高く高くその手を掲げて!S・S・S~(セインステッキストーリーズ)よりAct12
マコとヒナは、取り戻した。過去の忌まわしい記憶も、優しい記憶も共に。
その記憶と共に今を歩む、マコとヒナ。そして、2人は・・・。
「んっ、んんっ。あれ?」
アタシ寝てたの?何かすっごく長い夢を、観てた様な。
ーあれって、子供の頃の話。それとも?-
アタシの右手を握っているヒナが、見える。
首元にネックレスをした、ヒナの姿が。
「ヒナ?」
アタシの声に、薄っすらと瞳を開いたヒナ。
「ヒナ?その目は・・・。」
片方の瞳を、金色に光らせて、
「マコ・・・。白虎ちゃんは、元気かな?」
「え?ヒナ。・・・ヒナも・・か?」
「うん。美琴の・・・姫巫女の記憶。ワタシ達の始まりの記憶。戻ってきたの。」
「ああ、ヒナもか。アタシも・・戻ったよ。魔王姫。」
「マコッタン。その呼び名は、もう捨てて。」
「じゃあ、アタシの事もネクロマンサーって、呼ぶなよ。特に美琴の前でだけは・・な。」
「うん、了解・・です。」
アタシとヒナは、お互いを見詰め合って微笑んだ。
2人の胸元に、輝くネックレスが覗いていた。
「・・・。それにしても取猫さんって、紳士だよな。アタシ達を此処まで運んでくれたんだ。」
アタシとヒナは、いつの間にかヒナのマンションに居た。さも、何も無かったかの様に。
ただ、胸元の<獣皇の涙>だけがその事実を伝えていた。
「そう、ですよね。白猫堂から、かなり離れているのに・・。でも、マコッタン。」
「ん?なんだ、ヒナ。」
「あれから・・。ずっと記憶を封じ込められていたのに。ワタシ達は、離れなかったんですよね。意識の底で、繋がってたんですよね。」
「そうだな。絆って強いもんだな。喧嘩しても、直ぐに仲直りして・・さ。気付いた今ならその訳が解るよ。なあ、ヒナ。」
アタシがヒナに向き直ったら、
<トサッ>
「わっ、何だよ。」
抱きついて来たヒナに、押し倒されてしまった。
「マコッタン。好きだよ、大好きだよ。」
アタシに覆い被さって、真っ直ぐな瞳で見詰められる。
「あ、あの。ヒナ・・落ち着けって。」
ーおいおい。近いよ、近いってば。そんな瞳で見詰められたら、変な気になっちまうだろ。-
「マコッタン。ワタシの事、好き?」
ーへ?ヒナ、顔が赤いぞ。ー
「ねぇ、答えてよ。マコッタン!」
ーわあっ、ヒナの奴。マジかよ・・。いきなりどうしたんだ。-
「まっ、待て。ヒナ、どうしちゃったんだよ。って、おっおぃぃっ!」
「どうも、してない・・よ。ずっと、ずっと魔虎ちゃんの事が、ワタシを守ってくれていたマコッタンの事が、好き・・なのっ。だから・・・だからっ今だけでも抱いていて欲しいの。」
「ヒナ、お前・・・。」
「ワタシ・・、今日こそ一人ぼっちが辛いと、思った事ないよ。・・可笑しいよね、昨日までこんなに辛いと思った事無かったのに・・・記憶が戻ったら、寂しくて辛くて。ごめん。やっぱり、ワタシ可笑しいね。こんなのワタシじゃないよね。」
ーヒナ。仮初とはいえ、アタシはアコ姉さんと一緒に暮らせている。ヒナは、どうして一人ぼっちを選んだんだ?・・訳は訊かないけど、きっとその訳が解る日が来るんだろうな。その日が早く訪れる事を願ってるよ。-
アタシはそっと、ヒナを抱き返して、
「えっ?」
驚くヒナの唇を奪った。
「んんっ!」
金色に輝く瞳が大きく見開き、涙が溢れる。
アタシの口付けにヒナが、応える。
2人は、友情と絆とそして、愛を確かめ合った。
アタシはヒナからそっと離れて、
「美琴には、見せられないな。」
「へへっ、刺激が強過ぎますからね。」
「あいつは、お子様だからな。・・・美琴・・帰ってきてくれるよな。」
「ええ、きっと。帰って来てくれますよ。明日になったら・・。」
「ああ。そう・・願うよ。」
「えへへっ、マコッタン。明日が楽しみ・・ですね。」
「でも、あいつには、美琴には内緒だぞ。」
「キス・・した事ですか?」
アタシは顔をぶんぶん振って、
「違うっ!アタシ達の正体の事!」
「です・・よねぇ。」
「ぷっ!あははっ。」
「くすくすっ!」
アタシ達は、笑い合った。
「うーーーんっ、頭っ重いっ!」
美琴がとぼとぼと、やって来る。
「おーっ、美琴っ。」
「おっはっ!よーっ。です。」
アタシとヒナが、美琴を迎える。
ー良かった。美琴が帰って来てくれた。しかも、この様子じゃ・・記憶を失っている。-
「どっした?美琴。」
アタシの問いに、
「うーん。なんだか、悪い夢でも観てたのかな?頭が重くってさ。」
「へーっ、どんな夢だよ。」
「え?そっそれはっ!」
「っんだよ、減るもんじゃなし。言えよ、美琴。」
「・・・。笑わないでよ、マコ。」
「笑いませんってば。」
ヒナが、興味深々で訊く。
「あ、あのね・・。しちゃったんだ・・虎牙と、夢の中で。」
「・・・・は・・あ?」
アタシとヒナが、唖然として答える。
「だって・・、お腹・・の下の方が・・痛くて・・その所為でさ。そんな夢観ちゃった。」
「・・・ぷっ!あはははっ!!」
「ミ、ミコッタンらしいっ!!」
「・・うーっ、やっぱり笑ったっ。ひどーいいっ!」
「いや、まあ。美琴らしいって。そう言う事だ。」
「そーですぅ。今日もミコッタン、通常運転です・・ね。」
アタシとヒナの瞳から、嬉し涙が溢れる。
「むうっ、泣く程笑われた。」
美琴が、勘違いして剥れた。
「いや、まっ。そんじゃあ、行こうぜ。」
「遅刻しますよ・・。」
「うえっ!やばいっ。待ってよマコ、ヒナぁ!」
アタシ達は学園に向って、走り出した。キラキラ光る朝の光の中で・・・。
高く高く・・その手を掲げて・・。きっと・きっと絆は続くから。
高く高くその手を掲げて! 聖杖物語より
「アタシとアイツと。秘めた思い出だからっ!」 END
高く高くその手を掲げて!最終話をお送りしました。
最後は、聖杖物語エピソード3のラストに繋がっています。
この後、マコとヒナは如何なる活躍をしていくのかが、少し解って頂けるかなっと思います。
では、このストーリーはここで終了させて頂きますが、聖杖物語はまだまだ続いていきます。
宜しければ、シリーズを通してお読み下されば、幸いです。
それでは、また・・・。次のストーリーでお会いしましょう。