5人は幸せなキスをして終了
さすがにこれは、やばいかもなぁ…
"俺自身"の力の中で、全力だった、出せる力を全て出した。
軽くぶっとばして、みんなのぽかーんとした顔が見たかった。
しかしそれは、無理そうだ。
「ハハ………情けないなぁ……」
それは島一つ消し飛ばせない俺自身の弱さではなく、今だにこの状況で、迷っている俺の心に対してで………
強さを求めてなんて言っているけど自分が弱いなんて一番わかってる。
力に任せて、強いふりして………
俺一人であれば、きっとこのまま情けなく沈んでいただろう。
そう、一人であれば―――
「情けなくなんて、ない」
振り返ると、目に涙をいっぱいに浮かべた嫁達がいた。
膝をついた俺に、嫁達が抱きつく。
「ケイジ……いいよ、もう…いいよ。
しょうがないよ、ケイジのせいじゃない…悔しいけど…それでも仕方ないよ」
「そやねぇ…まあケイジでも無理なことがあるんやなぁ…って思ったりするくらいやよ」
「………………逃げよ…………」
「まさか、風の大魔水晶に防御機能があるとは予想外でした…。
大丈夫ですよ、ケイジさん。
確かにこのあたりは…ダメでしょう…けど世界が終わるわけじゃないと、思います…。
むしろ、ここで貴方がいなくなってしまうほうが…世界に………ううん、私達にとって…悲しいです。」
それでも俺は、黙ったままだった。
アア自分は、なんて情けなかったんだろう。
こんなに良い嫁達がいるのに、何を贅沢を言っていたのだろう。
沈黙を別のものか勘違いしたのか、さらに嫁達が続ける。
「ねえ、ケイジ…しょうがないじゃん!私には、私達には、貴方のほうが大切なの!
ねえ、大丈夫だよ…世界はこんなにも広いんだよ…だからきっとあれが落ちちゃっても大丈夫だよ……」
成層圏近くから超巨大な塊が落下するのだ…たとえ星が無事でも、その表面にすむものたちは大丈夫ではなかろう。
それを知ってか知らずか、エリーの瞳には悲しみのみが映っていた。
その涙を見て、ただただ純粋に思った。
この子を守りたいと…泣いて欲しくない、笑っていて欲しい。
「ああ………そうだな………」
「ケイジ……ッ!
じゃあ早く行こうッ!」
「…………だが、断る………」
「「「「ケイジ(さんっ)!?」」」」
「負け逃げなんて、ガラじゃねえ。
大丈夫だ、絶対にお前達を、お前達がいるこの世界を、守ってみせる。」
そう、世界はこんなにも広いのだ……だからきっといるはずだ…この世界にだって。
俺より強い奴が。
だったら、もういいじゃねえか…俺よ。
何より、このまま世界を見捨てて逃げて、嫁達が納得するとでも…そんな愚かなことを本当に考えていたのか?
いやいや、わかってるって…単純にこの期に及んで我がままだったってな…。
この強い奴がいない世界で、終わっちまうのがいやなだけだったって…。
けどまあ、いいじゃねえか…。
まんざらでも…いやむしろ、最高じゃねえか…見てみろよ嫁達を。
こんな俺を慕ってくれて……
いつからだろう、俺より強い奴と戦える欲求より、嫁達と過ごす日々のほうが好ましく感じはじめたのは。
お腹をさする姿を見て、子供が生まれるんだって思ったときの、あの暖かい感じ。
認めちまえよ、俺。
この世界が大好きだってことを。
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
世界が、揺れる。
それは島が落ちてきているからでは、ない。
俺は力を解放した。
カミンチュ達からもらった、世界を越える程の力を。
普段は使わないようにしていた、何より、一度の世界渡りで強い奴と会えるとは限らない。
それこそ原始時代のような世界にいくかもしれないと思い、身体の奥底に封印していた。
それを開放し、身に纏わせる。
周りはえらいことになっているが、嫁達は無事だ。
しかしまあ、さすがに…きつい。
当たり前だ、俺一人では扱いきれない気を無理やりにまとめているのだから。
本来であれば、ただその力を放出するだけでよい、空間が歪み異世界への門は開くはず…だ。
しかし今は事情が違う、加減を間違えればむしろ島があぶない。
蛇口を全力全壊…けどホースの口は閉じたまま、ためにためて指向性を持って出さねばなるまい…狙い通りに…吹き飛ばさなければならない。
つまり何が言いたいかっていうと…あれくるう水はホースである俺の身体を駆け巡り………
「グウッ……ッ!!」
腕の血管の一部が破裂した。
「ケイジ…?
やだよ! やめてよ! 無理しないでよ!」
「そやで! やめてえな! あんたがいなくなったらウチらはどうしたらええんよ!?」
「………ケイジ…………」
「ケイジさん………」
「ふはは、大丈夫だって…ちょっと…入りきってないだけだ…まあ吹っ飛ぶかもしれんが…大丈夫だ、死ぬ気はない…大丈夫…きっとお前らを救って見せる。」
-----------------------------------------------------------
いやだいやだいやだ!!
ケイジがいなくなってしまう!
大丈夫だって言ってるけど、そんなわけがない、だって今も苦しそうにしてる…!
ケイジは私の全てだ。
過去と向き合う勇気をくれた。
姉様とまた一緒にすごせるようにしてくれた。
いっぱいいっぱいかわいがってくれた。
そして何より…愛するということを教えてくれた。
それで、それでいいのか私!
いいやよくない!
ケイジが今一人で苦しそうにしている!
大切な人が! 夫が! ならば、ならばならばその妻は!
私は!!!
