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恋の時間

お題:早い恋 時間:30分 終了:29分30秒程度

 忘れていたのはどちらだっただろう。

 中学の同窓会。顔を合わせれば思い出す程度には覚えている。

 今やみんな三十路前。若干頭部が危険な人もいれば、未だ若々しい人など千差万別。

 陽気に笑い、暢気に飲み、愉快に喋る。

 雑音と騒音の区別がない居酒屋では、大勢の会話が渦となって店内に流れていた。

 ぎこちない笑みを浮かべた私は、来たことを少しだけ後悔しながら、ある人物を探している。

 まだ来ていないようで、ウーロン茶をちびちびと飲みながら今か今かと店の入り口にチラチラと視線を送っている。

 わざわざ同窓会なんて面倒な催しに参加したのは、ある人に会う為。

 同僚に言えば笑われてしまいそうな理由。

 でも、私にとって大切な理由。

 それから数十分が経った時、店のドアが開き、目当ての人物が入ってきた。

 一目見て、だいぶ月日が経ってしまったけれど、彼だと解った。

 当時から他の男子とは違うかっこいい容姿をしていたが、今はそれに大人の色気と言えばいいだろうか、甘いマスクなんて言葉が似合う、モデル顔負けのイケメンになっていた。

 歓声と奇声が沸き起こる。

 店内にいた同級生の男共は久しぶりだなと肩を組んだり、女達は慣れ慣れしくボディタッチをして近づいていく。

 私はというと、立ち上がることもできず、さりとて声をかけることもできず、相変わらずちびちびとウーロン茶を飲むばかり。

 そんな行動を起こせない私が一人隅っこの方で佇んでいると、彼は私を見つけ、久しぶり、と声をかけてきてくれた。

 私の初恋の人であり、私の初めての恋人だった彼。

 高校進学の時に、お互いに都会へ行くことが決まっていて、自然消滅してしまった間柄。

 懐かしい想い出に、寂しい思い出。

 当時、私達は中学生ということもあり、クラスのみんなに付き合っていたことを隠していた。だから今日、ここに来ている人達は誰も知らない。

 当時の私と彼の関係を。

 そして、今の彼と私の関係を。

 なんて言っても、もう十年以上前の話。

 付き合っていたのもわずか一年足らず。今思えば、受験の年に付き合い始めるとはある種の勇気ある行動だろう。それだけ熱に浮かされていたのか、はたまた恋の盲目のせいか。

 幸いなことに、お互いに志望校に合格したのだが、合格したお蔭で離ればなれになってしまったのだけれど。

「お、眼鏡変わってないんだ」

「変えてるわよ。ただ、似たようなのは付けてるけど」

 これもわざとだ。

 昔と似たような眼鏡をわざわざ今日のために探した。気づいてくれるからなんだという話だが、それでも彼が昔のことを覚えているか試してみたのだ。

 結果はそう、やはり彼も忘れていなかった。そのことに少しだけ嬉しく、いや、かなり嬉しいと中学生みたいな感想を抱き、昔に戻った気分になる。

 まるで子供の恋。

 笑ってしまいそうになるくらい、拙い想い。

 彼との会話は昔と変わらず、どこか淡い、幻想的な色がする。

 暖かくて優しくて、

 心地良くて嬉しくて、

 思わず笑みが零れてしまう、そんな会話。

 けれど、やはり変わらないものはないのだ。

 彼が成長しさらにかっこよくなったように、私が成長しうだつの上がらないつまらない女になったように、時間は残酷にも平等に、昔を奪って消していく。

「そういえばお前、結婚してないのか?」

「え?」

 その時、彼がグラスを持ってビールを飲む。

 視界に入る彼の腕。

 視線に繋がる彼の指。

 そこには、煌びやかに輝く一つの輪。

 当たり前だ。

 むしろ、この年齢で結婚をしていない方が珍しいと言われる。今は女性も社会に出るので昔ほど言われなくなったが、それでもだ。

 結婚の適齢期である。

 そしてそれは、彼も同じと言っていい。

 同い年なのだから。

 同級生なのだから。

「……相手も、いないわよ」

「へー、そうか」

 それだけ。

 それで終わり。

 後はただの同級生。

 淡い想いなど消し飛ばされ、仄かに揺らいでいた火は消えていく。

 早すぎたのだろうか。

 別れが。

 早すぎたのだろうか。

 出会いが。

 一体何が、私と彼の恋を終わらすのに、早かった事柄なのだろう。

 今更考えても、今度は遅すぎるかもしれないが。

 同窓会は終わり、二次会に参加する人は次へ行く。

 私は家に帰ることにした。

 泣きたいのに泣けない。

 もう、そんなことでは泣けなくなった。

「なぁ」

 振り返ると、彼がいた。

「この指輪、かっこよくね?」

「……まぁ、趣味はいいんじゃない?」

「だろ?」

 そういって嬉しそうに笑う彼を、私は見ていることができない。

 それじゃあとだけ言って、私がその場を去ろうとしたら、

「じゃあこれ、やるよ」

 と言って、指輪を差し出してきた。

「は?」

「もう一つあるから」

「いや、え?」

 混乱する私を余所に、彼は言う。

「別にすぐに付けなくてもいいけどさ、その、ほら俺はまだ終わってないと思ってるから」

 そんな、少女漫画のような台詞と場面を伴って、彼はいた。

 昔と変わらない、彼が。

「言っとくけど、俺、彼女は中学の時から変わってないから」

「……うわー」

「あ、引くなよ!」

 恋に早いも遅いもない。

 ただ、恋はいつも今だ。

今回は初めての挑戦で時間配分を失敗した。

後半の台詞続きは地の文が少なすぎる。

まとめの締めの台詞も意味が解りづらい。

書きだしと締めの整合性も微妙である。


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