ゴリラだからって
黒褐色の太い腕は包み込むようにそっとそっと抱えている
黒褐色の小さな命は離すものかとぎゅっぎゅっとしがみつく
互いが寄り添い求め合いぬくもりを分かち合う
本能なのか愛情なのか
生い茂る木々のてっぺん
見下ろす空は知っているのかもしれない
ゆるり乳房のその中は初めて出会う生きる源
生きることは疲れ果てていくことだよと
幾度も吸い付いては微睡むばかり
ただ瞼を開けるといつでもそこにある
逞しき腕の中 抱きしめる腕の中
本能なのか愛情なのか
薄日差し込む穏やかな空間は
過ぎゆく時間を見守るばかり
遠い昔に別れてしまったけれど
ゲノムや染色体の違いはあっても
空も海も太陽も世界を平等にみつめていた
あと少しで人間になれたのかもしれないのに
ふとちらつかせた脳裏を見透かしたように
黒褐色の顔が一瞬だけ前を見据えた
馬鹿にするな
ぷいと背けた背中からそんな声が聞こえた