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第十二話 戦う理由、気づかう理由(前編)

「それは、オペイクス様が二十代に入ったばかりの頃。私らに話してくださった時にオペイクス様は三十代前半だったろうから、そこから十年以上、遡った時代だ。

 オペイクス様は、まずご自分の出身地を簡単に説明したよ。ナクビーという町で、ここツッジャムからも、メレディーンからも遠い地方だとか。どちらかと言えば、西の隣国セレニアに近いんじゃないかねえ。

 オペイクス様は、そこの小貴族エクテ家の長男でね。貴族といっても、大して領地や資産も無く、地元ナクビーの領主に仕えることで生活していたそうだ。つまり、その領主がオペイクス様の最初の主君だったわけさ。

 もちろんオペイクス様は、その最初の主君についても説明した。ペレガミ家という貴族でね。まあ、あんたも聞いた事は無いと思うが、一応、蛇の紋章を持つことを王家から許されていたそうだよ。蛇の鎌首を大きく強調して描かれているんだが、その口先から細い舌が伸びて、舌先に鍵をぶら下げている。そんな紋章だったと」

「う、う〜ん」口をはさまないつもりだったのに、私は我慢できず唸ってしまう。

「何だい。気になるかい?」とセピイおばさんはムッとするどころか、むしろ少しニヤリとする。

「気になる。それって、鍵を取ろうと手を伸ばしたら、ガブッてやられる、ていう意味じゃないの?」

「だろうね。戦の時なんかは盾や旗で、それを敵に見せつけようって段取りさ。オペイクス様が、そう解説してくださった。『紋章の中の蛇は毒を持っているはずだ』とも。

 ともかくペレガミ家は、このヨランドラで蛇を紋章にしていたんだ。当然、ヨランドラ王家の遠縁にあたるとか、噂はいろいろあったみたいだよ。でも結局は、オペイクス様も正確なことは分からなかった。その領主が明言しなかったんでね。そのくせ、噂も放ったらかし、と。私は聞きながら、ちょっと、きな臭い気がしたよ。

 オペイクス様も、おっしゃったねえ。『自分を含め、下々に対する当たりがキツい気がした』と。オペイクス様は他人の陰口を言いふらすような方じゃないから、だいぶ加減して話しておられたんだろうが。

 後でシルヴィアさんと推測をしたもんさ。周りに威張り散らして、人使いが荒い、田舎の典型的な小領主に違いない、とね。そんな奴が蛇の紋章を許されるんだ。その領主は図に乗るに決まっているよ。オペイクス様みたいな周りの人や領民たちは、たまったもんじゃなかったろう。

 でもオペイクス様は、こうも、おっしゃっるんだ。『こまごました不満が無かったわけではないが、とりあえず忠誠心を持ってお仕えしようと努めた』と。『相手は領主様。自分たち領民があるのは、この方のおかげなんだ。そういう認識でいた』と。

 ちなみに、ペレガミ家は蛇の紋章は許されたが、城を任されるほどではなかった。まあ、それでも大きめの屋敷を構えて、ナクビーの町と周辺の村々を睥睨していたんだろう。オペイクス様みたいにお仕えする者も多かったようだ」

 セピイおばさんは、ふーっと息をついた。私が口をはさんだわけでもないのに。

「やがてオペイクス様も、女を意識するようになった。二十代のはじめなら充分、年頃だからね。ペレガミ家の屋敷で働く女中の一人が、だんだん気になっていった、と。要するに、同僚だよ。パール・アビュークという名前で、物静かな、大人しい女性だったそうだ。

 私は、オペイクス様がこのパールさんの名前を初めて口にした時の顔を・・・今でも忘れられないよ。言った直後にオペイクス様は泣き笑いのような顔で、言葉を途切らせてしまったんだ。好きだった人の名を、せっかく言えたのにね。

 オペイクス様は、こう、おっしゃった。

『私は、つくづく卑屈で見苦しい男でね。自分でも、色男には程遠い、と分かっているつもりだ。認めるよ。私は、オーカー君たちが心底、羨ましい』

 そこでイリーデが口をはさもうとしたが、オペイクス様は静かに制して、話を続けた。

『だから私は、心のどこかで勝手に期待していたんだろう。優しいパールなら、私のような男でも、まともに接してくれるんじゃないか、と。つまり、自分に都合のいい解釈をしていたんだ。

 勇気を奮って、私はパールに話しかけるようにしたよ。とは言っても、今でも話が下手な私だ。面白くて楽しい話なんて、できやしない。何とか失敗談を探し出して、大げさに披露するのが精一杯だった。

 パールは・・・辛抱強く聞いてくれたなあ。ウケた、とはお世辞にも言えないが、いつも微笑んでくれて。今にして思えば、憐れみの笑みだったんだろうけどね。

 彼女の優しさに甘えて、私の身勝手な期待は膨らんでいった。自分を止められなかった。それで私なりに考えたよ。まずは、領主様に断りを入れようと。領主様の女中であるパールを好きになった。本人が良ければ、正式に妻として迎えたい。そう申し出ようと。

 私は意を決して、パールへの想いを領主様に告白した。すると領主様は一瞬、ほんの一瞬だけ顔をしかめた。まるで、針か何かで脇腹でも刺されたみたいに。

 しかし領主様は私を咎めなかった。むしろ応援しよう、とまで言ってくださったよ』

 オペイクス様はそんなふうに話しながら、当時を思い出すのか、遠くの空を見たねえ。西の空だ。だいぶ赤く染まっていた」

 セピイおばさんは、また息をついた。


 セピイおばさんを通して、オペイクスの話は続く。

 オペイクスは、領主の了承を得た事で背中を押された気になり、以前よりもパールと気軽に話せるようになったそうだ。地元の収穫祭なんかにも頻繁に誘って、一緒に過ごす時間を増やしたらしい。

 私も聞いていて、順調だと思った。オペイクスも自信がついたんだろう。ある時、人影のほとんど無い木陰にパールを誘って、ついに結婚を申し込んだ。

 パールは、すぐに返事をしなかった。寂しげに微笑んで、やっと口を開くと、こんな事を言ったのだ。

『とても、ありがたいお言葉です。私からお願いしたいくらいです。できることなら。

 でもオペイクス様。私は平民の女ですよ。家族と早く死に別れて、身寄りの無いところを、こちらペレガミ家の領主様に拾っていただいたんです。それだけの女なんです。何も持っていないのですよ。

 逆に、あなた様は貴族であり、騎士として修行中の身。ご家族が、あなた様と、あなた様の将来の奥様をお待ちしているはず。ちゃんと貴族の出身であり、あなた様の家柄に見合ったお嫁さんをお待ちしているはずです。

 私では、あなた様にふさわしくありません』

 オペイクスは『身分なんか関係ない』と必死で反論した。『自分の家も捨てれば、自分も平民になれる』とまで言ったようだ。

 しかし。パールは首を横に振った。『自分は、あなた様にふさわしくない』と。

 パールは、だいぶ迷ったようだが、オペイクスに、こう尋ねた。

『オペイクス様は、女を知っていますか。女を抱いた事がありますか』

 オペイクスは言葉に詰まった。当時のオペイクスは、まだ女を経験していなかったのである。その事で周囲から笑われている事にも気づいていた。

 おばさんの話を聞いていて、私はカーキフを思い出した。

 とは言え、パールは自分を笑おうとして尋ねたわけではなさそうだ。オペイクスは、そう判断したらしい。なぜなら、パールの笑みは何とも寂しげで、他人を笑う類には見えなかったのだ。

