怒りの鉄拳
俺はいつもいつも抜けている。
『間抜けが、だから貴様は我に勝てぬのだ。』
心の師匠カミンチュがいつもいっていたセリフ。
慢心、油断、自惚れ。
それが自分だけに返ってくるのならば、よい。
自分の力で弾き返せばいいのだから。
けれど今、俺は一人じゃない………。
そう、一人では、ないのだ…………。
今日は皆でウェディングドレスを皆で選ぶのだと、着せ替えショーをしていた。
俺は当日のお楽しみだと、入室禁止だった。
みんな、そんな真っ白なドレスの…腹部から下を真っ赤に染めている。
瞳は大きく見開かれ、口からは赤い赤いルージュのような液体が流れ落ちる。
異常な気配を察知した瞬間、俺は扉を蹴破って入った。
そこには。
禍々しい気を纏った蒼竜と、
その蒼竜の爪に腹部を貫かれ、ぶらぶらと揺れるエリーと…ノゾミと…ハクアと…カレンがいて…………
「てめえエエエエエエエエエエええええ!!!!!!!!!!!!!」
俺は皆を襲った蒼竜に全力で飛び掛った。
俺は蒼竜に飛び掛った。
それが何故、何故俺が地面に叩きつけられているのだ。
「下等な人間風情が…そこで這い蹲っているがいい!
貴様の大切なものを壊していってやろう………。」
理解できない、起こっている事実に対して思考が追いつかない。
いやそれよりも、エリーは、ノゾミは、ハクアは、カレンは…、皆は!皆は!?
「ハクアは最後に貴様の前で犯すとして…まずは邪魔な奴から消すか。」
そういって蒼竜がその禍々しく巨大化した蒼い腕を振り上げ、エリーに…
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
俺は叫んだ、心の底から。
エリーに振り下ろされた腕は、俺の背中で防ぐことができた。
しかし、蒼竜の爪は鋭く、気で硬化された俺の皮膚を易々と切り裂いた。
「「「「ケイジッ!?!?」」」」
嫁達からすれば、今まで無敵だった俺がここまで傷ついていることに驚きなのだろう。
自身の腹部を貫かれながらも、そんな自分のことよりも、俺のことを気にしてくれる………なんと素晴らしき心か。
「大丈夫…大丈夫だ。」
抱き寄せて守ったエリーだけでなく、ノゾミ、ハクア、カレンもこちらに駆け寄る。
皆、苦しそうだ、当たり前だ…むしろ動けることがすごいことだ。
そして皆、皆自分よりこんな俺を…。
「………………気が変わった。
まずは貴様から殺してやろう…ジワジワと、嬲り殺しにしてくれる。
貴様を愛する女共の前で殺してやろう、その後で女共は殺さぬ、犯して憎い我の子を孕ませ産ませてやろう、ハハハハハハ!どうだ!おもしろかろう!」
蒼竜がふざけたことを言っている。
そうこうしているうちに、シコウやヤタさん、他の幻種の者たちが集まってきた。
「ハクア!?無事か!今治す!じっとしてろ!!!」
4人に治療が施される。
「………貴様……もしかしてオゼットか……?」
シコウの口からは驚きの言葉が漏れる。
オゼット?
宴会の時に見たが、あのひょろっとした優男が?
今やあのイケメン顔は見る影もなく、いかつい顔に。
ひょろっとした体型は見るからにゴツゴツと、トゲトゲしくなっている。
「………ふん、もう貴様に怯えることもなくなった。
光栄に思うがいい、貴様の愛娘は性処理として使ってやるわ。」
「貴様ァ…!!」
ギリギリと歯軋りをするシコウの肩に手を置く。
「まあ待て、俺がいこう………てかやらせろ……こっちは嫁4人やられて……ぶち切れてんだ…。」
「………ケイ……ジ……」
エリーが、俺を呼び止める。
ノゾミも、ハクアも、カレンも……みんな不安げな瞳で俺を見つめる。
「大丈夫だ、問題ない。」
安心できるはずなどない、なんと不安感をあおる言葉だろうか。いや冗談抜きで。
けれど、けれど嫁達は…
「帰ったら、式あげるんだからね! さっさと帰ってきてよね!」
「そうそう、うちらと結婚するんやろぉ?」
「…………ケイジ…………待ってるからね………。」
「ケイジさん………頑張ってきてください。」
皆、頷いてくれた。こんな俺の言葉を信じてくれたのだ、心の底から。
ならば応えようではないか、その信頼に。
「いってくるぜ、お前ら!」
「待たせたなぁ…オゼットさんよ。」
「…………絶望は、希望からの落差が激しいほど大きくなる。
感動のお別れはすんだか?下等生物よ。
今からお前は死に、お前の大切な雌共は我に蹂躙されるのだ。」
「……………お前は、今のお前は…シコウよりも強そうだな。」
「…ふん、今の我にとって金竜など最早赤子当然!!よって貴様に勝ち目など、万に一つも無いわ!!!!」
「へえ……そいつは……」
ッッヅドオンッッッッ!!!!
