表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/13

高く高くその手を掲げて!S・S・S~(セインステッキストーリーズ)よりAct9

ケンパの危機に三人娘が駆け付ける。

魔獣鬼に対して、闇の力を解放する姫那。その力は魔王そのもの・・・。

「ケン!」

姫那が、ケンパに走り寄る。

息絶え絶えのケンパは、

「姫・・・様。どうして戻られたのです。あれ程お逃げ下さいと、申しましたのに。」

苦しい息を吐きながら、ケンパが咎める。

「味方を、助けを呼んできたの。来てくれたのよ、魔虎ちゃん達が!」

「え?ネクロマンサー殿が・・・達?」

ケンパが姫那の後を伺うと、そこには紫色の輝きと、

「うっ、嘘だっ。その光は・・・ピンク色、聖獣界の巫女の光。」

ケンパの瞳に、水晶の光が目に映る。

ー魔獣鬼、コヨーテの魔獣鬼。礼を言います。良くヒナの事を守ってくれましたね。あなたは十分に光を授かるに相応しい働きをしてくれました。さあ、あたしからのお礼を受け取ってね。-

ケンパの瞳に、直接巫女の声が注がれて、

「あっ、ああっ、あああっ!」

ケンパが絶叫する。魂の叫びを。

「ケン!どうしたのっ?苦しいの?しっかりして!!」

姫那が慌ててケンパに抱き付く。そんな姫那に、

「姫・・様。姫様、私は。私めは、呪から解放されました。邪な呪いから。これでやっと姫様と同じ半人間となれました。あの方によって・・。」

ケンパが指差すのは、ピンクの瞳をした、

「美琴・・が?」

「そうです、あのお方は・・・。」

ケンパが美琴に今宿っている者の事を告げようとした時、

ー闇が来た。邪で強い闇が・・・・。辛いけど、これはヒナの為。そしてコヨーテの獅騎導士ケンの為。あたしは手を出せない。手を差し伸べてはいけないの。ごめんね、ヒナ。ごめんね、ケン。許して、なさけないあたしを・・ゆるして。-

ケンの心に巫女の言葉が響いたのは、ケンパが身を挺して姫那を守った時だった。

「がはっ!」

ケンパの口から血が吹き出す。その血が、姫那の服を濡らす。

姫那の前に、飛び出したケンパの背後から黒い触手が貫いていた。

「ケ・・・ン・・?」

姫那は瞳の光を失って、名を呼びかける事しか出来なかった。

「姫様。どうか生きて、生き抜いて下さい。私が再び会いに行くまで・・。それまで・・待っていて・・下さい。」

<ドシュッ!>

ケンパにトドメの一撃が加えられた。

「ケ・・ン?・・ケン!ケンパぁ!!」

姫那が叫ぶ。ケンパは触手に突き上げられて、姫那達が見ている前で粉々となって消え去った。

「あっ、あっああっ!ケン、ケンパ。」

粉々となって散ったケンパの粉が、姫那の手の平に舞い落ちた。

「うわっ、うわあああーっ。」

ケンパの粉を抱きしめて、くずおれて泣き出した姫那に、闇から声が投げ掛けられた。

「くっくっくっ、魔王姫よ、どうだ下僕を失った気分は。」

姫那に屈辱を味合わせる。

「お前がやったんだな。魔獣鬼!」

魔虎が姫那を庇う様に、前に進み出る。

「そうだ、小娘。裏切り者の魔獣鬼を、始末したにすぎん。それより魔王姫を、滅ぼす邪魔をするな。」

「そんな事、させる訳ないだろーが!」

魔虎が、右手を高く掲げて魔法陣を出現させる。そして黒使徒を呼ぼうとした時、その手を掴む者が、

「待って、魔虎ちゃん。そいつは、斗牛鬼だけは、ワタシが倒す。倒したいの!」

右目を金色に輝かせた姫那が、魔虎を止める。

「・・・。解った、姫那。」

右手を降ろして、魔虎が頷く。

ー怒りに我を忘れちゃ駄目だよ。-あたしは何時でも呪が放てる様に詠唱に入る。

姫那は、髪を逆立てて右手を突き出す。

「くっくっくっ。何の真似事ですかな、魔王姫。」

斗牛鬼は、小娘と侮って余裕を見せる。・・だが。

「許さない。許せない。よくもケンパを、ワタシの大切な友達を。ケンを・・ケンを返せぇっ!」

姫那が怒りに任せて全力で放ったのは、

「なっ!何だと!馬鹿なっ!?」

斗牛鬼は、何が起きたのかを理解出来る筈無かった。有り得ない力を、魔法陣から放ったから。それは邪の頂。魔王の力。

「闇の流星ダークメテオ!」

姫那が放ったのは、西の魔王が受け継ぐとされる魔術。辺り一面に闇の中から巨大な隕石が落ち、炸裂する全滅魔法。これを喰らっては、譬え黄金騎士だとて無事ではいられない。

