歩いてる人が居ましたよ」
「話を聞いてあげて差し上げたらどうかしら」
雀のブラウンさんも戻ってきた
「ハトのホワイトさんの言ってる親子さぁ、さっき、学校から出て来る時、子どもたちから『お前が悪いんだ』などと男の子に言われてたよ、何かしたんだろうね」
そこへ、カラスのクロウさんが
「月子さん、まさか、すぐにその親子のところに行こうって考えているんじゃないだろうねぇ、本当に悪ガキだったらどうするんだい、またこの休憩所は大変なことになるんだぞ、わかってるよな」
「あら、クロウさん、私たちの仕事は、困った人に寄り添い、少し気持ちを落ち着かせ、また前に進むための手助けをすることでしょ、悪ガキでもなんでも、お母さんが悲しそうなら力になってあげなくっちゃ」
「シャムさん、一緒に向かいましょ、雀のブラウンさん、案内して頂戴。」
「月子さん、いつも言ってるが、猫が大好きという人間ばかりじゃない、今回は悪ガキかも知れん、石でも投げられたら・・・・・」
「だいじょうぶよ、傷ついた人はね、シャムさんが、フラフラと前に現れて、すがるような眼で見つめられたら、なんとなく立ち止まりたくなるものよ」
ほらきた、月子さんの勝手な思い込み、最初は、まんまと嵌る人間がほんとに居るのかと疑っていたがまんざら思い込みではないようで、ほぼ百パーセント思惑通りだ。
戦略的で少し気が引けるが、それで、結果親子の未来に少し力を貸せるのなら、戦略的アタックも悪くない。
「居たわ、月子さん、あの親子よ。じゃあ、私は他の仲間ともっともっと情報を集めに行ってくるわね」
「ありがとうブラウンさん、よろしく頼むわね」
「さぁ、シャムさん、出番よ!頼むわよ、私はいつものパターンで行くからね」
怖いなぁ、猫嫌いな人間は、ともすれば、あっちに行けって威嚇をしてくる。俺様はこの恐怖と戦いながらいつも月子さんのいいなりじゃ、はやく弟子を見つけなければ・・・
「健、どうして教室から勝手に出て行ったの、あれほどお母さん先生の言う事聞いて、良い子にしなさいって言ったのに、これじゃお母さん安心して働きに行けないじゃない、どうやって生活していけば・・・・」
「健、猫と遊んでないで、お母さんの話を聞いて」
「あっ、すみませーん、うちの猫、どこに行ったのかと思ったら、僕について行ってたのね」
「ほんと、人懐っこい猫で、やさしそうな人を見るとすぐに私から離れて付いていこうとするんですよ、そのたびに、飼い主の心が痛むという事を知らないんですかね、まぁリードを付けずに散歩させている私がいけないんですけど」
「かわいらしい猫ちゃんですね、きっとこの猫ちゃんあなたがお優しいから安心しているんですよ」
「あら、そんな嬉しいこと言ってもらえるなんて、心が痛むどころか、結果的には嬉しい気分にさせていただいて・・・ありがとうございます」
「お母様は、とてもお優しい人ですね、ねっ僕」
「お子さんと、夕方のお散歩中?」
「よろしければ、うちの休憩所でお茶でもいかがかしら?そんなにいいお茶をお出しすることはできないけど、ちょうどアイデア満載のお料理上手な敬子さんのクッキーがあるのよ、たくさん焼きすぎたから、急ぐならこの近くですので、ちょっとだけ寄り道していただいて持って帰ってくださいな、優しい飼い主って褒めてもらって私の気持ちが収まらないのよ、ねっ、ほんとすぐそこだから」
あーあ、また適当なこと言って・・・こりゃまた敬子さんと太陽さんは大慌てだよ
「いつもほんとにご苦労様、からすのクロウさん、月子さん今回はどんな手を使っていたのかしら?」
「今回はアイデア満載の調理上手な敬子さんのクッキーがあるからお茶しにおいでと誘って、今向かってるよ!!はやく用意しないと」
「どうして月子さんは、いつも一言多いのかしら、アイデア満載のクッキーってどんなのよ、お料理上手な敬子さんだけ言ってくれればいいのに」
「敬子さん、ほんと申し訳ないね、それだったら、給湯室に野菜クッキーがまだ残っていたよね、それをお出ししたら」
「そうね、それがあったわ、では急いで、用意をしなくちゃ、それから・・コーヒーがいいかしら、紅茶かしら、子どもちゃんは幾つくらいなのかしら、炭酸ジュースが好みかしら、それとも果汁100パーセントジュースかしら、とりあえず、そろえるだけ揃えておきましょう、あっお湯を沸かしておかなくっちゃ」
