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高く高くその手を掲げて!S・S・S~(セインステッキストーリーズ)よりAct2

アタシは、記憶の中で思い出す。自分が何者なのかを・・・。

その宿命を、闘い続けるその宿命を・・・・。


「お父さん、お母さん!早くっ早くぅっ!」アタシが大きな湖の畔で、はしゃぎまわっている。

ーこれは、何時の事なんだろう。たしかにアタシだ。でも、ずっと昔の。小学生になったばかりの・・・。

そっか、アタシってあんなだったんだな。長い髪にリボンを結って、ワンピースを着て・・・。女の子って感じだな。あはは、今と正反対な女の子だったんだな。-

「え?何?お父さん、お母さん?」アタシが振り返ると、お父さんとお母さんがアタシを呼び止める。

必死な顔をして、そしてそいつが現れた。・・闇の中から。アタシの前に、暗い闇がポッカリと穴を開けて広がっている。

ー何だろ?この穴?-アタシは穴に近付き、内を覗き込んだ。その時、

「え!きゃあっ。」

アタシの右手を何かが掴んで、穴の中へ引き込まれてしまった。そこは、光が全く無い暗闇だった。

「誰?誰なの?」アタシが怯えて辺りを見回すと、目の前に二つの明かりが見えた。

「お父さん?お母さん?」アタシが呼び掛けると、だんだん灯りが近付く。

ーお父さん、お母さん。ここだよ、助けて。-

そう言おうとした時、目の前に現れたのは瞳を赤黒く光らせた豚のバケモノだった。

「ひっ!」アタシは思わず仰け反りへたり込む。

豚のバケモノはアタシに向って触手を伸ばす。

「いやあっ、お父さん!お母さん助けて!」

アタシの叫びにバケモノが言う。

「ひひひっ、お前さんの父母だったのかァ。あそこでくたばってるのは。」

バケモノが指差すほうを見るとそこには、

「お、お父さん?お母さん?」手を握ったまま倒れているお父さんと、お母さんの姿があった。

思わず走り寄って二人を起こそうと揺り動かしても、動いてはくれなかった。

「う・・そ、うそ、うそぉ!こんなの嘘!お父さんお母さん起きて!」

アタシはにわかに信じられなかった。目の前で何が起きたのか。何故2人が動いてくれないのかが。

「ひひひっ。それじゃあ仲良く親子で喰われてしまいな。」

バケモノがアタシに寄り付く。

「アタシのお父さんお母さんを殺したの?アタシを殺す気なの?」

アタシは、呆然とバケモノに訊く。

「ひっひひひっ、そうだ。魂を喰らってやった。お前さんも喰らってやるよ。今からな。」

その言葉の意味さえ解らずにアタシは思った。このバケモノを許さないと、消し去ってやると。お父さんお母さんの仇を討ってやると・・・。

ー誰か、あたしの願いを聞いて。こいつをやっつける力が欲しい。アタシのお父さんお母さんを殺した、このバケモノに勝る力を下さい。あたしの魂と引き換えてでも・・。-

あたしの願いに何かが答えた。この闇の中で、その闇より黒い何かが・・・。

ーその願い、お前の魂と引き換えに与えてやろうか?-

何者かがあたしの頭の中で囁く。

ー誰?アタシに力をくれるの?このバケモノをやっつける力を?-

アタシが声の主に訊きかえす。

ーそうだ、力だ。とても強い力だ。-声の主が答える。

ー本当?このバケモノをやっつけられる?-アタシの問いに、

ーこの程度の魔獣鬼ならば、容易い事。-その答えに、アタシは、求めた。求めてしまった。

ー欲しい、その力が。たとえアタシがどうなったとしても、憎いこのバケモノをやっつける事が出来るなら。お願い!頂戴っ!!-

アタシの求めに声の主が言い放った。

ーくっくっくっ、良かろう。だが、後悔してももう人には戻る事は出来ぬ。その力を次のネクロマンサーに引き継ぐまでは、永遠にお前は闘い続ける事になるのだ。聖だろうと闇だろうと、関係なくな。-

