そいつはすごい勇者に違いない~新しい召喚勇者が来たからと追放を宣言された現地勇者の話
「フランツ殿、王命である。勇者の職を解く。パーティーは解散だ。こちらの新しい勇者パーティーが王国の勇者パーティーである」
俺はフランツ、こう見えても勇者だ。
しかし、異世界より新しい勇者が来られた。それに従うパーティー員は皆、王都出身の10代の女性だ。きらびやかなそれぞれのジョブにあった服を来ている。
「阿久津です!目標は魔王討伐です」
勇者は10代の若造だ。俺は15歳で託宣を受けてから十五年間頑張って来た。
魔王討伐こそならなかったが、数々の魔物を仲間と共に討伐してきた。
結婚もせずに・・・まあ、仕方ない。
勇者パーティーの面々も入れ替わって今では20代前半だ。
「では、皆の次の職は?」
「ない」
「慰労金は・・・」
「ない」
「では、せめて陛下から慰労の言葉は・・」
「ない」
明日からどーしよう。魔道師、上級剣士はまだ潰しが効くが・・
前職勇者なんて潰しが効かないにもほどがある。
冒険者を続けるか?年齢を追うごとに体力、気力が無くなってくる。
引退が先延ばしになっただけだ。王国の援助がなくなる。
「納得できません!」
さすがに皆を代表して抗議した。
「フム、アクツ殿は既に剣聖よりも上だ」
「でも、勇者の力はそうではないはずです」
「すぐに、魔王を討伐するであろう」
「わ、私にはどうしてもそうは思えないのです」
「なら、どうする?」
使者はニヤッと笑った。
つまり決闘をせよとの事だ。
「まあ、決闘ですかな。でも、さすがにアクツ君には荷が重すぎないですか?」
アクツの眉があがった。
「やれやれだぜ、分からないおっさんをお仕置きイベントのフラグが立ったか?・・・僕は別に構わないよ」
変な話し方をするな。
「本当に良いのか?」
「余裕しょ。これもイベント、テンプレです」
「ゴホン、なら、日時を伝えるまでそれぞれこの街で過ごされるが良かろう」
アクツはこの街の最高級の宿に留まり。時々、ギルドで演練をする。
「アクツ様、是非、私めをパーティーに入れて下さい」
「え~、魔道師枠は一人だよ」
アクツのパーティーに入りたがる奴は大勢いるな。
条件はそれぞれの仲間で戦う。
日時は一月後だ。
おかしい。滞在期間の間、俺は三回アクツを殺せた・・・そもそも勇者の特性はヒットマンだ。
勇者パーティーは使い捨ての強襲部隊だ。
それが分かっているのか?
街でアクツと会う度に忠告した。
「なあ、やめとけ。今から辞退せよ」
「あれ?あれあれ~、フランツさん。怖じ気ついた?」
妙に自信満々だ。もしかして、俺と奴の間にものすごい力の差があって俺が感知できないだけか?
たまにある。その時は無理せずに撤退だ。タンク職の墓場だったな。
こいつはとてもすごい勇者に違いない。
不安になった。
俺の元々の勇者パーティーたちには解散を宣言した。
「解散だ。すまない。パーティーのお金は平等に分けよう。それで良いか?」
「フランツ・・すまない。俺、家業を継ぐ話来ているのだ」
「・・・そうね。旦那の世話になるわ。元々離ればなれになるのはおかしかったわ」
「ごめんなさい。私、魔道学園の教授のお誘いがあるの」
仲間達は次があるみたいだ。良かった。
「良かったじゃーないか?決闘して死んだら次も無くなるからな」
「ところで、フランツ、前々から気になっていたことがあるのだけども・・・」
魔道師のリーザが話してくれた。
「ここ数十年間、王都は戦乱がないでしょう・・・だから、都の貴族様たちは絵物語の騎士様や勇者様のお話がスタンダードになっているみたいなの」
「ほお、それは・・」
「正々堂々と名誉をかけた戦いだわ。私達の事、理解していないみたいだわね」
「そうか、有難う。しかし、俺の戦いをするしかないだろうな」
そして、俺は新たな仲間を探した。
見習いの冒険者達だ。
ギルマス直々にクエストを発した。
「訓練1日銀貨1枚、決闘日は銀貨3枚払う。訓練に参加したら必ず決闘に参加する条件だ」
「はあ、フランツ、あれをする気か・・・見習いが沢山死んでも当ギルドとしても困る」
「きちんと延命の訓練もするさ。それに、死ぬ可能性を考えない冒険者なんていないだろう」
12歳から15歳の男女が集まった。総勢五十名だ。
「いいか、言われた事をやれ!特訓だ」
「「「はい!」」」
この年代は素直でいいな。
それから決闘当日になった。俺は兜を被り。短刀を携え。片手で盾を持つ。
勇者の正装だ。
対してアクツは、金ピカの鎧に長刀、・・・楯無し兜なし。余裕か?それとも舐めまくっているのか?
