死亡遊戯
「~~~~~ッッッ!?!?」
ヤタさんの拳を受けて吹き飛んだ。
そう…吹き飛んだ。
いくら油断をしていたからといっても、この俺が吹き飛ばされたのだ。
なるほど…さすがは幻種、といったところか。
「ははは……じゃあしっかり頑張って、認めてもらわないとなッ!」
言葉と同時に踏み込み突きを放つがあっけなく回避される。
やはり、リミッターありではきつい。
一気にリミッタ-2を解除する。
「―――ッ!
なるほど。それがケイジ君の本気…ってわけね。
うちの旦那が認めるわけだわ…。」
まだまだ本気じゃないんですけどね。
「けど……はあッ!」
ヤタさんの姿がぶれ、一瞬で俺の目の前に現れる…。
まるでかのラブリーマイエンジェルを彷彿とさせるこの速さ…。
「私は風魔法は得意じゃないんだけどね…ちょっと人間のママ友に極意を教えてもらったのよ♪」
彼女に幾度も拳を放つが、全てを受け流されてしまう。
前の世界でもここまでの受け流しをする猛者はそうそういなかった。
「ふふ、ケイジ君がさっき言ってたわよね…激流を制するは…ってね!」
静かなる水は時として激流となる…ヤタさんから放たれた拳は再び俺の鳩尾に突き刺さり、そして…。
「…………あら?」
「正直ここまでとは、思わなかったよ。」
バッ!と飛びのくヤタさん。
そう、俺は吹き飛んでいない。
当たる瞬間に受け流さずに、剛体で受けたのだ。
大の苦手だった柔の拳をやめ、俺本来のスタイルである剛の拳での構えをとる。
「我が拳は剛の拳……ヤタさん…貴方に受けきれるかな?」
ヤタさんの口角が釣りあがる。
「おもしろい…私の名前は黒竜のヤタ!」
「我が名はケイジ!」
「いざ」
「尋常に…」
「「勝負ッッ!!!」」
「と見せかけていきなり覇王天翔波アアアアア!!!」
キュボアアアア!
極大の気弾がヤタさんを飲み込み吹き飛ばす。
ドオオオオオン!!
もくもくと土煙があがり…晴れたところからは倒れたまま動かなくなったヤタさんがいた。
「ごめんなヤタさん、俺にヤタさんを傷つけるなんてできない…だから気絶させてもらったぜ。」
その瞬間、最高潮に達していた会場から、一斉にダイブーイングが鳴り響いた。
「ケイジ…あんたって人は…」
「ケイジいいいいい!てめえ殺す!ぶちころす!よくもヤタをおおお!!」
「やめて!お父様やめて!お母様は無傷だから!無傷だからあああああ!」
普段喋らないハクアが必死になってシコウをとめていた、ううむ…さすがにちとダメだったか。
野次とブーイングで大騒ぎの会場を見回して、どうしたものかと頬をかいていると…。
「だまりなさいっッッッ!!!」
ヤタさんが起き上がり、一喝した。
「私は負けた!それだけよ!
これ以上文句があるというのなら、それは敗者であるこの私の誇りをも笑うと同義!
第一、見なさい! この私の姿を!
無傷でしょう!?
純粋な魔力だけで、この私を! 黒竜のヤタを気絶させたのよ!
やり方はどうあれ、彼の実力は確かです!
意義があるというのなら、今すぐここに降りて来なさい!!!!」
会場は葬式会場のように静まり返った。
1秒、2秒、3秒…待っても誰も降りてこない、まあ当然だ。
「はいはいーほな次いってみよかぁ。」
相変わらずノゾミはぶれない。
「………っていうか次おるん?」
結果的に、次はなかった。
力を持って示した俺は、数日後正式にハクアの婿となるそうだ。
盛大に式をあげるということで、その日は解散となった。
そして俺達は結婚式をあげ、幸せに暮らしましたとさ。
とはいかなかった。
「ケイジ?うちとは式あげてくれてへんの?
エリーとはあげて、ハクアとはあげて、うちとは?なあ、うちとは?」
「ケイジさん…私も…したいです。
ドレス…白いドレス着たいです!」
エリーはアリシャのときにしたのでそこまで言わなかったが、ノゾミとカレンが猛抗議に来ている。
さらには…
「あれけど、第一夫人の私を差し置いて盛大な式…?
ちょっと待って、私もしたいよ!」
ハクア以外の嫁3人が激オコだった。
「…………なあ、シコウ。ヤタさん。
エリーとノゾミとカレンも一緒に式あげるわ。」
「なん……じゃと………」
「あらあら♪」
「まあ聞いてくれ。
まず4人とも俺の嫁だ、差別はできん。
そりゃあ里の事情とかもあるのはわかる…かといって他の3人をないがしろにはできん。
というかな、別にいいんじゃねえの? 跡取りは他にいるんだろ?
それに、だ。
結婚っていういわば祝いの席だ。
それをとやかく口うるさく言うのは、粋じゃねえよ。
幻種も人も関係ねえ! 祝うのならぱあっと祝おうぜ!!!」
祭りは楽しく騒いでこそだ。
ヤタさんはニコニコとシコウを見ている。
シコウはずっとうなっていたが…。
「………そう…だな。
いいだろう、4人共式をあげよ。
もはや、幻種の里などに引き篭もっている時代ではないのかもしれんな…。
外の世界にはこんなにも良い漢がいるのだ、もっと開放的にならねばいかぬのかもしれん。」
「だ、そうよ? よかったわね。ハクアちゃん♪」
「…………うん…………皆………一緒…………」
こうして俺達は、5人で式をあげることになった。
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「クソが…クソが…クソが…ッ!!!!」
「………どうなさいます、オゼット様。あのヤタ殿をああも簡単に破る人間等…」
「ええいうるさい!わかっておるわ!!!」
人間め…下等生物の分際で!!!
「もう、よい!
もうこうなってしまっては、全ては望まぬ!!
この島が落ちようと!どうなろうとかまわぬ!」
「オゼット様!! まさか風の大魔水晶石を!?
それだけはいけませ…………グプッ……」
「貴様も俺の思い通りにならぬか…もういらぬ!」
「オゼット…様…ッ」
「………ケイジ……貴様だけは絶対に楽には死なせん…ジワジワとなぶり殺しにしてくれる……。」
「さて、4人とも…覚悟はいいか?」
「「「「………ゴクリ………」」」」
正式に結婚が決まり、両親?というか里公認となった俺達。
これで誰彼気にせず励めるというものだ。
こうして俺達は、このあと滅茶苦茶プロレス(夜間)した。