『私は・・・男を知っているんです。生娘ではないんです。だから、あなた様に、ふさわしくありません』そう言って、パールは弱々しく首を横に振る。

 オペイクスは動揺しながらも、必死に考えてパールに聞き返した。『相手の男を、まだ想っているのですか。まだ、その男との関係が続いているのですか』と。

 パールは、それにも首を横に振る。

『だったら』とオペイクスは声が大きくなってしまう。

『だったら、気にしないでください。私の家も、過去の事も。

 私は改めて、あなたに結婚を申し込みます』

 それでも、やはりパールは首を横に振るだけだった。

 オペイクスは、その後パールを領主の屋敷まで送ってやり、自分は郊外の家に帰った。

 そして翌日から、また二人とも領主の屋敷で働く生活に戻った。

 気まずかったが、できるだけ、これまで通りに接しようと、お互いに努めたのだろう。私は、セピイおばさんから聞くオペイクスの説明で、そう推測した。いくら若かったとは言え、自分を拒んだからと相手を恨むようなオペイクスでもないと思う。ぎこちなくても、世間話を試みるオペイクスと、それに応えるパール。会話は途切れがちになっても、お互いを悪く思ったりせず、微笑みを返し合ったりしたんじゃなかろうか。私が、この推測をセピイおばさんに話すと、おばさんも同意してくれた。

 そして、おばさんは、また息をつくのだ。すぐには話を続けない。葡萄酒で口を湿らせようか迷っている。私は勧めてみたが、セピイおばさんは首を横に振った。まるでパールみたい、と私は思ったが、おばさん自身は気づいているのだろうか。

 私が疑問を感じていると、おばさんは口を開いた。

「それから、しばらくして。オペイクス様は、結婚を申し込んで一ヶ月後くらいじゃないか、とおっしゃっていたが。今度はパールが、オペイクス様を散歩に誘ったそうだ。

 パールの方からなんて珍しいと思いながら、オペイクス様は言われるままに一緒に歩いた。領主の屋敷から少し離れた位置の林に入って、物置代わりに使っている小屋のそばまで来た。

 パールは例によって寂しげな笑みを見せて、オペイクス様に尋ねた。『まだ私を妻として望んでいますか』と。オペイクス様は『もちろん』と即答した。しかし。やっぱり、パールは首を横に振ったらしい。

 パールは言ったそうだ。『お気持ちはありがたいのですが、やはり私ではオペイクス様の妻にふさわしくない』と。『私のことは忘れて、どうか、ちゃんとした貴族の娘を妻として迎えてください。その方が、あなたの一族、エクテ家のためになるでしょう。主君であるペレガミ家に、縁組を斡旋してもらってください』とね。

 そして。そしてパールは言ったんだ。『私なんかは、あなた様の練習台にしてください。私は、あなたのお嫁さんにはなれませんが、練習台にはなれます』と」

 セピイおばさんは、そこで話を中断した。で、私は気づく。これは、私に口をはさめってことなんだ。私の反応、意見を、おばさんは求めている。

「れ、練習台って、たしかベイジもカーキフに言っていたわね」私は思ったことを正直に言ってみる。

「そう。全く同じ台詞だよ。

 若き日のオペイクス様は、どう考えたらいいか分からず、頭が混乱して、答えられなかったそうだ。

 オペイクス様と来たら、馬鹿正直と言うか、自虐的と言うか。私らに『軽蔑してくれ』なんて頼むんだよ。なぜってオペイクス様は、まず最初の一瞬に、パールと抱き合うことを考えてしまった、と。『彼女を裸にして、初めて女を経験できるんだ、と心が浮き立ってしまった』と言うんだよ。言わなきゃ、誰にも気づかれないのに。

 だが、次の瞬間には、パールに対して怒りもわいたそうだ。ほんの少しだが、明らかに怒りが。当時、周囲の者たちはオペイクス様の経験の無さを嘲笑っていた。時に回りくどく、時に露骨に、オペイクス様を童貞だと馬鹿にしていた。パールも結局、そいつらと同じで、自分を笑う側なのでは。練習台とか言って、本当は自分をからかっているだけでは。そんなふうに疑ってしまったのさ。

 しかしオペイクス様はパールへの想いから、それらの怒り、疑いを急いで無視した。そんなはずはない。いや、たとえ、そうだったとしても、彼女を恨むまい。心の中で自分に、そう言い聞かせたそうだ。

 そうやって、いろんな感情に捕らわれていたら、オペイクス様も返事なんか、なかなかできないよ。

 すると、パールが言った『私は、練習台にもなれないのですか』とね。

 その悲しげな表情を見て、オペイクス様は思わず、パールを小屋の中に連れ込んでしまったとさ」

 セピイおばさんの話が、また途切れる。私が口をはさんだわけではない。二人そろって、ため息をついてしまう。私は考えてしまう。普通なら浮ついた話の展開で、私もおばさんも赤面しているはずなのに。

 今回は、顔が赤くなるどころか、なぜか、少し寒くなった気がする。

「小屋の中でパールと目が合ったオペイクス様は、慌てて謝ったそうだ。彼女の肩を掴んでいた手も離して。

 パールは何も言わずに、静かに服を脱ぎ始めた。オペイクス様はそれを止めるつもりで手を伸ばしたが、彼女と目が合うと、動けなくなった。気がつくと、パールは裸で立っていて。オペイクス様は慌てて、自分も服を脱いで裸になったそうだよ。『何だか、女が先に裸になるようにするなんて、男として卑怯と言うか、悪い気がした』とさ。

 小屋の中には、藁とか、荷車に掛ける粗布とかが山積みになっていた。荷車は小屋の外。パールは黙ってオペイクス様の手を引きながら、粗布の束の上に腰を下ろし、背を倒した。それに引っぱられる形で、オペイクス様はパールに覆い被さりそうになった。

 そこでオペイクス様は、ためらった、と。そのまま大柄な自分がのしかかるようでは、パールを押しつぶしてしまうのではないか。心配したオペイクス様は、自分の体を浮かせるようにして、パールと唇を重ねた。

 するとパールはオペイクス様の手を取って、自分の乳房を触らせたり、両腕でオペイクス様の頭を抱え込むようにして、胸元に引き寄せたりした。パールはオペイクス様に言ったそうだ。『もっと体を乗せていいのですよ』と。

 オペイクス様は言われた通りに自分の体を下ろそうとしたんだが、パールの体と触れ合ったところで、やっぱり怖くなった。で『パールを抱え上げて、自分が下になった』と。自分の胸板に彼女の顔を埋めさせて、髪を撫でて。

 パールは、その位置から這い上がってきて、オペイクス様の唇に自分の唇を合わせた」

 セピイおばさんは、またしても中断してしまう。息をつく。

「オペイクス様は、おっしゃったねえ。『スケベ心から、パールと肌を合わせているという状況に、天にも登る気持ちだった』と。『そのくせ、パールが痛がったり、嫌がったりしないか、怖くて仕方なかった』ともね。『自分と触れ合うことで、自分が好きになった相手が嫌な思いをするかもしれない。そんな可能性が少しでもあると思うと、怖ろしくて、怖ろしくて、たまらなかった』と、おっしゃったよ。

 でも、とにかく二人は契ったんだ。上になったパールがオペイクス様のあそこを自分の中に導いて。ただ、オペイクス様はパールを抱きしめながら、最後の直前にあそこを引き抜こうとした。まだパールが妊娠しないように、と考えたんだ。しかしパールはオペイクス様の胸板に顔を擦り付けるように、首を横に振ったそうだ。『そのままでいいんです』と。で、オペイクス様はパールの中に精を放った。オペイクス様は・・・『放ってしまった』という表現をしたよ」

 で、セピイおばさんは、また沈黙する。ほんの数秒なのに、すごく長い気がする。息が詰まるような。おばさんは男女の交わりの場面を外孫の私に語っているのに、全く赤面していない。じゃなくて青ざめている?