「うちの休憩所は、公園の中にあるのですが、気づいてもらいたい人にしか見えないみたい。なんだか秘密基地みたいで、私のお気に入りのお客様しかお教えしていないの。ですから、内緒にお願いしますね」
「さぁ、ここが、うちの休憩所『森の中の休憩所』でございます。少々賑やかですが、ゆっくりと休んでくださいね」
ほらね、親子が目を丸くしてるじゃないか、『森の中の休憩所』って普通は小さいイメージ持つだろうけど、こんなでかいのが、この公園の中にドカッと建っているとは誰も想像しないから、ほとんどの来客は自分が今、辛い心境であることを忘れて唖然とするのさ。
それも月子さんの戦略の一つで、意外性を重ねて、最初は休憩所の話から、いつしか相手の困りごとをさらっと聞き出す。
今日の森の休憩所は、ほとんどの親が迎えに来て、すでに家に帰ってる。
残ってる子は、人見知りで甘えん坊の幼稚園児の素直と、おしゃべり大好き、雑学マニアの中学生華子。
それに、愉快な聖子さんと京子さんが居る。
「太陽さん、ただいまー。」
「あのね、太陽さん、公園で私のことを心の優しい飼い主さんだって褒めて下さったの。それで嬉しくて、ちょっとお引止めしちゃった。」
「それはそれは、うちの月子が、またご迷惑を・・・夕方のお忙しい時に強引に誘われたのではないですか、申し訳ついでにお時間の許す限り月子のお茶をお付き合いください。ほんとごめんんさいね。」
「あら、あなた、せっかく上機嫌に帰ってきたのに!」
「月子さん、お客様のお口に合うかしら」
敬子さんが奥から、クッキーと紅茶とオレンジジュースを運んで来た。
「月子さん、何か私のこと言ってませんでした?お菓子を焼くたびに、お気に入りのお客さんをすぐに連れて帰ってくるんですよ、野菜クッキーしかございませんが、どうぞ召し上がってくださいな。でも、晩御飯が食べれるくらいのお腹は残してね」
「・・・・」
いつものことだけど、月子さん、自己紹介が抜けてるから、困ってるじゃないか。
「あっ、ごめんなさい、紹介するのを忘れていましたね、こちらが、アイデア満載のお料理上手な敬子さん、そして、私の旦那様であり管理人の太陽さん。」
「突然にこのような騒がしいところで、驚かれたことでしょう。ここは、平たく言えば、私が仲良くなりたいなとおもった親子さんと仲良く過ごす休憩所。ここで仲良くなった子どもたちは数知れず、えーっと一番下が4歳で一番上が20歳だったかな。みんなここで遊んで、お母さんやお父さんは迎えに来られたら少しだけお茶して一緒に帰る。あっ一人できて一人で帰る子もいたわね。まっそんな所です。」
「あそこにいるのが幼稚園児の素直と中学生の華子、子どもたちより楽しそうに遊んでいるのがうちのスタッフ京子さんと聖子さん、僕、クッキー食べたら一緒に遊んでおいで」
子どもは、よほど、楽しそうに見えたのか、クッキーもジュースも手を付けず、すぐに、一緒に遊びだした。
母親は少し元気な子供の様子を複雑そうな表情で見ていたが、しばらくすると今置かれている状況を整理しようと気づいたことから話し出した。
「ここは、託児所みたいなところなんですか」
「いえ、託児所とはまたちょっと違うんですよ、もちろんそうした役割もあるんだけど、他に、学校の中にも入って、困っていたら助けることもあるし、職場や近隣の人付き合いで困ったらそこに出向いて助けることもあるし・・・・説明するのは難しいなぁ」
「困っていたら助けて下さるのですよね、例えばですが、学校で問題行動をしては怒られる子どもが居たとしたら、助けてもらえるのですか」
「内容によりますが、たいていの困りごとは一方通行の理解からくる困りごと、両方向、いや、多方面から見たら困りごとは困りごとではなくて、少し工夫をすれば、良い環境となり過ごしやすくなる。私たちはそのひと工夫のきっかけ作りをしているといったところかな。あなたのお知り合いでお困りの方がおられるの」
母親は、少し疲れた様子で・・・・
