凡人
お題:天才の衝撃 制限時間:15分
「俺はさ……才能、ないから……」
そう言ってそいつは席を立った。
一時は未来を信じ、夢を抱き共に泣き叫び喜んだ相方。
だが、今はどうだ。見送るそいつの背中は煤けて、丸く小さく、今にも砕け折れてしまいそうな姿だった。
誰が悪い、という話ではないのかもしれない。
結局、好きな事をやるに理由は必要ないけれど、好きな事で生きていくには根拠が必要なのだ。
根拠というより、支えとなる、実力かもしれないが。
そいつは悪くない。性格の話ではなく、やりたい事に関して、筋は悪くなかった。ただ少しだけ、発想が及ばず、ほんの少しだけ、想像が足りなかった。
ただ、それだけの話だ。
それをそいつは、もっとも簡単に、簡潔に言い表した。
「俺はさ……才能、ないから……」
思わずため息を吐いてしまう。
非難することではないと解っていながらも、それで諦めてしまった彼に対し、私はどうしても不満を拭えなかった。
誰でもできることではないのは解っている。センスというものが必要で、もちろん運も必要不可欠だ。
だが、どうして、と思う。
私がこの道に進みたいと言った時、多くの人間が無責任で勝手なことを言った。
――それって難しくない?
――大変だと思うよ。
――生活できるの?
――趣味でやればいいじゃん。
――そんな夢ばかり見てないで、ちゃんとしてよ。
大変で難しくてどうやって生きるつもりなのか、そんなことは解っている。
私が考えるよりも過酷な道のりなのは、知っている。知らなくとも、知ることになる。
だけど、何故そんなことを言われなくてはいけないのか解らなかった。
それが会話のきっかけならまだ許そう。だけど、それが結論として会話しているのなら、なぜそんな当たり前で、そして辞めるにもやるにも相応しくない理由を持ち出すのか。
大変だから、難しいから、それは何かをやる時に、断念する理由にはなりえないはずなのに。
才能が必要だろうと、それがやりたい事ならば、生きるとはそういうことではないのか。
ただ毎日を過ごすだけで、幸せを感じるだけが、生きることだとは思わない。
『生きている』だけで、『生きて』いない。
天才だけが持ち得る才能なんて、いらない。
私はただ、それで『生きたい』のだ。
あの日、あれを見て感じた衝撃は忘れない。
天才と感じたあれを、私は忘れない。
凡人だろうと、才能がなかろうと、私はあれを見たのだ。
だから、やる。
天才でもなく、誰かに衝撃を与えられずとも、私の人生はこれなのだ。
才能なんて、どこにもなくとも。
『生きる』ことは、できるのだから。
最後がダメ。全然まとまっていない。
方向に失敗している。
『生きる』ことと『才能』など、焦点に当てたところが多すぎた。
もう少し減らして、話の流れを絞った方がいい。