エリーシア・カミンチュ
誘拐脅迫事件から3日、私達はとある病室にいる。
両親及び兄、弟は更迭され現在国の収容所にいる。
一応まだ容疑者の段階ではあるが、証拠は全部ある…近いうちに被疑者となり判決を受けることになるようだ…。
ヴォッカ家も、コレで終わり…そしてヴォッカ家以外の一部上級議員も芋ずる式に引っこ抜かれているようだ。
これでこの国も、少しは変わるのだろうか…。
まあ私には"そんなこと"は、どうでもいい、今大事なのは………
「姉様…」
「ふふ、大丈夫よエリー…あなたがまたこうして姉と呼んでくれる…それだけで私には無限の勇気が湧いてくる。」
姉様は、ケイジ主導による治療を行うことになった。
あいつにやられた火傷等はケイジの治癒魔法のおかげで治った…。
しかし内部までとはいかない、諦めかけていたその時、ケイジの一言で希望が出た。
――悪い部分に直接気をあてれば、あるいは…
ただし、問題が数点。
まず、直接ということ、つまり姉の肌を切り裂いて直接あてるのだ…
ケイジがいうには、無菌状態には気でなんとかできるが、問題は姉が持つかどうかということ。
また、血が流れすぎた場合危険になるということ。
そして、ケイジが一番危惧していた転移していたら…ということらしい。
よくわからないが、姉の悪い部分は最悪全身に回り、そうなると最早手がつけられないという…。
けれど、それでも一縷の望みがあるのなら、と姉は治療を受けることにした。
ケイジは最大限努力するとはいっているが、正直正気の沙汰とは思えない、胸を切り開いて治療などと…。
誰もが信じないようなことであるが、ほかならぬケイジが言うのだ…信じよう。
そうして治療は行われることとなった。
実施者は、ケイジ。
補助に、ノゾミ。
そして付き添いに…私。
私と同じく攫われていたノゾミは、なんとシール様に助けられていたのだ!
ヒーヅルが、むしろ世界が誇るSランク…女神と呼ばれるあの人に…!
何を隠そう私もファンの1人だ…って話がそれた。
そう、ノゾミも無事だったのだ。
今回、治療にあたってノゾミの氷魔法で冷やしたりするらしい…詳しいことはわからない。
というか、ケイジに治療の知識があることにびっくりした。
戦闘だけじゃなく、本当に何でも知っているんだなぁ…。
いよいよ治療がはじまった。
私の手を握る姉の手が、人間とは思えないくらいの力がこめられる。
痛い…痛い…けど、けどけどけど!姉様は!姉様はもっと痛い!
今だけじゃない、今まで、ずっとずっと1人で、あんな家でがんばって来ていた。
ずっとずっと1人で、私を見てくれていた…こんな小さな体で…だから、だから姉様…頑張って!今度は、私も一緒だよ…頑張って…姉様…!!
…………どれくらいの時間がたったろうか…握っている姉の手は、いつしか力がない…。
姉が寝かされたベットの下には、ありえないくらいの血が流れている…。
顔色は真っ青だ…姉様…姉様…
ケイジが、動きをとめた。
姉様の胸は、今は縫合されている…、どうなったの?ケイジ…ねえ、姉様は!姉様は!?
ケイジが首を横に振る…そんな…嘘……
「一応は、終わった…だが、血を流しすぎている。
あとは…本人の精神次第…だ。」
精神……ッ!
「姉様!姉様、頑張って!今までずっと頑張ってきてたじゃない!
あんな奴らにも負けなかったじゃない!これからやっと私と一緒にいれるって言ってたじゃない!
ねえ、姉様!頑張って!頑張ってよぅ…~~ッッ!!」
………どれくらい願い続けただろうか…夜中に終わった治療のはずだが、もう夜が明けてきている…。
「……姉様…」
もう何度目の呟きかわからない、その言葉を発したその時だった…。
きゅっ、と感じた。とても弱くて、けど確かに力を感じた…。
「姉様!!!」
「………………ん…………お…はよう………エ…リー……」
「姉さまああああああああ~~~~~~~~ッッッッッ!!!」
抱きついた私をあわてて引き剥がしたケイジに怒られた。
「よかった、本当によかった…よかったよおおおお…」
私を見ていた姉様とケイジは、とてもとても優しい顔をしていた。
--------------------------------------------
あの事件から1ヶ月、アリシャの体調もほぼ治ったといっていいくらいになった。
ようやく終わった、というところか。
シールさん、ギルドのジジイから真相を聞いてから俺なりにも考えていた。
エリーをどこまで関与させるか…と。
正直最初のところは、エリーに関与させず、アリシャだけを救い何も知らないまま終わらせる予定であった。
しかし、エリーの精神的な成長を見て、全てを見させることにしたのだ。
しかし結果的に…………
「はい、姉様~♪ あ~ん♪」
「あむっ♪ おいしいようえりーちゃあああん!♪」
………おめでとう!エリーは 極度のしすこん に 進化した!
まあ今までのリバウンドか、何かか、エリーの中での序列最上位が俺ではなく、ノゾミでもなく、アリシャになっていた…。
「へー、ケイジさんエリーの彼氏なんだ?
いいなぁ…エリー、私に頂戴ー?」
「いいよ!姉様!」
みたいな感じである…どうしてこうなった…。
ま、エリーはいろんな意味で一皮向けたと思う。
「姉様ごめん、今までずっとずっと、ごめん…。
そして、ありがとう…本当にありがとう…!
私はもう逃げない、前を向いて、ずっとずっと私は私として生きてみせる!!!」
「うん…うん…!
エリー…………おかえり、なさい。」
「ただいま…姉様!」
そういった彼女達の瞳は、どこまでも澄み切った綺麗な綺麗な空のような、そんな青色だった。
ヴォッカ家はなくなったが、アリシャはただのアリシャになった。
またその才能で国家魔法師になり、研究職についた。
そしてエリーは…
「ケイジ、幸せに…してよね?」
「………ああッ!」




