十二月二十四日 悠希と彩の決意
「それにしても、アイちゃんとさおりんにあたしたちのこと言ってなかったのは盲点だったなー」
「私も気付かなかったくらいだもの。どうかしてたのかしら」
「でもさ、収穫はあったよね。アイちゃんとさおりん、とっても仲良しになってる」
「そうね……」
「どうしたの、悠希?」
「私がしようとしてることって、本当は誰のためのことなんだろうって考えてしまったの」
「悠希……」
「結局は私が逃げようとしているだけだって気付いたの。自分で抱えているのが怖くて、人に押し付けてしまいたいだけ」
「でも、悠希だって最初は」
「違うわ。あの時は深く考えていなかった。だから今になって怖気づいてしまうのよ」
「じゃあ、どうしたいの?」
「私は──見届けたい。そして、幸せになってほしい。四十崎さんも、麻生さんも、薙坂さんも。今まで観察をしてきたみんなに、私みたいにはなってほしくないの」
「それが悠希の答えなんだね?」
「そうよ。もう私は逃げないわ。受け継いだ力とも向き合っていく。こんなものをあの三人に押し付けようなんて考えていたこと自体がおかしかったんだわ」
「なんだか、悠希とってもかっこいい」
「別に、そんなことないわよ。やっと普通の考えに辿りつけただけだもの」
「それで、これからどうするの?」
「みんなのこれからを助けていこうと思うのだけど……彩はどうする?」
「そんなの、悠希と一緒に決まってるじゃん。あたしはいつでも悠希と一緒なんだから」
「彩……あなたは強いのね」
「そうかなあ。そんなことないんじゃない?」
「彩がそう言うなら、そうなのかもね」
「んー?」
「さて、次は今度の三十一日ね。寮監さんに話してみるわ」
「また何かするの?」
「そんなに大きなことではないわ。年越し会自体は毎年やっていることらしいから。ただ、ちょっと話を運んでくれるように頼むだけよ」