分からん。
やはりすごい勇者に違いないのか?
決闘場所はギルド郊外の草原だ。あの使者が見届け人として近くにいる。馬鹿なのか?それともすごい使者なのか?これも判断に困る。
あれ、アクツは一人だ・・・遠巻きにメンバーがいる。
「あれ、フランツさんも一人?お仲間は見えないね?」
「皆、やめたよ。代わりのこちらの子供達が仲間だ」
「はあ?見物人でなくて・・・」
そうだ。違和感の正体はこれだ。子供達と目つきが違う。
「みすぼらしい弓に・・・石?マジ、やれやれだぜ」
呆れた顔をしやがる。使者の口上が始まった。
「・・・説明は以上です。では・・いつから始めますか?」
「やれやれだぜ。フランツさんの好きな時から良いよ」
「じゃあ、今だ!」
「えっ?!」
俺は盾をブチあててアクツに組み付いた。
そして、手で子供達に合図を送る。
殺れだ・・・
投石器から石、矢が飛んでくる。総勢50人の一斉射撃だ。
「うわ。ワシは見届け人だぞ!」
俺ごと石や弓で攻撃するように言い含めていた。俺が固定すれば当たるだろう。それぐらいのレベルだ。
幸いアクツは兜を被っていなかった。盾を使う戦法を知らなかった。
俺にも当たるが、背中も完全防備だ。
「うわ。何、これ!」
奴は刀を振るうが、長刀だ。使い勝手が悪い。
俺は短刀なので鎧の隙間を刺し放題だ。
「ウウ、ウィンドカ・・・」
詠唱を始めた。子供達から殺すつもりだ。手で合図を送る。
すると、子供達は地面に伏した。
空撃が宙を舞う。草が切れる。まともに戦ったら勝ち目なかったな。
「すまないね。これ、決闘なのだ」
「ちょっと、待って、殺すの?これ無し!」
「あれ、決闘は殺し合いだけど・・・」
何だ。意味が分からない。
そのままアクツの首に剣を刺した・・・・
結局、子供達に死傷者は無し。
見届け人は重体になった。
それは知らん。
しかし、どうして、アクツは仲間がいるのに一人で戦い。負けても死なないと思ったのだろうか?
最大戦力を出すべきだ。謎すぎる。
まあ、この後、王国を出奔した。
今は他国の辺境の開拓村で勇者の力をふるっている。
「ウィンドウカッター!」
「「「「オオオオオオオーーーーー」」」
「すげー」
「岩が真っ二つだ」
時々、王国帰還要請が来ているが・・・
「勇者殿、大型魔物が出没しています・・我が王国は勇者保有国では無くなり威信が落ちました・・形だけでも・・・」
「だから、行かないって言っているだろう?俺はこの村を守るので忙しいの」
「王女殿下・・・と婚姻できるのですぞ」
「俺、村長の娘と結婚が決まったもの」
元勇者の俺は日々、幸せに暮らしましたとさ。
・・・・宮本武蔵も晩年、島原の乱に討伐軍として参加、原城からの投石で負傷して撤退をした。
また、落ち武者狩りではどのような武芸者でも農民が取り囲んで投石すれば討ち取られたと云う。
勇者阿久津が何故死なないのかと思ったのかは、現代日本が平和な世界が原因とは、フランツは思いもしなかった。
最後までお読み頂き有難うございました。