「オペイクス様は、しばらくパールを乗せたまま、抱きしめ、髪を撫でていた。そして考えていたそうだ。好きになった女性が自分の精を受け入れてくれた。これは、自分の子を産んでくれるという意思表示か。しかしパールは練習台と言っていた。あるいは、抱き合っているうちに気持ちが変わったのか。オペイクスの妻になってもいい、という気になってくれたのか。期待したい。しかし期待していいのか。

 そうやってオペイクス様が迷っていたら、だよ」

 セピイおばさんは急に顔を背けて、暗がりの方に顔を向けた。と思ったら、また私と向かい合って、しかし額に手を当てたり、頭を抱え込んだり。

 私は、おばさんに声をかけてあげたいと思うのに、声が出ない。

「突然、小屋の壁が倒れた。オペイクス様たち二人の両側の壁が無くなったんだ。そこから男どもが入ってきた。壁は、そいつらが引き倒したんだよ。領主ペレガミと、部下の兵士が三人。オペイクス様たちの左右に二人ずつ駆け寄ると、二人を見下ろし、指差してゲラゲラ笑い出した。

『おめでとう、オペイクス君。ついに童貞、卒業だなっ』

 そう叫んだのは、領主ペレガミだ。オペイクス様が言うには、笑った口が耳元まで届きそうに裂けて見えたとか。

 オペイクス様は事態が理解できなかったが、とにかくパールを、脱いだ服や粗布で覆い隠そうとした。しかし、その手を兵士たちが掴んで、動きを封じる。

 その兵士たちが言った。『領主様に感謝しろよ、オペイクス。パールちゃんを貸してくださったんだからなあ』

 オペイクス様は、この言葉の意味が理解できなかった。『か、貸す、とは、どういうことですかっ』と領主ペレガミに、必死に問いただした。

 ペレガミはオペイクス様に答えず、パールの手を取って立ち上がらせ、その全身を上から下まで、じっくり鑑賞した。パールは顔を背け、目を閉じて、その視線に耐える。

 別の兵士が領主ペレガミの代わりに答えた。『だから領主様は、お前に貸してくださったんだよ。妾の一人であるパールちゃんをよ』

 答えながら、兵士たちはオペイクス様を粗布の束から引きずり下ろした」

「め、妾って、またあ?」私は、つい声を上げてしまった。

「そう、まただよ。モラハルトと同じ。ペレガミも女中の何人かを妾にしていたのさ。

 裸のオペイクス様は引きずられて、パールから引き離された。大柄なオペイクス様も、不意打ちで腕を捩じ上げられて、抵抗できない。それどころか、後ろ手に縛られて、土の床に転がされた。

 その上で、さっきは答えなかった領主ペレガミが言うんだ。

『パールを大事に扱ってくれたなあ。褒めてやるぞ、オペイクス。しかし、これでは、お世話にも床上手とは言えん。まあ、初めてで仕方ないかもしれんが、見ていて笑いをこらえるのが大変だったぞ』

 これに合わせて、兵士たちが大笑いする。『まったく、俺だってパールちゃんを使いたいのに。お前と来たら、羨ましいどころか、見てられなかったぜ』とか言って。

 領主ペレガミは、それには即答した。『まあ、お前たちにも貸してやるから、待っておれ。その前に私が直々に手本を見せてやろう』

 言ったと思ったら、ペレガミはパールを粗布の束の上に押し倒した」

 セピイおばさんは、そこまで話したものの、続かなかった。私の目を見ず、視線を下げて、呼吸を荒くして。

「ペレガミは・・・パールを犯した。オペイクス様の目の前で。

 オペイクス様は、もがきまくって、叫びまくったそうだ。『やめてください』と。『パールを乱暴に扱わないでください』と。必死に、必死に止めようとしたんだよ、オペイクス様は。

 でも、そんなオペイクス様を、ペレガミも兵士たちも嘲笑って。終いには、うるさいだの、鬱陶しいだの罵って、殴る蹴る、したい放題に痛めつけた。

 しかも領主ペレガミは自分が済むと、兵士たちと交代したんだ。兵士たちは、かわるがわるパールを好き勝手に弄んだ。嘆き叫ぶオペイクス様を笑いながら。

 多分、連中は・・・とても口では言えないような酷い扱いも、パールにしたんじゃないかねえ。オペイクス様は連中の悪行のすべてを、私らに話していないだろう、と私は推測した。もちろん、オペイクス様にそれを確認したり、しなかったよ。オペイクス様が言いたくないなら、その気持ちを尊重するまで。

 とにかく、目を背けたくなるような悪夢の時間が過ぎた。オペイクス様は、永遠かと思うほど長く感じた、とおっしゃったよ。

 兵士三人ともが満足すると、領主ペレガミは兵士たちにオペイクス様の縄を解かせた。すかさずオペイクス様はペレガミに飛びかかろうとしたが、その時には兵士たちが剣の切っ先を突きつけていた。

 それでもオペイクス様は、それらの切っ先を払い除けるようにして、パールに駆け寄った。散々袋叩きにされて、オペイクス様も思うように走れなかったが、とにかくパールのそばに行った。パールは・・・男どもに何度ものし掛かられて、ぐったりしていた。黙って、目を閉じて泣いていた。そもそもパールは、男どもに犯される間、一言も発しなかったそうだ。

 こういう状況をね・・・オペイクス様は何度も何度も言葉に詰まりながら、話すんだ。もちろん泣いていたよ。ぼろぼろに泣いて・・・痛々しかった」

 セピイおばさんも、そこまで話して、先が続かなくなった。膝の上で服の裾を固く握りしめている。

 私は、その手を包もうと、自分の手を重ねた。そこに涙が落ちてきた。セピイおばさんの涙。私も泣いた。許せない、と思った。許せるもんかっ。

「オペイクス様は、パールにしてあげられることを必死に考えたそうだ。でも、なかなか思いつかなくて、とにかく、まずパールの体を隠してあげようと思ったそうだ。パールの服をかき集め、粗布を掛けてやり・・・

 そんな間も、人でなしどもは、ずっと笑っているわけさ。で、領主ペレガミが極めつけに、こう言った。『オペイクス。もう一回、練習したかったら、していいぞ。その後で、パールをちゃんと返せよ』

 で、人でなしどもは去っていった。

 オペイクス様は必死に考えた。これから、どうするべきなのか。パールを助けたい。でも、どうしたらいいのか、分からない。パールに声をかけたいが、彼女に返事する体力があるのかも分からない。ぐったりしている彼女を抱え上げたいが、痛がったりしないか、判断がつかなかったそうだ。

 しかし迷っている場合じゃないだろ。時間がどんどん過ぎて、日が暮れかかっている。意を決して、オペイクス様はパールを少しずつ起こし、服を着せてやった。そして、パールが休める場所に移動しようと考えた。

 そこでオペイクス様は愕然としたそうだ。パールには・・・帰る家が無かったんだよ。身寄りが無い、と本人が言っていた。彼女は領主ペレガミの屋敷に、女中として住み込みで働いていたんだ。つまり、彼女の帰る先は、ペレガミの屋敷だけ。そう思い至ったオペイクス様は、膝から崩れ落ちて、しばらく立ち上がれなかった、と」

「そんなっ」私は叫んでしまったが、続かなかった。

「オペイクス様は『自分が馬鹿だった』と自嘲していたよ。泣きながら。『冷静に考えれば、教会堂に駆け込むとか思いついたはずだ』って、おっしゃるんだ。

 でも、話を聞いていたシルヴィアさんは、その考えを否定したね。事件のあった小屋を含む林はペレガミ家の屋敷から少し離れているだけ、という話だったろ。林に近い教会堂を探しても、それは屋敷にも近いってことだ。屋敷の近くに教会堂があったとしたら、まずペレガミ家の息がかかっているよ。ペレガミ家になびかないような姿勢の教会堂なら、近くには無いはず。私らがオペイクス様に教会堂の位置を思い出してもらうと・・・やはり屋敷から遠いとは言いがたい、と。

 だから、そういうこと。教会も大して頼りにならなかったに違いないのさ。私らは、そういう理屈でオペイクス様を慰めたかったんだが。

 ・・・オペイクス様は弱々しく首を横に振るばかりでねえ」

 セピイおばさんの話が、また途切れる。先が言いにくいというより、内容が重すぎて疲れたような。

「おばさん」と私は声をかけた。でも続きを催促したいわけではない。パールが救われてほしい。オペイクスも自分を責めないでほしい。そんな気持ちを言葉にしたいのに。なぜか、声が続かない。