「………楽しみだ。」
俺は、久方ぶりにリミッターを全て…4まで解除して、全力で突きを放った。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッッッッッ!?!?!?!?」
俺の拳が突き刺さり吹き飛んだオゼットの顔が、勝ち誇った顔から驚愕の表情に塗り替えられる。
「…………グウ…貴様…一体なんだこの力は…。」
「んっん~~~やっぱいいもんだなぁ!リミッターなしってのは!
どうした?オゼットとやら。もうおしまいか?
こっちはぶち切れてんだ……簡単には死んでくれるなよぉ…!」
後ろのほうで「どっちが悪役だか…」とか聞こえたが気にしない。
「クソがあ!この俺が!竜であるこの俺が人間ごときにいいいいいい!!
ありえぬ!ありえぬありえぬありえぬ!!!!!
もういい!もうこの島ごと!消し飛bぎゅるあjまあ?!」
オゼットが魔力を収縮させようとしていたので、さすがに止める。
竜にボディがあるのかどうかは知らないが、人間相手であれば「お、俺の腹はあるのか…?」と尋常ではないレベルのボディを受けた感じの威力の1発をぶち当てる。
「亜wセdrftgy富士子lp;~~~~~~~~!!!!?!??」
オゼットが口から色々と吐き出しながら悶絶する。
俺は、両拳を顔の前に近づけ、上体をゆっくりと動かす。
――ふと、思い出したのだ…この世界に来た時のことを。
――あの出会った少女のことを。
――思い返せば、あっという間だった。
――彼女は、元気にしているだろうか、そしてその母であるラブリーマイエンジェルは…。
どんどんと上体を高速で加速させる。
その軌道はまるで∞の字を描くように…………
そして俺は左右の拳を解放する、オゼットに向けて。
ズドンッッ! ズドンッッ!
ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ!
ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!
ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!
ズドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
動きはどんどんと早くなり、最早肉眼では捕らえることができなくなっている。
ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!
最初はズドンズドンとリズミカルだった音も、最早ドラムを叩くよりも早い音となっている。
オゼットの意識はあるだろうか…たぶんないだろう…というか最初の1発で悶絶していたようにも見える。
だが、俺は簡単には終わらせない。
痛みに悶絶し、気絶してもまた痛みに悶絶する、落ちることもできず、延々と続く地獄を味わってもらおう。
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もう自分でも何発殴ったかわからない、どうしようか…もう十分発散したしやめようかと思い、拳をとめることにした。
目の前には…なんとか原型を…とどめていなかった、やっぱりダメだったよ…。
オゼットだったと思われるモノが落ちていた。
俺の周りは踏み込みや衝撃波のためにクレーターというか…なんかもうすごいことになっていた。
「終わった…? ケイジ……。」
振り向くと…そこには般若の形相のエリーたちがいた。
「あ、ああ…うん…。」
怒っていたとはいえ、回りのことを少しは考えろと、このあと滅茶苦茶怒られた。
「しかし…おぬしは本当に規格外だな…我と戦っていた時すら本気でなかったのか。」
「あーまあなぁ…普段は制限かけてるよ、つまらんし。」
「そうか…ヤタの時も手加減してくれたのだな。」
「そういうこった。」
「おぬしに敵う…もしくは楽しませれる存在など、この世界には存在せぬよ。」
「そんときはそんときだなぁ…」
最悪、世界を渡ればいいしな。
「…………ケイジ…………私達が………いる……」
「…………ああ、そうだ……ーーーッッ!?!?」
バッと振り向くと、謎の物体Xになっていたオゼットが立っている。
その体はぼろぼろで、けれど崩れる傍から修復されようとして、また崩れて…。
「オゼット…お前それは……」
「ギャハハハハハア!もういい!もうどうでもよいわ!!
貴様らまるごと、しねえええええええええええええええええええええ!!!!」
その瞬間、オゼットの気が爆発的に広がり…ドカン…とはいかず、ドサリ…とオゼットが倒れた。
気が完全に消えている…死んだのか…?
そう思っていると、急遽地震が起こった。
「いかん!あやつ風の大魔水晶と繋がっておったのか………」
「つまりどういうことだってばよ」
「この島は、複数の風の大魔水晶が浮力となって浮いているのは話したな?
あやつの変貌はその大魔水晶を取り込んだことだったようだ。
そしてあやつは最後に、その魔水晶を壊した、少なくとも島との接続は絶たれた。
つまり…………この島は、落ちる。」
「な、なんだってーー!?」
「く、くそう!!
ヤタあああああ!! こうなったら落ちる3分までにできる事をおおおお!!?」
「あほかああああ!!!」
シコウがヤタさんにどこぞのスイーパーみたいなことを言いながらルパ○ダイブをしようとしてふっとばされている。
ふむ…さてどうしたものか……。
島は四国程の大きさだ、いくらリミッター全解除とはいえ、消滅させるのはさすがに厳しい。
かといって放置すれば星がやばいことになる。
てかこの島作った奴ちょっと考えろよ…落ちちゃったときどうすんだよ…。
やばいな……本当…どうしたもんかねぇ…。




