ふんもっふ!
「さて、とりあえずは当面の資金確保だな。」
高級旅館にはしばらく留まれるが、金は無限ではない。
贅沢三昧のために、俺はクエストを受けることにした。
「せっかくだし、お前の実力もみたいしな、ハクア。」
「…………わかった………。」
ハクアは最初は無口かと思っていたが、単純に口下手なだけだとわかった。
「じゃあゴレイクのハンターギルドにでもいくとするかぁ」
「………………おー………………。」
「~~~~~ッッッ!?!?」
俺は目を見開いた…ハンターギルドの受付嬢…なんと…なんとキツネ耳ではないかああああ!
ピコピコと揺れる耳…ふわふわと左右に揺れる尻尾…たまらぬ…。
貴君等はどういったけもみみが好きだろうか?
俺は断然キツネ耳だと答えるね!
大きな耳!そして大きな尻尾!
大きな耳は髪との境界がない感じのやつがたまらない!
へにゃんとしぼんだり、ぴくぴく動いたり…
そして尻尾! 大きくて太い尻尾は、柔らかくてもふもふ…それだけで頬ずりしたり、顔をうずめたくなる存在…!
ああ、改めて言おう…この世界に来て、よかった…。
「…ええと、お兄さん?」
声もかわいい、アニメ声というやつだった!
つやつやの肩くらいまでの茶髪をサイドでまとめたその顔は、キリリとしていてもどこか幼さを感じる…。
強い意志をもっていそうな、つり目もまたそそられる…。
そして登頂から天を突く大きな耳…先っぽが白くなってるのがまた良い。
身長は…160くらいか、すらっとしたスレンダー体型。
白いタートルネックのセーターから膨らむ胸はBランク、うむ、これはこれでいい。
深い緑色のロングスカート…その後ろで揺れる尻尾!こちらも先端が白い!!
ウッヒョオオオオ…っといかんいかん…
「ああ、すまない。 金を稼げて、けれど近場の手ごろなクエストとかないか。」
平静をよりそい、とりあえず答えるが視線は耳と尻尾に釘付けだ。
「かしこまりました、それではハンターカードをお見せくださいますか。」
「了解」
すっとBランクのカードを出す…すると一瞬だけ眼を見開いたがすぐに戻る。
「Bランクのケイジ様…ですね、それではこちらのホワイトベアーの討伐などいかがでしょうか?
見たところお2人でのPTなようですし、単体相手のほうがよろしいかと思いまして。
また、こちらのベアー付近には、雪月花と呼ばれる希少な花が咲いていることがありまして…つぼみの段階では価値はありませんが、咲いている雪月花はかなりの高値で買取が可能でございます。
目印としましては、雪の結晶のような花と思ってくださればよろしいかと。
いかがなさいますか?」
「うむ、なんと懇切丁寧な説明…ありがとう、このクエストにしよう。」
そういって俺は受付嬢に手を伸ばし、最高の癒気をこめて頭をなでなでする…。
その瞬間…ッ!!!!
もふぅ…
耳が、髪の毛が、すばらしい感触が、俺の手に伝わった…いまだかつてこれほどのもふ度をもった生物がいただろうか…いやいない。
俺はつい我を忘れてなでナでし続けた…。
「………………ケ、ケイジ………………」
ハクアの声ではっと我に返ると、俺の目の前にはあへぇ…とよだれをたらして恍惚の表情の受付嬢がッ!
「ウホッ…す、すまん…」
「………………………………………………………ハッ!?」
横の別の受付嬢がぽかーんと口をあけて見ている…他のハンターがいなかったのがせめてもの救いか。
「い、いきなり何するんですかっ!?!?
信じられません!いきなり人の頭なでるなんて!」
「すまん…つい…我慢できなくてな…しかしお前…いや、貴方の耳…最高だ。」
「~~~~~~~~ッッ!?!?」
受付嬢が耳も顔も真っ赤になった。
「そして…よろしければ貴方のお名前を聞かせてくださいませんか?」
受付嬢は口をぱくぱくとさせ、わなわなとなり…しかしそんな姿もかわいい。
「あ、あなたに言う名前なんてありまえんっ!!」
ショックだった…これほどのショックはそうない、それくらい俺はこのモフモフに心を奪われたのだ。
「いいじゃないか、カレン。
名前くらい教えてあげてやってもさ。」
「ッ! ちょっとルルさん!?」
「ほう、カレンさんというのか…なんという…美しい、可憐でまさに名前のごとき…。」
「~~ッ。
いいから、さっさとクエストにでも行ってきてください!」
俺達はカレンさんに追い出されるように、ギルドを出たのだった。
「ふぅ…すばらしかった…。」
感触を思い出し、悦に浸っていると袖を引っ張る感覚に目を覚ます。
「………………ケイジ、ケイジ………」
つんつんと自分の頭を指差すハクア、一体なんだと言うのか。
「どうした? ん? 触ればいいのか?」
コクンと頷くハクアに促されるまま頭を撫でてみる。
すると…
「ッムッ…これは…」
コリコリとした感触が手に伝わる…そう、ハクアの角だった。
しかし、しかしだ…ただそれだけだった。
「………………ハクアのじゃ、ダメ………なの…………?」
うるうるとした目で俺を見上げるハクア…。
「違う、そうじゃない、そうじゃないだハクア。
はっきりいって、お前より美しく可愛い奴なんていない。」
そう、それは事実だった。
「けどな、もふもふは、もふもふは違うんだ…。
なんていうのかな…これはこれ、それはそれっていうのかな…。
ほら、例えばハクア、お前はクレープとラーメン、どっちが好きだい?」
「………………?
………………ッ!?
………………………どっちも…好き………。」
「そう、つまりはそういうことなんだ。
俺にとってハクアは大好き、けれど別の意味で、カレンさんのモフモフも好きなんだよ。」
「………………ハクアのことは………………好きなんだよね?」
「ああ、もちろんさ。
それに、なんたってお前は…俺の嫁なんだろう?」
「………………ッ!?…………………………(コクン)」
顔を真っ赤にさせて頷くハクア………なんというチョロイン。
しかしまあ、事実は事実である、ハクアは美少女だし、大好きだ。
しかしモフモフは、モフモフは別腹なのである!
そうだ。雪月花をカレンさんのお土産にしよう…そんなことを考えつつ、俺達はホワイトベアーのいる森へと行くのであった。
「………………………」
「おやおやぁ…顔が赤いねぇカレンちゃん…。さっきの彼のことでも思い出していたのかなぁ?(ゲス顔)」
「~~~ッッ!!!?る、ルルさんッ!
ほ、ほっといてください!!!!?」