「オペイクス様は何とか立ち上がると、とにかくパールを小屋の外に連れ出そうと思ったそうだ。彼女が酷い目に遭った現場から、まず離れようと。

 するとパールが、やっと声を発してくれたそうだ。『オペイクス様、服を召してください』と。とても遅い口調で、小さな声だったそうだよ。

 その言葉で、オペイクス様は自分が裸だった事を思い出した。で、腰の周りだけ隠して、すぐにでも歩き出そうとした。そのために、パールにどこか行くあては無いか、改めて尋ねた。

 パールは、力の入っていない、か細い声で答えたらしい。『女中部屋で休みます』と。分かるだろ。ペレガミ家の屋敷の女中部屋だよ。

 オペイクス様は、また膝から崩れ落ちそうになるのを必死で踏ん張った。そりゃ、言いたいことは山ほどあるさ。でも、それをぶつける相手はパールじゃない。そんなことをしている場合じゃないんだ。パールが休みたいと言うなら、一分一秒でも早く、それを叶えてあげよう。今は、それに集中するべきだ。オペイクス様は、そう決心して、自分の太腿を叩いて喝を入れた。そして、やっと歩き出した。パールを支えながらね」

 セピイおばさんは息をついた。その隙間を埋めようというわけでもないが、私は強く言葉をはさんだ。「お、おばさん。私、悔しいっ」

 セピイおばさんは泣き濡れた目を、改めて私に向けた。

「私もだよ、プルーデンス。ペレガミの人でなしどもが憎くて憎くて仕方ないさ。

 でもね。ごめんよ、プルーデンス。オペイクス様とパールの苦難は、もうしばらく続くんだ」

 この言葉に、私は絶句した。か、神様はどこに居るの。何で二人を助けないの。そう叫んでしまうかと自分でも思ったのに、息が乱れるばかりで、声が出ない。

「オペイクス様とパールは、ペレガミ家の屋敷に向かって歩いたそうだ。ものすごく遅い足取りでね。

 二人とも、言葉は無かった。オペイクス様には、パールにかけてやりたい言葉が山ほどあったのに、だよ。

 しかし、オペイクス様は考え直したそうだ。酷い目に遭わされたパールに、それらの言葉が役に立つのか。返事だけでも、パールの体力を奪うのではないか。そう思うとオペイクス様には、パールに話しかけることがはばかられた。

 良いのか悪いのか、それで考える時間が、たっぷりできてしまった、とオペイクス様はおっしゃるんだよ。少しずつ近づいてくるペレガミ家の屋敷を睨みながら、ふと思ったそうだ。このままパールと駆け落ちするべきではないか。しかし良し悪し以前に、その体力が今の彼女には無いだろう。無理をさせたら、彼女を死に至らしめるのではないか。集中しろ。今は彼女に休息を与えるのだ。

 と、まあ、いろんな考えが浮かんでは消えていった、とオペイクス様はおっしゃって。

 そしたら、だ」

 セピイおばさんの目から、また涙がぼろぼろ、こぼれた。

「パールのか細い声が聞こえてきた、と。オペイクス様は、はじめ、それが聞き取れなくて、パールから発せられている事に気づかなかったそうだ。で、ハッとして、オペイクス様は聞き直した。

『ごめんなさい』

 パールは、そう言っていたんだ。オペイクス様は理解できなかった。なぜパールが謝るのか。辛い思いをしたのは、彼女だ。その彼女を助けられなかった自分こそ謝るべきで、彼女は謝罪を受ける側のはず。

 しかしパールは繰り返した。『騙して、ごめんなさい』と」

「な、何でっ」私は、やっと叫べた。

 セピイおばさんは答えた。

「私も理解できなかったよ。いや、一緒に聞いていたイリーデもブラウネンも、シルヴィアさんだって、理解できなかった。

 で、オペイクス様が説明した。

 当時のオペイクス様は混乱しながらも、慎重にパールに尋ねたそうだ。すると、パールは告白した。すべて、領主ペレガミが仕組んだことだ、と。つまり、ペレガミがオペイクスを辱めるために事前に計画して、段取りしたのさ」

「えっ」私は、まだ理解できない。

「ああ、混乱しているね。当然だよ。オペイクス様から話を聞いた私らも、頭が追いつかなかったんだ。そしてパールから聞かされた時のオペイクス様もね。

 しかし。パールはオペイクス様に言ったそうだ。『私は、あなた様が辱められることに、加担したのです』静かに、泣きながら、繰り返したそうだ」

 セピイおばさんの言葉が、また途切れる。私は、さっきから体の震えが止まらない。

「おばさん、それって。それって、パールは事前に、自分が犯されるのを分かっていたってこと?主人であるペレガミに命じられて、拒めなかったってことじゃないの?」

「そうだよ。これで理解できただろ。

 だからオペイクス様は、パールを非難しようなんて思いもしなかった。『そんなことをするようでは、文字通り、地獄行きだ』と頬を掻きむしっていたよ、私らに話しながら。

 やがて二人はペレガミ家の屋敷に着いた。オペイクス様はパールを裏口に連れていって、そこから他の女中を呼んだ。オペイクス様は、その女中に頼んだ。『とにかく騒がないでくれ。パールの体を拭いてやって、着替えさせ、寝かせてやってくれ。何も聞いてくれるな』と。

 その女中、ボジェナさんとかいう中年の女だったそうだが、オペイクス様の思いつめた目つきやパールの姿に驚きながらも、察してくれたんだろう。後でオペイクス様がパールから聞いた話だと、その通りにしてくれたらしい。パールはその女中ボジェナに連れて行かれる直前、振り返ってオペイクス様に言ったそうだ。

『オペイクス様も、どうか、お怪我の手当てをなさってください』

 オペイクス様は、また膝から崩れ落ちてそうになったが、必死にこらえたそうだ。そして、その気づかいに『ありがとう』と答えた」

 私は、私は、何と言ったらいいか、分からなくなった。悔しいとか、ペレガミが憎いとか、パールはこんなに優しいのにとか、言いたいことがあり過ぎる。それが喉につかえて出てこないような。自分でも訳も分からず、椅子の上で手足をばたつかせ、頭を抱える。

 セピイおばさんの手が、私の肩に置かれた。

「苦しいかい?プルーデンス。ごめんよ。私はとんでもない話を、あんたに聞かせているね。聞いているだけで苦しくなるような」

 私は急いで顔を上げて、おばさんと目を合わせた。苦しいのは事実だが、おばさんに謝らせたくない。おばさんが謝ることじゃないっ。

「聞きますっ。おばさん、聞かせてください。おばさんもオペイクスに頼んだんでしょ?聞くべきこと、知るべきことと思って、オペイクスに頼んだんでしょ?」

 セピイおばさんは頬を濡らしたまま、微笑んだ。

「ああ、その通りだよ。私ら四人は、改めてオペイクス様にお願いしたんだ。オペイクス様は頬を掻きむしったり、拳を胸壁に打ちつけたりして、そりゃあもう、苦しかっただろうに。それなのに、私らはお願いしたんだ。『どうか、続きを聞かせてください』と。

 ブラウネンなんか土下座せんばかりに泣いて言ったよ。『これまでの無礼を謝ります。心を入れ替えて、お聞きしますので。どうか、どうか、お願いします』とか舌がよく回っていなかったっけ。

 ブラウネンとイリーデが後で言うには、オペイクス様に話を続けさせるべきか、迷ったそうだ。話をやめさせた方が、苦しむオペイクス様のためじゃないか、と。なのに、私とシルヴィアさんは話させようとする。これは、オペイクス様に辛い記憶を吐き出させて、すっきりさせようという狙いなのか。半信半疑だったが、二人は、私らに合わせてみようと考えてくれたらしい。

 大柄なオペイクス様が自分自身を傷つけるのを止めるのは、なかなか大変だったねえ。しかし私らの声が届いたのか、ふっと止んだよ。『ああ、取り乱したりして、すまない』とか我に返って。

 オペイクス様は話を再開してくださった。

 パールを女中に預けた後、どうやって自分のエクテ家に戻ったかを、オペイクス様は覚えていなかった。『気がつくと、家で、父親の隣りに、寝床を並べて伏せっていた』と。当時、オペイクス様のお父様は病で動けなかったんだ。オペイクス様の手当ては、お母様と弟さんがしてくれていた。