声の主はアタシにその力を、運命を引継ぎさせる。

アタシは体の中から湧き出る感情を抑え切れなくなってしまった。

ーこいつを、消し去ってやる跡形も無く。ー

瞳を見開き、豚のバケモノを睨む。アタシの変化に気付いたバケモノが、

「んんっ?何だお嬢さん。まさか闘おうって気じゃないよな。無理無理、普通の人間が我ら魔獣鬼に歯が立つ訳・・」

そこまで言った豚の魔獣鬼が息を呑んだ。何故なら、目の前の少女が、高く右手を掲げたから。

その行いは聖導士、獅騎導士、守りし者と同じであったからだ。

「まっまさか?お前は?一体?」

魔獣鬼の驚きように、アタシは右手を高く掲げて、

「さあ!アタシに力を!バケモノに打ち勝つ力を頂戴!!」大声で叫んだ。

その叫びとともに紫色の光がアタシを包んだ。その光が右手の甲に集約されて、光の中に紋章が浮かび上がる。

「なっなんだと。その紋章は!?」

豚の魔獣鬼が後退りして、大声でアタシの呼称を叫んだ。

「その紋章は、ネクロマンサー!最強の呪詛、最強の言霊師。なんで、こんな小娘が!」

怯え慄く魔獣鬼にアタシは、見下した瞳で見つめる。

「アタシはお前を許さない。お前の仲間も許さない。全てを消し去るまで許さない。」

心の中で、黒い衝動に突き動かされる。

「まっ待て!待ってくれ!」

魔獣鬼は、逃げようとしてのたうつ。だが、アタシは放った。こみ上げて来た黒い衝動を、黒い呪いを。

喰獣牙イービーストクロウ!」

高く掲げた右手の先に魔法陣が現れ、その中から一匹の黒い虎が飛び出した。

「ぎっやあああぁっ!」

その黒い虎が牙を剥いて襲い掛かり、一撃で豚の魔獣鬼を食い千切る。

悲鳴と共に黒い粉となって、魔獣鬼は消え去った。

其れを見届け、アタシは呼び戻す。黒い虎、アタシの使徒を。魔法陣の中へ、黒い虎が納まったのを確認して右手を下ろす。

ー受け継げ、その力、その運命を。お前の悲しみ怒りのままに。闘い続けろ、永遠に。お前の呪いが消えるその時まで。-

アタシに力を授けたそいつが、言い放つ。アタシが力を得る代償に呪われてしまった事を。闘い続けなくてはならない、その運命を。

アタシは闇の空間から解き放たれて、湖の畔で立ち尽していた。ボロボロになったワンピースを着て、ほどけたリボンを髪にまとわり付け、瞳は光を失って涙が流れ落ちていく。その右手には、最強のネクロマンサーであることの証、黒い牙の紋章が、紫色に浮かんでいた。


ーそう・・・か。思い出した。右手の紋章が何を表しているのかを。アタシは・・・。アタシは、美琴と同じ魔法使い。美琴と同じ一人ぼっち。美琴、美琴。逢いたい、会ってアタシも一緒だよって言いたい。運命を背負った魔法使いなんだって。だから、逢いたいよ。話がしたいよ。-

アタシの目から涙が溢れる。

ー逢いたい、会いたい。美琴に・・・。-

アタシはどうしてそこまで美琴に逢いたく思うのか、自分でも解らなかった。

ーどうして?こんなにアイツに会いたいのだろう。どうして、あいつの事がこんなに大切なんだろう?-

アタシの記憶がまた一つ解き放たれていく。

ーそうだ。あの誓い・・・。あのときの誓いが、美琴とアタシの絆。アタシ達の出会い。-



Act2をお送り致します。

マコの過去が、語られて悲劇の中、自分の正体を知ってしまいます。

幼い頃のマコには、闘い続けなくてはならない宿命が課せられてしまいます。

そんなマコの宿命を変える運命の出会いを・・次回は語りましょう。

次回アイツとの出会い。

次回も読んでくれなきゃ駄目だよーんだ!

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