ーやっぱりね。こーいう事か、ヒナのやつ。・・無茶苦茶だなあ、昔っから。-

あたしは、美琴の体を使って呪を解放する。美琴の右手の上に、巨大な魔法陣が現れて、

聖光壁シャインウオール!」

光の壁で魔虎と、姫那を守る。

<ドゥゴオオオッ>

地響きを立てて、隕石が墜ちる。

斗牛鬼は、隕石の爆裂の中で消え去った。

<シュウウッ>

辺り一面、クレーターだらけの中で三人の少女が立ち尽していた。

「ケン、仇は討ったよ。」

姫那はそう言うと、気を失ってしまった。

「姫那!」

魔虎が走り寄って、姫那を抱き起こす。

「無茶苦茶だろっ、姫那。」

そう言って、顔に掛かった髪を撫でて直す魔虎に、

「マコ。本当の闇が、強大なヤツが来るよ。」

あたしは、美琴の口を使って警告を発する。

「え?何だって?美琴。」

姫那を抱いて振り返った魔虎の後に、ぽっかりと闇の門が開いた。

「くっくっくっ、魔王姫姫那。お久しぶりね。」

そう言ってゲートから出てきたのは、長い八本の足をガチャつかせて現れた。

ーそっか、コイツがヒナのお父さんを・・・そうだったのか。もっと早く気付いていれば。ごめんね、ヒナ。-

美琴の瞳が、ピンク色に水晶の輝きを増す。

「お前は誰だ!姫那に何の用だ。」

魔虎が、魔女王に吼える。

「あらまあ、誰かと思ったらチビのネクロマンサーじゃない。わらわの邪魔はしないでね。そこの小娘も・・。・・・って!まさかっ、お前はっ!」

西の魔女王は、美琴を見て感づいた。こいつは大変だと・・・。

「くっ、どうしてここに巫女が居るのだ。ええいっ、邪魔はするなっ。この剣は魔獣界での話だ、手出し無用!」

焦った魔女王は、姫那に向って呪を放つ。

「黒い炎弾ダークファイア!」

だが、

「喰い破れっ、黒虎っ!」

魔虎が、黒使徒を放つ。

「ガオルルッ!」

黒虎が、炎弾もろとも蜘蛛女の足に喰らい付く。

「うっぎゃあっ!」

堪らず魔女王は、呻く。

「こっ、小癪な小娘めっ!お前から先に消し去ってやるわ。」

魔女王は、次々に呪文を放つ。

「黒い氷」、「黒い矢!」

西の魔女王の連続攻撃が始まる。しかし、そのどれもが黒虎によって喰らい破られる。

「くそオっ!小娘の分際でえっ!」

怒りに我を忘れた魔女王は、最悪の呪文を唱える。

「ひっひっひっ、こいつならどう?超暗黒大火弓メガダークファイアロー!」

超巨大な炎の矢が数百本現れて、魔虎に目掛けて打ち出された。

ーあっ、危ないっ。マコ!-

あたしは咄嗟にマコを守ろうと呪を放ちかけて、姫那の動きで止めた。

ー姫那!?ヒナ!!-

姫那はふらりと立ち上がり、髪を靡かせて手を差し出す。その先には魔法陣が・・。先に使った魔法陣とは全く違う法文字が描かれた輝きの。

「姫那っ!やめろっ、危ない!」

魔虎が、姫那を庇おうとして手を指し伸ばすが、

聖障壁セントウオール!」

魔虎と姫那の前に光の壁が現れて、炎の矢を防ぐ。

「姫那、お前。その呪は?光の・・・聖なる光の呪文!」

ーああ、ヒナ。良かった。これでヒナも邪なる呪いから解放されたんだね。さて、後は・・・。-

「姫那、お前はもう闇から解き放たれたんだ。良かったな、本当に・・。」

魔虎が嬉しそうに、姫那の手を握る。

「え?ワタシが?闇から解放された?」

「そうだよ。そうだよなっ!ミコト!」

魔虎は、何かを感づいている。美琴の発音が違った。

ーあっちゃー。さすがマコ。昔っから、鋭かったんだね。気付かれたかな、美琴の正体が。-

闇から解放された姫那。

父の仇、西の魔女王マギキと闘うには力が足りない事に気付き、応援を頼む。

その依頼を受け、供に闘う魔虎。しかし、魔女王は卑劣な戦法に出る。

次回、新たなる使徒。

次回も読んでくれなきゃ駄目よーん!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