 オペイクス様は弟さんに確認した。『自分が道に倒れて、気を失ったところを誰かが運んでくれたのか』と。しかし、この予想は外れた。弟さんが言うには、傷ついたオペイクス様は、黙って玄関口に立っていたそうだ。

 逆にお父様が体を起こして、オペイクス様に問うた。『何があったのか』と。

 オペイクス様は、しばらく考えて、やっと答えたそうだ。『領主様のご勘気をこうむって、折檻を受けた』と。それ以上のことを、オペイクス様は家族に話さなかった」

 セピイおばさんは深く、深く息をついた。

「ごめんなさい、おばさん。疲れさせて」

 私は、やっとこさ言ったが、おばさんは首を横に振った。

「いいんだよ。それより聞いておくれ。

 オペイクス様は翌日の夕方、ペレガミ家の屋敷に向かった。事件から、ちょうど丸一日だよ。もちろん、ご家族は止めようとした。でもオペイクス様は、居ても立っても居られなかった。横になっても眠れたもんじゃない。パールが心配で、心配でたまらないんだ。オペイクス様は剣に手をかけて、泣きながら家族に訴えた。『頼むから、行かせてくれ。何も聞かずに、とにかく行かせてくれ』と。

 オペイクス様は弟さんに同行することも許さず、全然治っていない体を引きずるように、一人でペレガミ家の屋敷に入った。

 敷地内では、前日の兵士をはじめ、男どもがオペイクス様を笑ったよ。『早速、パールを借りに来たか』とか冷やかして。

 悔しいのは山々だが、オペイクス様は領主ペレガミに会う方を優先した。そして、その書斎に入った。許可も無しに押しかけたオペイクス様を領主ペレガミは、にやけ顔で迎えたそうだよ。

 オペイクス様は、まず謝った。知らなかったとは言え、ペレガミの妾であるパールに想いを寄せたことを謝ったんだ。そして『パールを大事にしてください』と頼んだ。それこそ、床に両手をついて、額も擦りつけるまでしてね。

 領主ペレガミは、すぐに返事をしなかった。オペイクス様が気になって顔を上げると、まだ、にやけたまま。それで、オペイクス様に言ったそうだ。

『お前がパールと寝た事については、謝らなくていいぞ。いわゆる、同意の上、というやつだ。

 しかし、お前が本来、私に謝るべきなのは、今のその態度よ。むしろ、その態度こそ謝れ。分からぬか。今、お前は私に対して何をしている。そう、意見している。私に説教をしているのだ。あろう事か、家来の分際でありながら、主人である私に。しかも妾を貸してもらっておきながら』

 オペイクス様は、もう一度、頭を下げて、喰い下がった。

『気を悪くさせたのなら、謝ります。ですが、ですが私は、あなたに説教したいのではありません。お願いしているのです』

 これに領主ペレガミは、こう答えた。『それを口答えと言うのだ。そういう態度を改めよ』

 そしてオペイクス様の顎を蹴り上げた。オペイクス様は口の中が切れて、血を吐いたよ。

 領主ペレガミは、さらに言った。『もう失せろ。お前ごときの相手をしているほど、私は暇ではない。態度を改める気になるまで、顔を見せるな』

 で、床に転がるオペイクス様を放ったらかして、ペレガミは書斎を出て行った。

 オペイクス様は這いずるようにして、体を起こした。そして立ち上がると、パールの様子を確かめるべく、女中部屋へ向かった。幸い、その途中で、パールの介抱を頼んだ、中年女中のボジェナさんに会えたよ。

 ボジェナさんが言うには、パールは午前中まで寝込んでいた、と。それから洗い物などの仕事を少し手伝ったが、きつそうだったので、他の女中たちが休み休み仕事をするように忠告したとか。オペイクス様が女中部屋の扉の前まで来た時には、パールは横になっていた。

 オペイクス様はパールに声をかけるべきか迷って、結局しなかったそうだ。夕方の薄暗い部屋で、彼女の様子は、よく見えなかった。

 オペイクス様は改めて、そのボジェナさんにパールへの気づかいを頼んだよ。ボジェナさんも承知しながら、オペイクス様に『あなた様もしっかり静養してください』と返した。

 その日は、オペイクス様も大人しく引き上げるしかなかった。領主ペレガミに報復したくても、体が痛んで、使いものにならなかったからね。

 家に戻ったら、オペイクス様は寝込んでしまったらしい。それまで睡眠をまともに取れず、疲労も極限に達して、気を失ってしまったんだろう」

「そのボジェナさんって人が居てくれた事が、せめてもの救いね」私は口調が、のろくなっていた。

「まったくだよ。パールが事件をどこまで話したかは分からないが、同じ女の身だ。察してくれたと思うよ」

「お、おばさん。誰か他に、二人に味方してくれる人は居ないの?神様は何をしているの」

 思わず問い詰めてしまったが、セピイおばさんは私の手を取って、さすってくれた。

「お味方が来るのも、神様が重い腰を上げるのも、なかなか時間がかかったようでね。

 とにかくオペイクス様は自分の体を治す事に専念した。まず、体力を回復させようと。それをしないことには、領主ペレガミへの報復も何もできないだろ。パールを奴の屋敷に残して、気が気じゃなかったが、仕方ないよ。たとえ、パールがまた酷い目に遭わされている可能性があっても、だ。焦って屋敷に押し掛けても、同じ失敗の繰り返し。それじゃ、パールを助けられないからね。

 しばらくして何とか体を動かせるようになったオペイクス様は、剣を持って、林に入った。ペレガミ家の屋敷とは反対方向の、別の林だよ。分かるだろ。オペイクス様は誰にも見られないように、一人で剣の稽古をしたのさ。

 オペイクス様は剣を振り回しながら、いろんなことを考えた。その地域でペレガミ家に匹敵するような権勢を持っていて、自分とパールに味方してくれそうな存在。貴族でも、司教などの僧侶でもいい。しかし。オペイクス様には思いつかなかったそうだ。ペレガミ家と並ぶ、あるいは上回るような貴族も、居ないわけではなかった。だが、おめでたいもんで、そういうお偉方は必ずと言っていいほど、ペレガミ家と親交があったんだよ」

「自分より強い相手には、まめに取り入っていたんだわ、ペレガミは」

 私は、ツバを吐きかけてやりたい気分になった。

「どうも、その通りだったらしい。

 なら、オペイクス様は、自分と似たような小貴族を集めて、ペレガミ家に反旗をひるがえすか。これも、だめだ。自分に協力してくれるよう、説得して回るのに時間がかかる。その分、パールを助けるのが遅れるだろ。途中でペレガミ家に勘づかれる危険もある。

 オペイクス様は迷った。そして焦った。一刻も早く、パールを救い出したい、と。

 そうやって、林での剣の稽古を三日ほど続けた後だ。オペイクス様は、何もつかめていない気持ちになりながら、自分の家に戻っていると、近所が何やら騒がしくなっていた。

 ナクビーの路地という路地から平民たちが飛び出してきて、怒鳴り合いながら一方向に駆け出していたんだ。大人、特に男が多く、みんな必ず、手に道具を持っていた。大鎌にピッチフォーク、脱穀に使う唐棹、薪割り用の手斧、などなど。オペイクス様が平民たちを目で追うと、全員、血走った目でペレガミ家の屋敷を睨んでいる。『もう我慢ならねえ』『ぶっ殺してやるっ』『領主を捕まえろっ』とか口々に叫んで。

 オペイクス様はハッとして、家に戻らずに、それらの平民たちを追って、ペレガミ家の屋敷に急いだ。

 分かるね、プルーデンス。反撃開始だよ」

 セピイおばさんは途端に、私の手を持ったまま、強く振った。

「おばさん」

 私も、おばさんの手を握り返した。


「オペイクス様はもちろん、話を聞いている私らも待たされたが、いよいよ援軍到来さ。そう、一揆だよ。ペレガミの人でなしめ、パール以外の人たちにも散々悪さして、恨みをしこたま買っていたんだ。