----------------------------------------------------
ああ、思い返せばケイジと出会ったんは衝撃的やったなぁ…
まさかあの時はこんなことになるなんて思ってなかった。
はじめては痛かった…うちがあんなに乱れるなんて…
ってなに走馬灯みたいなこと考えてるねん…
フラグやん……そうやん…こんなんフラグやん……
そやったら……そやったらそんなフラグ、折ったらええやん!!!
------------------------------------------------------
ケイジが、死んでしまう。
私達幻種の里のいざこざのせいで、死んでしまう。
竜として竜の長の娘としてそんなことは絶対にあってはならない…。
ううん……違う、そうじゃない。
幻種なんて、里なんてどうでもいい…。
私の白黒だったつまらない世界を明るく照らしてくれたケイジ…。
毎日が楽しい…これからもずっとずっと続いて欲しい。
けどそれは、ケイジがいないと意味がない…。
世界で一番かわいいって、ケイジ以外に言われたって…うれしくないんだから!!
----------------------------------------------------------
思えば嵐のような人だった。
いきなり私の頭を撫でたり、モフモフだ!とか叫んだり。
そして私を虜にしたと思えば、求婚されたり。
私の耳も尻尾も体も………そして心だって、もうケイジさん無しなんて考えられない。
ふふふ、早く帰ってまた愛してもらわないと♪
------------------------------------------
「ぐう………さすがに一人は、きっついな………」
なんとか制御しているが、きつい。
体の中を縦横無尽にかけめぐる荒ぶる気。
最悪、放出する両腕が吹っ飛ぶかもなあ…。
脂汗をダラダラとたらしながら体内の気を収縮する作業をしていると…。
「まったく、私だってあなたの妻なんだからね!」
ふッと身体が軽くなる。
「ほんまやでぇ…まったく。なんでも一人で背負いこんでぇ。」
さらに、軽くなる。
「……………今度は…………私達が……」
「支える番ですッ!」
嫁達が、身体に抱きついている。
俺の身体から洩れ溢れていた気は、ここぞとばかりに器となる嫁達の身体を蹂躙する。
「離れろ! 気でめちゃくちゃにされるぞ!?」
しかし、苦しそうな顔をしていても、誰一人離れるそぶりをしない。
「ケイジだけに、辛い思いはさせれない…。
ケイジに入りきらないのなら、私達を使えばいい!」
「無理だ! 離れろ! 破裂するぞ!」
「大丈夫やってぇ、現にほら、耐えれてるやん。
ううん、耐えれる耐えれへんやない、耐えれるって思ったら耐えるんや!」
「…………それに………この暖かい………感じ………」
「本当ですね……これ…まるであれみたいな。」
嫁達がなにか微妙な顔で頷きあっている。
「「「「ケイジ(さん)の主砲とその弾もいつもこんな感じで暴れまくってますよ?」」」」
「ブフゥゥゥゥゥ!?」
い、いかん、思わず制御がなくなりそうだった。
ぐぐう…俺のはいつもこんな激しいのか…。
「そうそう、だから…大丈夫だよ…ケイジ。
私達を、使って!
そんでもってさっさと、結婚式あげるわよ!!!!」
俺の股間の主砲と一緒なわけがない、当たり前だ。
今も苦しいのだろう、皆脂汗をにじませて…。
しかし、事実として毎夜毎夜俺の気を注ぎ込んだおかげか、身体は俺の気と実に馴染んでいるのだろう…。
だから今もこうして耐えれている。
「…………ありがとう…みんな……」
「当たり前でしょっ!」
「だってうちら…」
「………夫婦………」
「なんですからねっ!」
「わかった…よし、じゃあ…みんな…行くぞ!!
技は、俺の得意なあれな!!!
式の前に、あのでっけえ島に、ウェデイングケーキ入刀じゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
放つ技は、いつものあれだ。
みなまで言わずとも……
「覇王ッッッ!!」 エリーが叫ぶ。さすがわかっていらっしゃる。
「らーぶ…」 あれ…ノゾミそれなんかちが…
「ラブ……ッ!」 ハクアお前もか。
「天ッ!翔ッ!!」 さすがカレン、上手い事修正してくれたな。
最後の言葉を発する、一瞬の間に皆と目線があう。
皆言わずとも、動作が乱れることはない。
同時に天へと突き出される5つの掌。
「「「「「 波あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 」」」」」
超々々々極大の、虹色の気弾は…目標だった島の4分の1を見事に消し飛ばしたのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
―――ある晴れた日の昼ごろ、とある一軒家の庭―――
「あーっ!」
かわいい声が響き渡る。
「ずるいずるい!次は私がお父様に抱っこしてもらう順番だったのに!」
金髪でくりくりとした瞳がキュートな幼女が怒った声をあげる。
「えーいいじゃんーヒマワリ!さっきもしてもらったじゃない!
それよりぃ…モミジ、お父さんにモフモフしてもらいたいな~?」
茶色い尻尾をふりふりとふって誘惑してくる大きな狐耳と尻尾の幼女。
そのモフ度はずいぶんとすごそうだ。
ヒマワリと呼ばれた金髪幼女はぶーっと怒っている、そして心なしかパリパリと帯電している。
「まあまあ~皆で遊んだらええやん~。やからアヤメとも遊んでぇな~」
のんびりとした関西弁な紫髪の幼女、唯一胸が少し膨らんでいる。
「………サクラも………遊ぶ………」
途切れ途切れに言うは薄いピンクの艶やかな髪の幼女…その姿はどこか神秘的だ。
4人の幼女にまとわりつかれ、けれどその顔はとても幸せそうなムキムキな男。
その後ろのほうでは、幼女達にとてもよく似た4人の女性が、皆優しい顔でその姿を眺めていた。




