神様の我儘
お題:蓋然性のある神話 制限時間:15分
例えば神話なんてものは君の身近に起こりえる事象だと言える。
君が小石を蹴った結果、世界の悪が志半ばで散る可能性だって否めない。
なに、君が君でいるだけで、もしかしたら神話の語り部にとってはとても重要すべきキャラクターであることもあるのだ。
そうだな、殺人鬼がいたとしよう。
今の君のように縛られ身動き取れず、目の前には金属バットを持ったボクのような殺人鬼がいたとしよう。
そしてそいつは言うんだ、「ボクは神だ」とね。
そいつにとってこれから行うことは聖書に記すべき行為であるかもしれない。
そいつにとってこれから行うことは神話に登場する物語の一端かもしれない。
ほらごらんよ、神様なんてこんな簡単に、神話なんてこんな風に出来てしまうものなんだ。
もしかしたら、世界で語られている神話の数々は、元はただの殺人者の戯言もかもしれないよ?
だってほら、あいつらは簡単に殺すじゃないか、同族を、異種を。
天罰だ、いけないことだと言ってね。
裁く権利があるからと言って、殺していい理由になると思っているのが神様だ。
なら、人を殺せる人間ってみんな神様の資格を持っていると思わないかい?
ああごめん、話が大分逸れたね。
要はさ、君の未来の可能性の話なんだよ。
君はこの後、いったいどうなるかって話だ。
蓋然性ってわかる?
簡単に言えば可能性だね。
確実に起こる可能性が高い事柄、みたいなものかな。
うん、ボクはさ、解るんだよ。
ほらさっき言っただろ、神様なんだよボクは。
だから未来のことが解るし、可能性も生み出せる。
君が無事に家に帰る可能性も作ることができるし、
君が無残に土に還る可能性も作ることができるよ。
まぁとは言っても、ボクが殺人鬼で、これが神話だとしたら一つしか道はないけどね。
え、だってさっき言ったじゃないか。
同族を殺し異種を殺すのが神様の条件だよ。
ごめんよ、神様じゃなかったら殺さなかったけど、神様だからさ。
大丈夫、君の最後は、神話のように永遠に語り継がれるよう、頑張るからさ。
じゃ、ちょっと残酷に死んでみようか。
誰もが神様を恐れ敬ってしまうような、無残で残忍な、裁きでさ。