「息子のことですが、今日も先生から呼び出され行ってみると、息子が授業中に突然立ち歩き、注意すると教室から出て行って、他の先生方が校内を探し回り大変だったと・・・・・学校としても少し困っていて他の保護者からも授業が進まないと苦情があったようで・・・・・・私も息子には毎朝、学校では先生の言うことを聞く、席を勝手に立ち歩かないと約束はさせているのですが・・・・困っていると言われても、これ以上どうしたらいいのか、私の方が困ってしまって・・・・」
「なるほど、息子さんもきっと困ってるわね。困らせようとしてわざわざ注意されることをする子なんて居ませんよ。きっと息子さんなりの気持ちがそこにはあって、上手く表現できないだけです。よろしければ、お子さんの学校の校長先生と私を引き合わせて頂きませんか?」「私は特別な権限を持っているわけではありませんが、ほんの少しだけお役に立てる技量がありまして・・・校長先生の許可が頂ければ、しばらくお子さんに付き添い、お子さんの気持ちを良い形で表現できるように手助けしたいと思います。いかがかしら」
「そんなことできるのですか、そりゃそうしていただけるのなら本当に助かります。でもお金がいくらになるのかしら」
「お金は一切かかりません。これは、ボランティア活動ですので。お母様さえ、私を信用していただけるのでしたら、明日にでも私から校長先生とお会いし、ボランティア活動の許可をしていただき、しばらく学校に通わせていただきます。よろしければ、お子様のお名前、学年組、先生の名前など少し詳しく教えていただいてもいいかしら」
普通なら、得体の知れない人から突然、信用して息子を任せて欲しと言われたら、戸惑い、警戒するとおもうが、大半は、策が出尽くして、困り果ててる親子である。誰だろうと、解決してくれるなら解決してもらいたいと、月子さんの人柄に賭けるのだ。
翌朝、月子さんは早速行動開始、学校に問い合わせ、健くんのクラスの生活指導をするゲストティーチャーとしてしばらく学校に通うことになった。
月子さんは、表には全く残らないが、これまでにも、子どもの対応に困ったことがある度に頼まれて解決してきた。どうして表にでないのかって、それは、月子さんは教師でもなく、医者でもなく、スクールカウンセラーでもない、ただいろんな現場で様々な経験を積み、いろんな方法で良い方向に導く才能があるってだけ。だから、資格重視の社会では無資格が入ったら結果次第で大問題となる。学校と月子さん自身のためにも、解決したら何も痕跡が残らないように、ボランティアで加わるのがいいのさ。
敬子さんも、聖子さんも、京子さんも、裕子さんもみんな、他に仕事を持っていて、空いた時間に手伝っているって感じ。他に何人か若いのが手伝いに来てるが、ほとんどが月子さんの人柄と才能に惹かれて手伝いに来てる。休憩所はそんな人たちが支え成り立っている。
おっと、脱線してしまった。
健くんのことであるが、彼は、席を勝手に立つ理由は、お母さんに良い子にしなさいという期待に応えたくて、他の子より先に、出来たら見て欲しい、聞いて欲しいとアピールしていたようだ。健くんが、先生にそれを伝える前に、「勝手に立ち歩かない」と注意を受けてしまうから、どうして注意されるのか不安が怒りに代わり、教室を出ていくということだったようだ。
月子さんは、健くんに、自分が正しいと思っても、学校でのきまりを無視したら、そこで終わり。
学校のきまりを守ることが最優先。自分の正しいと思って行動し、注意されるには、それなりのルール違反があるからだ。自分が腑に落ちなくて怒られたとしたら、なぜ怒られるのかを聞き、自分の考えをしっかりと伝え、どうしたら、自分の考えもわかってもらえ、怒られないのかを話し合うことが大事である。健くんんは子どもである、学校は何でも自分の判断、考えで正しく生活できるなら必要ではない。いろんな人たちと気持ちよく生活するために必要なことを学ぶために学校がある、教科書だけじゃなくて、一緒にしんどいことも乗り越える力を勉強して大人になるの。健くんにとって学校はまだまだ必要だからお母さんは学校に行かせているのだ。と話したようだ。
