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お節介なじじい

お題:賢いクリスマス 時間:15分


 白い息が夜空に上る。

 寒空の下にいるのに汗をかき、呼吸は乱れ、冷たい地面に座り込む男がいた。年齢は初老だろうか、もう少し上かもしれないが、見事な髭を持ち赤い帽子を被る老人が、脇腹を押さえて座り込んでいる。

 時折周囲に目を配り、物陰に隠れながら辺りを窺い、人がいないことを確かめながらも落ち着かない様子だ。

 気を抜けばやられる、とまるでマフィアのような心情の老人だが、何気なく視線を上に向けた先に、人がいた。

「っ!? ……?」

 思わず息を飲むが、人影に見覚えがあり記憶と照らし合わせる。

 赤い帽子に赤い服。

 立派な白い口髭を生やし、雪の降る夜に家の屋根に登り煙突がないと額に手を当てている人物。

 世界でも有名であり、勤労であり怠惰でもありそうな、クリスマスの夜にしか仕事をしない、たった一夜で世界を駆け巡る人物。

 そこにいたのは、サンタクロースだった。

 座り込む男性は思わず微笑んだ。

 煙突がなくどうやって入ればいいのか四苦八苦しているサンタを見ていると、昔を思い出す。

 そう、この老人も昔はサンタだったのだ。

 鉄の塊が空を飛び、爆薬を乗せ海を渡る前から空を駆け回り。鳥より速く夜空を巡っていたことがあったのだ。

 だが、今は……。

 老人は思わず帽子に手をやる。

 昔の思い出として唯一残っている、手元に残したモノ。

 サンタの帽子だ。

 懐かしく、涙が出て来る。

 自分は愚かだったのだろう。今目の前にいるサンタのように、賢ければ今も世界中を今日、クリスマスに飛び回っていたはずだ。

 けれど、老人はその選択をしなかった。

 たった一夜、子供たちにプレゼントを配るのではなく。

 たった一度、良い子にプレゼントを渡すのではなく。

 老人は、悪い子の為にサンタを辞めたのだ。

 黒いサンタ、などと呼ばれる臓物をまき散らし子供攫うのではなく、悪い子にはプレゼントを配らないサンタのシステムのために、プレゼントを貰えない子供たちのために、サンタは動くことを決めたのだ。

 サンタクロースという、賢いクリスマスの夜を捨てて。

 お節介なじじいという、愚かなクリスマスの毎日を選んだ。

 その結果、老人は若者に追われる羽目になる。

 口うるさいから袋叩きにしてやろうと、老人の想いなど届かずに。

 だから老人は、笑う。

 さて、子供たちが待っている。

 かくれんぼはやめよう。

 子供から逃げるなど、サンタのすることではない。

 例え今、サンタでなかったとしても。

「見つけたぞじじい!」

 数人の若者が老人を囲む。

 老人はゆっくりと、膝に手をつき、立ち上がり――立派で真っ白な髭を撫で、言った。

「ははっ――じじぃを、舐めちゃいかんよ?」

最後のセリフ、もっと違うカッコイイのをつけたかった・・・。

残り時間10秒では、無理だった・・・。

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