 オペイクス様がペレガミ家の屋敷にたどり着くと、すでに平民たちが四方八方から押し寄せていた。屋敷の周りは一応、堀で囲ってあったが、一揆勢には通用しなかった。彼らは戸板を堀に渡すなどして、何ヶ所も丸木塀に取り付いていたからね。

 その丸木塀の尖った上部分の向こうに、物見櫓が見えた。兵士たちがそこから弓矢で射掛けるが、油断したのか、一揆勢の多さに追いついていないよ。一揆勢も塀の死角に入って、矢をしのぐことを覚えていたそうだ。

 物見櫓の兵士たちの後ろで、領主ペレガミが文字通り、右往左往していた。

 オペイクス様は、この状況をありがたいと思いながらも、焦りも感じた。一揆勢は屋敷を包囲しているようで、しょせん素人集団だ。包囲網に必ず弱いところがある。領主ペレガミは、それを探して見回しているに違いない。オペイクス様自身も当時、若くて実戦経験が乏しかった。このままでは領主ペレガミに逃げられてしまう。逃げたペレガミは、付き合いのある貴族を頼り、助力を得て、戻ってくるだろう。そんな事態になっては、パールを救い出す機会は二度と得られない。今、ここで、何とかして領主ペレガミを捕まえなければ。

 幸い、櫓の上の者たちは、まだオペイクス様に気づいていなかった。オペイクス様も稽古着であって、紋章衣は着ていない。

 オペイクス様は、すぐ近くにいた平民たちに忍び寄って、言い含めた。

『私は領主の家来だったが、今から裏切る。君たちは武器で私とニ、三回やり合ったら、適当に騒ぎながら逃げてくれ。その上で私が領主を誘い出すから、そこを狙え。私を一緒に斬りつけてもいい』

 この説明を何回したか。時には、取っ組み合いをしているふりをしながら、耳打ちしたりしたとか。

 オペイクス様は焦っていたが、気の利いた平民もいたようで、他の仲間たちに伝えてくれたり、オペイクス様に目配せしてきたりする者も出てきた。何とも心強かった、とオペイクス様は、おっしゃっていたよ。

 で、オペイクス様は屋敷の正門前に移動して、作戦を実行した。殺到していた一揆勢には話がついているから、オペイクス様の剣撃を何回か受けると、怯えたり、脚をもつれさせて転んだりしながら、散っていく。オペイクス様は正門の前で、剣の切っ先を向けながら、一揆勢に怒鳴りつけた。『近寄れば斬るっ』と。

 続けて、オペイクス様は物見櫓のペレガミに向かって叫んだ。『今のうちです、領主様っ。ここは私が食い止めますので、急いでお通りくださいっ』

『でかしたぞ、オペイクス』途端に領主ペレガミは、嬉々として櫓を降りていったそうだ。

 数秒ほどすると、正門が開いて、騎乗したペレガミが真っ先に飛び出して来た。オペイクス様は一瞬、しまった、と思ったそうだ。馬で、あっという間に通り抜けられてしまう、と予想したんだ。だからオペイクス様は、馬に蹴られてでも立ち塞がるつもりで、両腕を広げた。

 と、ペレガミはオペイクス様の前で馬を止めるじゃないか。馬にオペイクス様を蹴らせるどころか、目を輝かせ、体を屈めて顔を近づける。そしてオペイクス様に言った。

『褒美にパールをくれてやろう。奥に隠れているから迎えに行くがよい』

 その最後の一音と同時に、オペイクス様は跳び上がって、左手でペレガミの下顎を鷲掴みにした。そして、そのまま引きずり下ろして、右手の剣で喉を掻いた。頸動脈が裂けたらしく、血が吹き出して、オペイクス様にもかかったそうだよ」

「やったあっ」私は思わず椅子から立ち上がった。両手も打ち合わせた。「ペレガミは馬鹿だわ」

「ああ、大馬鹿だよ。一揆勢の不意打ちとは言え、素人と舐めてかかっていたのか、鎖帷子も着ていなかったんだ。兵士たちも、だよ。

 オペイクス様は最初から首を狙っていたんだ。胸を一突き、と言いたいところだが、服の下に鎖帷子を着込んでいるかもしれないからね。剥き出しの頭や首が狙い目だ、と。

 もっとも鎖の頭巾をされたら、それも難しくなるよ。だが、やっと神様が加勢してくださったのか、ペレガミは頭巾どころか帽子も被っていなかったとさ」

 う、嬉しいっ。聞いていて全身に力が戻ってきた。偉いぞ、オペイクスっ。

「しかし喜ぶのは、まだ早いよ。オペイクス様は、すかさず領主ペレガミを一揆勢の方に蹴り飛ばした。

 もちろん一揆勢はペレガミに飛びかかったが、オペイクス様自身はそれに加われない。パールのためにもっと報復したいところだが、兵士たちがすぐに殺到して来たんだ。

 オペイクス様は前後左右、無我夢中で剣を振り回して、応戦したよ。オペイクス様も体を何ヵ所か斬りつけられたが、お返しに兵士の目を刺し、肩から斜めに斬り下ろしたりしたとか。

 領主ペレガミ以外に騎乗していたのは、二人。いずれもオペイクス様の背に槍を突き立てようとしたが、その前に一揆勢に取り囲まれ、引きずり下ろされていた。

 領主ペレガミの兵士たちは一人、また一人と倒れ、あるいは縛り上げられた。ペレガミ自身は首だけにされて、ピッチフォークの先に飾られたよ。一揆勢は、それを天に突き上げて、勝ち鬨を上げた。

 オペイクス様は『それを見上げて、少し呆けてしまった』とおっしゃっていたねえ。できることならパールが受けた以上の苦しみを、生きているペレガミに味あわせたかった。でも、もう、それはできない。その機会を奪ったのは一揆勢だ。しかし彼らを責めるわけにもいかないよ。彼らもまた、パールと同じくらい苦しめられていたんだろうからね。

 実際、オペイクス様に一揆勢の者たちが何人も駆け寄り、礼を言ったが、泣きながら抱きついてきた者も少なくなかったそうだ」

 セピイおばさんは、そこで息をついた。私も気持ちが下がってしまう。せっかく上がっていたのに。何もかも、ペレガミのせいだ。

「しかしオペイクス様は、いつまでも呆けたりできなかった。一揆勢が略奪を始めたんでね。

 まず、騎馬の後に続こうとした馬車が狙われた。

 御者が引きずり下ろされたが、こいつが剣を抜き払って、抵抗し出した。オペイクス様が駆けつけて応戦する。御者を務めていた、その男は、騎士だったよ。近隣の小貴族で、ペレガミ家に仕えていた。つまり、オペイクス様と同じ立場。元同僚として仲間意識が少しわきそうなものだが、先程までの戦闘で感情が昂ぶっているオペイクス様は、そいつの剣をはたき落とした。で、続けて斬りつける代わりに蹴飛ばす。転がったところを、一揆勢が取り囲んで、縛り上げた。

 その時には馬車の扉がこじ開けられて、中に居た女たちが引きずり出されていた。領主ペレガミの妻と娘だよ。オペイクス様は一揆勢に怒鳴った。『女子供には手を出すなっ。逃げたい奴は、逃しておけ』

 そしてペレガミの妻と娘の手を掴んでいた平民たちを睨みつけた。相手は慌てて手を離して、女たちを馬車の中に戻したよ。

 オペイクス様は続けて、馬車の後ろで一揆勢に捕まっていた使用人を引っぱってくると、御者を務めるよう命じた。で、馬車を敷地から出させる。

 その後はもう、元同僚も馬車も、意識から外した。パールに意識を集中するためだよ。急いで正門をくぐって、屋敷に駆け込んだ。そこでは一揆勢の略奪がすでに始まっていたから、オペイクス様はもう一度、叫んだ。『いいか。物は取ってもいいが、女子供に危害を加えるなよ。加えた者は、私が斬るっ』

 オペイクス様は一揆勢を睨み回した。一揆の平民たちは、オペイクス様の剣幕に怖れをなして飛びのいたり、陰に隠れたりした。が、中には、オペイクス様の命令を伝えて回る者も出てきた。