すぐに月子さんが話してることは理解できず、やはり困らせる行動や友だちと喧嘩はすぐには治まらなかったが、その都度、月子さんが「自分の気持ちばかりをぶつけるのではなく、相手の気持ちにも耳を傾け、知りたいと思いなさい」と言い、丁寧にお互いの気持ちを聞き取り、誤解を解くという作業を繰り返すうちに、相手の様子を伺い、相手の気持ちを思いやるようになり、問題行動はほぼ無くなり、月子さんのボランティアは終了。
お母さんには、学校のことを健くんが話した時は、手を止め、最後までしっかりと聞いてあげて欲しいと言い、その結果、健くんも穏やかな気持ちになり、学校の話も困ったことから頑張ったことが多くなり、いつしかお母さんの表情も明るくなり、健くんの頑張ろうというエネルギーとなり良い方向に向かっているようだ。
第二章
何日か、いや、何か月か、平和ななーんにも起きない日が続き、普通の猫の生活にようやく戻った矢先に
月子さんが、お客さんを連れてきた。
月子さんは、時々、ボランティア活動でのことを、講演活動で話をしている。
今日は、そこで知り合った青年を連れてきたようだ。
月子さんはおそらく、ずっとその青年と話しながら帰って来た様子
「人って、助け合わなければ生きていけないんだよ。
おそらく、ほとんどの人はそんなこと知っている。」
「人って、誰かに認めてもらえないと生きていけないんだよ。
おそらく、それも、なんとなく気づいている。」
「でも、そんなこと知ってても、気づいていても
孤独を感じ、助けても言えない人って・・・・・・
結構たくさんいるんだよね。」
「心も体も元気な時は、助ける人側。でも、ちょっとしたことで、自信をなくし、ちょっとしたこと
で、体調を崩すと、助けられる人側になる。」
「あなたの言うように、どちら側にも行き来する人は健全で、おそらく、ほとんどの人は、あたりまえ
過ぎてわからないと思うよ、僕の気持ちは」
「僕が言いたいのは、みんなと違うことが重なるとそれは、どちら側にも行けずあちら側の人になると
いうこと」
あちら側?
何だあちら側って?
月子さんが連れてきた青年はあちら側の人なのか・・・・、
月子さんと青年が話ながら入って来たので、太陽さんも口が挿めない感じ
丁度、敬子さんの、クッキーが焼けたオーブンの音で、少し空気が変わり
「月子さん、お帰りなさい。お客様をお連れしたのかい」
「はじめまして、ここの管理人の太陽と言います。」
「月子さん、今、丁度敬子さんのクッキーが焼きあがったようだから、飲み物と一緒に召し上がっていた
だいたらどうかな」
「そうね、空さん、いかがかしら、甘いものは苦手かしら」
「外は、少し寒かったので、あったかい飲み物はいかがかしら」
月子さんと空さんは、温かいコーヒーとクッキーで、一息つくと、
今度は、真剣な表情で、再び話を始めた。
「空さんは、どうやって、あちら側から、こちら側に来たの」
「こちら側に来たのではないよ、あちら側から、こちら側を覗きに来たんだよ」
「あら、ごめんなさい、とても、ご自身のことを客観視されているから、ご自身の困りごとを、乗り越え
て、今度はこちら側から、あちら側の人を迎えに行くのかと思っていましたわ」
さっきから、何なんだ?あちら側だの、こちら側だのと・・・
「月子さん、とても興味深いお話だね、敬子さんや、僕も、話に加えてくれないかな」
太陽さんがそう言ってくれて本当に助かった。
普通の猫に戻りすぎて、とうとう人間界がわからないようになったのかと思った。
月子さんは、空さんから承諾を得て、空さんのこれまでのことを話し出した。
彼は、とても愛されて育った。
彼がお腹が空いたと言えば
祖母が、おいしいおにぎりを作ってくれた。
母が、ホットケーキやドーナツを作ってくれる。
遊んで欲しいと言えば、
祖父が、竹とんぼやけん玉、竹馬で遊んでくれたし、
父は、サッカーや野球のキャッチボールをしてくれた。
みんな彼には、やさしい笑顔で
そばに居てくれた。
でも、そんな生活は、幼稚園に通い出したころから
少しづつ、変わっていった。
彼は、先生がみんな仲良く遊びましょうと言えば
仲良くが何を言っているのかわからなかった
遊ぶということは分かる
祖父や父と遊んでたから
