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かみんちゅ  作者: さんさん
第4章 メーリ連合国編②  ~幻の花嫁~
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私の婿がこんなにひどいわけがない。

「~~♪~~♪」


ケイジが機嫌よくスキップをして森の中を進んでいる。

道中、何度も魔獣に襲われた…が、全部ケイジが鼻唄混じりにワンパンで消し飛ばしていた。

…そう…"消し飛ばして"だ……咆哮が聞こえて、目の前に大きな獣が現れたと思ったら、消えていたのだ…何を言っているかわからないと思うけど…私にもわからない…。

頭がどうにかなりそうだった。


はっきりいって、私はそんなに強くはない、竜族だといっても、まだまだ未熟。

そりゃあこの身に流れる血は最高だから、同年齢の他の竜に比べたら強いほうだとは思う……だけど、それでもやはり森の中の魔獣は、ものによっては苦戦するのだ…。


たとえば、ほら…なんか牙のかけらだけを残して今、目の前で消滅したサーベルタイガーなんかそうだ。

奴は鋭い牙を持ち、俊敏な動きで敵を切り刻んでいく…その機敏な動きは目で追うのも難しく、また刃のごとく変異した皮膚は刃をすべらせ、魔法を反射するのだ。


それが…ワンパンだ…おそらくサーベルタイガーは死んだことすら気づかず逝っただろう…。

その特殊な皮膚は、剥いで服にすればそれだけで魔法耐性が強い防具となり、一財産になる。

私の里でも高級品だった…そしてその鋭利な牙は、武器として加工すれば同じく一級品…のはず…だ…。


と言うか、サーベルタイガーが出てくるほど森の奥にきているのだ…ホワイトベアーどころではない。

いい加減声をかけて引き返したいが…声をかけた瞬間私がワンパンで消し飛ばされるんじゃないかと怖くて声がかけれない…。



バァン!



ほら、また一つ命が消えた……私はどうしたらいいの………だめだ、なんか泣きそうになってきた…。

耐えようとすればするほど、涙が目にたまる…。




「………ウッ…ヒック…………グス…」


「ハクアッ!?

 ど、どうした!?何かあったか?どこか痛いのか?」


「………………ヒック………ちが……う……………ケイジが…………ずっと………上の空………だし…。

 獣も………どんどん死んで………いくし………ヒック………私………横にいる………のに………」


もうわけが、わからない…感情が、決壊する。

ケイジがずっと上の空で、カレンさんのこと考えていると思うと苦しくて、私が横にいるのに…ああ、もう…ああもうああもう…………


「………………ハクア………すまん…。」



ぎゅっと抱きしめられて…時が止まる…。

今までの感情の爆発が、嘘のように収まった…。

ああ、もう私はこの人無しでは、生きれないなぁ…。




「ッ! ケイジ………! あそこ………!」


ケイジに抱きしめられながら、ふと横を見ると…綺麗な…透き通る水晶のような花があった…。

あれが…雪月花…。

親指ほどの大きさだけど、その透き通る花弁は雪の結晶のようで…本当に綺麗だ…。


雪月花は、つぼみでは価値がない。

咲いている状態でこそ、価値がある。

その花は特殊で、太陽の代わりに月の光で成長をするのだ。

そして花が咲いた状態で茎を折れば花弁付近が固定化されるのだ。

そしてそれはそんじょそこらの金属よりも硬い…。


透き通ったそれは、さながら天然の宝石というわけだ。

もちろん、希少なうえに雪森の危険地帯にしか咲かないため、かなりの高値である。


この地方では、この雪月花で求婚されることが、女性にとっての夢であるという。

もちろん、夢だ…普通の人間は高価すぎて手がでないし、自力で取りにいくにしても危険すぎて手が出せない。



そんな雪月花が見つかった…けど…ケイジはこれを、カレンさんにあげるのだろう…。

うう…なぜだ…そう考えたらまた涙がでてきた…一体どうしたというのだ私は…。

すると…スッ…と頭に何かがのせられた…。


「………………え………?」


「うん…銀髪に、雪月花がさらに冴えるな…。

 綺麗だよ…ハクア。」


「………?………え?…………あ…え……」


「嫁だのなんだのいって、なあなあだったからな…。

 本当は、指輪を送ろうかと思ったんだが、この地方だとこの雪月花を贈るのが、一番いいと旅館の女将に聞いてな。

 あー…その…いやだったら…別にいいんだが…。」


見てくれていない…そんなことは、なかった…。

私が勝手に、不安になっていた、だけだった。

真っ赤な顔になった彼の不器用な優しさが…とてもうれしい。



「………………ケイ………ジ…ッ!

 ………………ありがとう………………………うれしい………………ッ!」



私はケイジに抱きついた、もう…離さない。

ケイジは…私だけの…ものッ!

誰にも…誰にも渡さない…ッ!







そこからは、ホワイトベアーをワンパンならぬデコピン1発で吹き飛ばし。(上半身の一部のみ残っていた。)

ギルドへ帰って成功報告をした。

あとは、かえってご飯を食べて…そして…(ポッ



そんなことを考えていたら、ケイジがカレンさんに雪月花を渡していた。




ド ド ド ド ド ド ド ド ド



私は、私の中の何かが切れる音が、聞こえた。



「ケイジの…………バカアアアアアア!!!!」



ビキィン!!!



―――その日ゴレイクのハンターギルドで、綺麗な雪の花が咲いたという。



「………ケイジ…許さないんだか…ら………ッ!」


「ほう…まあすぐに逆の言葉をいう事になろう。」




--------------------------




「ひぎいいいい!? も、もう………ゆる………して………えッ………。

 ………………………(ビクンビクン)………。」



ケイジ vs ハクア   2ラウンド勝負 ハクア9KOののちレフェリーストップ。

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