 オペイクス様は屋敷の中を歩き回りながら、パールを呼び続けたよ。すると平民の一人が駆け寄って来て、言った。『奥の部屋に女が何人か閉じこもっているようです』と。

 オペイクス様がそいつに案内してもらうと、そこは女中部屋だった。どうやら扉を家具などで塞いでいるらしい。オペイクス様はパールに呼びかけた。

『パールっ。私だ、オペイクスだ。どうか聞いてくれ。ペレガミ家の者は、もう居ない。一揆の者たちには、あなた方に危害を加えないよう言いつけている。どうか信用して、出てきてほしい』

 オペイクス様は『同じ呼びかけを四、五回繰り返した』とおっしゃったね。それで、やっと扉が少し開いて、中の女中たちがオペイクス様と目を合わせてくれた。

 女中たちが五人ほど、出てきた。やはりパールと、パールを介抱してくれた、例のボジェナさんも居たよ。オペイクス様と一揆の者、数名で、静かに彼女たちを屋敷の外、つまり中庭に連れ出した。

 オペイクス様は今度は、一揆勢に呼びかけた。『誰か、この女性たちの親族は居ないか』と。

 すると、何人かが飛び出してきた。四組の家族が再会を果たしたよ。おばさん女中のボジェナさんにも、旦那さんと息子さんらしき若者が迎えに来た。

 パールだけが残って、オペイクス様の隣で立ち尽くした。オペイクス様は彼女を座らせてあげたいと思い、屋敷の玄関口に椅子を置こうかと考えかけたが、やめた。パールから、屋敷をできるだけ遠ざけたい気分になったんだ。そこで、玄関口とは逆に門の近くに椅子を運んできて、パールを座らせた。周りをうろうろしている一揆勢の平民たちに飲み水とか、ちょっとした食べ物を提供してもらってね。

 パールは、それらを少しずつ口にした。そしてオペイクス様に礼を言ったそうだ。『助けてくださって、ありがとうございます』と。遅い口調で、静かに涙をこぼしながらね。

 その様子を見てオペイクス様は、やはりパールをしっかり休ませなければ、と思った。しかし、そのための場所が無い。そこでオペイクス様は、例のボジェナさんの家族に頼ろうかと考えた。

 パールにその提案をすると、彼女は首を横に振る。『あの人は、ボジェナさんは良くしてくれたから、これ以上、迷惑をかけられません』と」

 うーん。私は唸ってしまった。オペイクスとパールが再会できたのは嬉しいんだけど。その先を考えると、何が最善なのか、見当がつかない。二人で暮らせたらいいのに。

「オペイクス様も、おそらく唸ったんだろうね。でも意を決して言った。『自分の家に来ないか』と。『父が床に伏せっていて、狭い家だが、自分の家と思って、しっかり休んでほしい』とね。パールは泣き濡れた顔のままオペイクス様を見上げて、うなずいた。そして『お願いします』と答えた」


「よかったあ。これで一安心よね」私は椅子の背もたれに体を預けた。どっと疲れが出た。

「うーん、気持ちは分かるが、まだ後始末が残っているよ。

 オペイクス様は家族を話に出したことで、新たな問題に気づいた。この一揆のことを家族にどう話すか。自分の生家、エクテ家を今後どうするのか。病床のお父様には衝撃が大きすぎるかもしれない。ただ領主が死んだんじゃないんだ。息子であるオペイクス様が関わっているんだよ、ほぼ首謀者並みに、ね。

 合わせて、この一揆勢、平民たちをどうするのか。本人たちも一揆が成功したはいいが、今後の計画が立てられずに、ちらちらとオペイクス様の顔を覗き込む。やがて一人、二人と、首謀者らしき男たちが、そろそろと近づいて来た。

『き、騎士様。たしか、エクテ家のオペイクス様、ですよね?この度は、助太刀してくださって、誠にありがとうございます。騎士様は、わしら全員の恩人です。

 つきましては、わしらの領主になっていただけませんか』

 とか口々に言い出す。

 オペイクス様は、すっと手を上げて止めさせた。

 その頃には、パールや平民の奥さん方が、オペイクス様の背や肩の斬り傷を手当てしてくれてね。オペイクス様は、されるに任せていた。

 手当てしてもらいながら、オペイクス様は考えたそうだ。

 一揆を成功させて、領主に収まる。なんてことは、お伽話でしかあり得ない。近隣の貴族が本気で乗り込んできたら、自分なぞ、ひとたまりもないだろう。それより、そのような貴族と話をつけて、敵ではないことを認識してもらわないと。一刻も早く。

 ペレガミ家亡き後、ナクビーの町を含む、この地方で勢力を持つ貴族は。オペイクス様は頭の中で、ある貴族に目星をつけた。会った事は無い。しかし、パールを助けるために一度は助力を期待した相手。そしてペレガミとの関係を考慮して、一度は諦めた相手だった。その貴族が自分と一揆勢にどんな反応を示すかは、未知数だよ。それでも賭けるしかない。

 決意したオペイクス様は、一揆勢の首謀者らしい男たちに頼んだ。『みんなを近くに集めてくれ。そして話をさせてほしい』と。

 男たちは一揆の仲間たちに呼びかけ、大勢の平民たちがオペイクス様の前に座り込んだ。屋敷の中庭が狭く見えたそうだよ。

 オペイクス様は、まず一揆勢の平民たちに詫びた。このような一揆を起こすほど、平民たちが虐げられていた事を、今までよく知らなかった事。自分も領主ペレガミとその兵士たちに恨みがあったが、なかなか行動に移せなかった、勇気が無かった事。

 すると座り込んだ平民たちのあちこちから声が上がった。『謝ったりしないでください』『それより、俺らの領主になってくれよ』とかね。

 オペイクス様は、また軽く手を上げて、平民たちを制した。そして続けた。

『私は、あなた方の領主にはなれない。この辺り一帯は今、ペレガミ家が居なくなって、権力の空白地帯になったんだ。いずれ、周辺の名のある貴族たちが触手を伸ばしてくるだろう。その時、私のような貴族の端くれは、まともに相手にされないよ。

 それより私は、あなた方の首謀者になりたいと思う。実際に様々な事案を決定するのは、あなた方でいい。ただし表向きは、つまり、よそからやって来る貴族たちに対しては、このオペイクスが首謀者、ということにしてくれ。あなた方の意見や事情は、私が必ず伝えるから』

 平民たちは、そこまで聞くと、少しざわつき始めた。ニ、三人の男が挙手してから、オペイクス様に尋ねた。『それは一体、どういうことでしょう』『まだ、よく分からんのですが』

 で、オペイクス様は答えた。

『この周辺地域、この地方で一番、力のありそうな貴族は、ビナシス家だ。私は今回の首謀者として、ビナシス家に出頭しようと思う』

 途端に、平民たちは動揺して、互いにささやき合ったりして、ざわついた。すぐ隣にいたパールも、小声でオペイクス様に声をかけてきたらしい。オペイクス様は『大丈夫』と返して、また平民たちに顔を向けた。

『もちろん、あなた方が止むに止まれぬ事情で一揆を起こした事も、ビナシス家のご党首様に説明する。それでもお咎めがあるようなら、あなた方は、このオペイクスに剣で脅されて、仕方なく一揆を起こした、と言い張りなさい。誰に聞かれても、だ』

 オペイクス様が言い終わると、ざわめきが一層ひどくなった。一揆の平民たちも、パールもオペイクス様を心配したんだよ。『その心づかいが嬉しかった』とオペイクス様は、おっしゃっていた」

 う、うーん。私はまた唸った。後始末とは、こういうことか。一揆が成功してお仕舞い、どころか、こんなにも、あれこれ考えておかなければならないなんて。

「と、ところで、そのビナシス家って大丈夫なの?城下町で、名前を聞いたような、聞いてなかったような」

 私が正直に言うと、セピイおばさんは少し微笑んだ。

「多分、一回くらいは、あんたも耳にしているよ。ほら、私がポロニュースにそそのかされて、マーチリンド家の密偵をしていた時の話をしただろ。あの頃メレディーン城に出入りする貴族を見張っていて、ビナシス家にも出くわしたんだ。