だから、彼は、友だちにボールを投げた。
だから、彼は、遊具置き場から、竹馬を持ってきた。
いままでだったら、みんな、褒めてくれた。
上手に竹馬を乗って歩いたら、凄いってね。
なのに、先生は
ボールをお友達に投げたらいけません。
今、竹馬はしません。
って、言うんだ。
仲良くってどんな遊びなの
だれも、それを説明してくれなくて、
結局、彼は、彼が思う
仲良くを試行錯誤するうちに
問題行動ばかりする子になっていた。
ほかのみんなは、誰かと一緒に行動し
にこにこと楽しいそうだ
彼は、誰も近くに居ない
家に帰ると、祖父と祖母は
かわらずに、彼を笑顔で迎えてくれるけど
父と、母は、
困った顔をするような日が増えて行った。
父も、母も
先生の言うことを聞きなさい
友だちを怖がらせたらいけません
っていうけど、
彼は、何も意図的に問題を起しているのではない
自分では、素直に気持ちを表現しているのに、
他と違うからと、注意され、
自分では、素直に行動しているのに、
それも、違うと注意され、
みんなは楽しく過ごしているけど、
自分は、全く楽しくない。
みんなは、褒められて、うれしそうだけど、
自分は、なんでみんなが褒められているのか、
なにがうれしいのかわからない。
そんなことが、いくつもいくつも繰り返されて、
ますます、自分がわからなくなって、
気が付けば、自分は、誰にも理解されない
困った人になっていた。
幼少期はそうした出口のない迷路をさまよい、行きついた先は、みんなの視線や、空気に耐えられなくなったら、その場を逃げ出す。
いつも、誰かが、そばで見ていたけど、大多数よりかはマシだ。
勉強は、答えが白黒はっきりするのは、大好きだ。
だから、成績は、良いのは抜群に良く、悪いのも抜群に悪かった。
高学年から高校までは、あまり、友だちと一緒に行動することを強要されることもなく、
みんな、他人の事は無関心で、自分の事で精一杯だったから、それほど辛くはなかった。
違うのは、部活や遊びは、全く参加しない。
友だちは、本だ。
たくさんの本を読んでいると、理解できないことばかり
想像できないことばかりが多かったけど、
ある日、気づいた。
なぜ、父や母は、幼稚園や学校から、呼び出されていたのだろう・・・・
なぜ、呼び出されて帰って来ると、不機嫌に「何で、うちの子だけが言われるのか」
と怒っていたのかがわかった。
父や母が怒っていたのは
決まりを守ることができないお子さんは、とても困りますと言われることだったのだ
決まりを破りたくて破っているのではないということを、まず理解されないことに怒っていたのだ
つまり、守れないことには、理由があって、守りたくても守れない環境がそこにある。
片方だけが、合わせてばかりを強いられては、不公平である。
環境を整えて欲しいということを言っているのではなく、他の人とはちがう目線で生きている子がいるのだということを認めて欲しいだけだということ。
彼の父や母は、彼に注意はしても、彼の存在を否定はしない。
父や母が、彼の気持ちを理解して、方向性を見つけることはできなかったけど
彼は、自分で上手く生きるコツを掴んだ。
それは、絶対に我慢しなくてはいけない時は、とりあえずギリギリまで我慢
耐えられなくなった時は、素直に「体調が優れないので席を外してもよろしいでしょうか」と一言伝えて離れる。
大人になると、引き止められることはそうない。
できるだけ、人と関わることを避け、個人で起業。
たまたま、父が放送機材や、道具などの発注、発送などをする仕事をしていたことから、そこの下請けとして起業したそうだ。
空さんは、そうして、暮らしている。
月子さんとは、今日たまたま、講演会のセッティングで機材の配送をし、終わるまでの間、なんとなく月子さんの講演を聞いていて、自分の事を話したくなったようで、今に至るって感じ。
「僕の生き方をさみしいと感じますか」
「社会の中で生きていないと思いますか」
「普通って誰が基準なの」
「だれの価値観で生きるの」
「ほんと、あなたの言う通り」
「私もだけど、みんな、他の誰かはこう思うのだろうな、こう行動するんだろうなって勝手に思って、行動しているだけで、たまたまそれが、なんとなく当てはまっているだけで、正解なんでどこにもない」
「大多数に呑み込まれて、そこから外れることが怖いから、様子を伺って生きているっていうのが、本当の所かしら」
「バランスが崩れると、簡単に崩壊する」
「バランスもどこを基準にしているのかによって違うものね」
「空さんが、言いたいのは、そうしたバランスは大多数だけで取るのではなく、ごく少数の人も加えて
取って欲しいということ」「バランスを求める前に、個人を尊重する、個人の存在を認め歩み寄る、
興味を持ちあう関係が大切だということかしら」
「僕は、月子さんが講演で話していたことが、なんとなくわかった気がする」
「みんな、小さい頃は、物事の良し悪しが分からないから大人に教 えてもらい正しいと思われる行動を
学んでいく。でもそれは、親や周りの期待と愛情を感じるから素直に学べるのだ。」
「大多数の普通に、私たちは当てはめて生きていくのが当たり前の社会の中で大多数の普通に当てはめて
生きていけない人は、自ら進んでその道を歩んでいるのではないのに理解を得られるように努力を強い
られ、社会で生きて行かなければならない。」
「そんな人が居ることを無関心で生きていける社会ではなくなっているのだということを私たちは気づか
なければいけない。産まれた限りは、心穏やかに、助け合い、安心して暮らせる社会は誰にでも約束さ
れることであり、それが、できないことを、人の責任にするのもおかしく、社会情勢、制度の責任にす
るのもおかしい素直な表現を受け止め、そんな表現の仕方をする人を当たり前の人としてまず私たち自
身が思わなければ、きっとその人の孤独は解消されない。」
「どこかで、理解できない人と思っている限りはいくら、助け合う社会と思っていても言葉だけが先走り
いつまでたっても、進まないのだ。」
「自分自身の事だって、ちゃんとわかっていないのに、他人をわかるなんてことは、無理な事。それを分
かった上で、知りたいと思う気持ちが、大事だと思うのです。自分に心地よい人には、好意的な興味
自分に心地悪い人には、悪意、疎外するのでは、穏やかな生活は生まれない。理解されない者どうしの
対決は、自分自身の中に存在する。自分自身も、理解してもらおうと一生懸命、自問自答して生きてい
るのだから・・・」
凄い、凄すぎる、月子さんの講演の内容をこうも細かく思い出し話すとは・・・・
よく、太陽さんに、ぼやいている内容だけどね。
「人と関わらないように、お仕事されているそうだけど、ここまで、月子さんの話に興味を持ってくれた
人は、始めてだよ。そして、月子さんも、また、空さんの思いを聞けたことは、とても嬉しかったのじ
ゃないかな。」
「コーヒーとクッキーしかない所だけど、良かったら、月子さんのためにもここにいらしてください。」
「太陽さん、ありがとう。実はね、ここは、困ったことが起きた人しか見えない森の休憩所なの」
「ここに来る人たちは、空さんもきっと何かしなくてはいけない気持ちになる困りごとを抱えている人」
「空さんがいらしてくれたなら、本当に助かるの。これからもよろしくお願いします。」
あーあ。
青年よ、君は今から、ここのスタッフだ。
可哀想だが、君は、月子さんとボランティア活動に駆り出される第一号となるだろう。
いや、もうなってしまったようだ。
「あら、ハトのホワイトさん、どうしたの」
「ブラウンさんまで、そんなに慌ててどうしたの」
ほらね・・・・
青年は、本当にあちら側の世界に遭遇だ。
森の中の休憩所は、ほんとは世界中に必要だと思うけど、月子さんたちによって、笑顔が増えた子どもたち、親たちが、どんどん周りを笑顔に変えて、幸せが広がっていけば、いつかは世界にたくさん森の休憩所は出来ていくだろう。
月子さんは、自分の出来ることを、したいことをただ後悔しないように過ごしているだけかもしれないけど、俺様は、生きてるうちに、俺様のような任務を与えられた猫同士の世界会議を開催したいものだ。
そのためにも、ここをちょっと任せられる弟子をはやく見つけないと・・・・・
月子さんが青年を連れてきたように・・・・