 蛇の紋章ではないが、ビナシス家は大トカゲを掲げていてね。道具や図形ではなくて、生き物の紋章なんだから、このヨランドラを支える中堅どころの貴族だよ。ツッジャムやメレディーンほどの大きさじゃないが、コモドーンという城も持っている。勢力だけで言えば、屋敷を構えただけのペレガミ家よりも確実に上だ」

「でもペレガミ家は、そのビナシス家に擦り寄ると言うか、お付き合いも欠かさなかったんでしょう?」

「そう。だからオペイクス様も、内心は半々だと予想していたそうだ。だめだったら、被害は自分一人で最小限に。そう願ったのさ。

 そのくせ、心配してくれるパールや平民たちには、こう付け加えてね。『ビナシス家は長年ご領地を守って、領主を務めておられる。それだけ領民の信頼を得ているという事だ。だからビナシス家は、今回の一揆に理解を示してくださるに違いない』とか。

 パールも平民たちも、ビナシス家をよく知らなかったらしく、この理屈を受け入れるしかなかった。本当は、オペイクス様自身がビナシス家をほとんど名前ぐらいしか知らなかったんだがね」

 うーん。私は、また考えてしまう。

「ひどく悪い評判も聞かないけど、逆に良い評判も特に聞こえてこない。で、情報は、ペレガミ家も擦り寄っていただろうという噂だけ。期待したいけど、期待しすぎてはだめってところかしら」

 セピイおばさんは、今度こそ力強い笑みを見せた。

「正解だよ、プルーデンス。よく言った。

 シルヴィアさんも、あんたと同じような解釈をしていたっけ。

 それはともかく、一揆の話を続けるよ。

 オペイクス様は、平民たちが自分の説を受け入れて鎮まっていくのを確認して、安心した。

 と、今度は逆に、平民の男たちがオペイクス様に尋ねた『縛り上げた奴らは、どうしましょう』と。

 オペイクス様は改めて、彼らが指し示す方を見た。捕虜は六人。オペイクス様の元同僚だった騎士と、兵士たちだよ。その兵士たちの中には、あの時、林の小屋でパールを輪姦した奴も二人、混じっていた。

 平民たちは捕虜六人を小突いたりしながら、オペイクス様の前に連れて来た。

 領主ペレガミは首を落とされ、パールを汚した兵士の一人は一揆勢との戦闘で、すでに絶命していた。残り二人が縛られて、オペイクス様の前に居るんだよ。オペイクス様は当時の心境を、私らに、こう語った。『途端に、自分の心身が憎悪に染まるのが分かった』とね。

 しかもパールが、兵士たちの視線を避けようと、オペイクス様の後ろに隠れた。

 それに気づいた兵士の一人が縛られたまま、二人に絡んだ。『はっ。よかったな、オペイクス。やっと憧れのパールちゃんが手に入ったじゃねえか。でも、忘れんなよ。パールちゃんを一番喜ばせたのは俺だぜ。パールちゃんも、そう思うだろ。俺の』

 なんて、オペイクス様は、もちろん最後まで言わせなかったよ。顎を思い切り、蹴り上げてやったとさ」

「当然よ。そのまま、たっぷり痛めつけてやればいいんだわ」言いながら、私も拳を硬くしてしまう。

「ああ、オペイクス様は、そいつを散々踏みつけにしたそうだ。でも、一度パールのそばに戻って、彼女に小声で尋ねた。自分でも報復してみるか、と。パールは震えながらオペイクス様を見上げたが、答えられない。動揺して決められないんだよ。

 オペイクス様はパールに言った。『では、悪いけど、私が決めるよ。こいつは私がもらう。今から私がすることは、すべて私の責任だ』

 そしてパールをボジェナさんや平民の奥さん方に預けて、オペイクス様は槍を取りに行った。騎乗した兵士がオペイクス様に突き立てようとした時に、一揆勢が取り上げた槍だよ。それを平民たちから受け取ると、オペイクス様は全員を見回して言った。『私は今から、とても酷いことをする。だから女性や子供は、しばらく、よそを向いていなさい』

 そして問題の兵士を蹴り転がして、下履きをずり下げ、尻をむき出しにした。で、その肛門にズブリと突き刺したんだよ、槍を」

「えっ」私は言ったっきり、言葉が続かなかった。

「オペイクス様は、その槍を力任せに押し込んでいったそうだ。おそらく兵士の絶叫が辺りに響き渡っただろうよ。はじめは囃し立てていた平民たちも、すぐに静まり返った。

 オペイクス様は槍を押し続けて、その穂先が心臓あたりまで届いた頃か、兵士は絶命した。それでもオペイクス様は手を止めなかった。そのまま槍を押し続け、とうとう穂先が兵士の口まで突き抜けてきた。

 オペイクス様は、串刺しにした兵士を、その場に放り出したよ。そして残りの捕虜たちを振り返った。パールを嬲り者にした四人のうち、あと一人が残っている。

 そいつは、オペイクス様が近づくと、泣き出したそうだよ。そいつは泣きながら弁解した『領主様に脅されて、仕方なかったんだ』と。仕方なくパールに乱暴した、と大勢の前で言いかけたから、オペイクス様は蹴飛ばして黙らせた。で、平民たちが奪っていた、もう一本の槍で、やっぱり串刺しにしたのさ。

 オペイクス様が言うには、そいつはすでに平民たちに痛めつけられて、だいぶ出血していたそうだ。『串刺しにしなくても、三時間もすれば衰弱死していただろう』と。実際、別の捕虜の一人は、オペイクス様が報復をしている最中に事切れていた。『それでも』とオペイクス様は、おっしゃるんだ。『手が止まらなかった』と。『憎くて、憎くて、まだ飽き足りないくらいだった』とね」

 セピイおばさんはそこで話を区切って、私を見つめた。

「オペイクス様を残酷だと思うかい?」

 私は数秒、考えた。

「盗賊の脚と同じね。ちょっとやり過ぎかとも思ったけど、相手は、もう人じゃないんだし。人でなし。人の姿をした悪魔よ。パールがされた事を考えたら、オペイクスが『まだ報復が足りない』と言ったのも分かるわ」

「そうだね」とセピイおばさんは私から目をそらした。

「えっ、まさか、おばさんは残酷だと言いたいの?平民たちがオペイクスを残酷と見なした、とか?」

「そうじゃないよ。私だってオペイクス様の怒りは当然と思うし、ナクビーの平民たちもほぼ全員がオペイクス様に賛成だったろう。

 実際、オペイクス様が串刺しの兵士二人を、首無しペレガミのそばに転がしたら、結構な数の平民たちが駆け寄って来たそうだ。『自分たちも仕返しさせてくれ』とか言ってね。もちろんオペイクス様は、それを許可した。それどころか、先に自分だけ報復した事を謝ったらしい。それで平民たちは、遠慮なく串刺しの兵士二人を大鎌や手斧で切り刻んだ、とさ。

 おそらく彼らの奥さんや娘さんが、パールと似たような被害に遭っていたんだろう。話を聞いていた私ら四人とも、それくらいの予想はついた。だから私らも、オペイクス様に確認したりしなかったよ。

 それは、ともかく。オペイクス様は気づいたんだ。串刺しをする前と後では、平民たちの自分に対する目が明らかに変わってしまった事にね。自分を見る目に、明らかに恐怖の色がにじんでいた。それは、パールが自分を見る目も同じだったそうだ。オペイクス様は『その変化が胸にこたえた』とおっしゃっていたねえ。寂しそうに塔の床に視線を落として。

 だからと言って、平民たちやパールを責めるようなオペイクス様でもないよ。オペイクス様はできるだけ、そおっとパールに近づいた。串刺しにした兵士の返り血にまみれた状態でね。それで『怖がらせて、ごめん』と言うのが、やっとだったらしい」

 セピイおばさんは、顔を上げない。それどころか、葡萄酒に手を出そうと迷ったのか、かすかに首を横に振った。

 私は何も言えずにいる。

「と言うわけで、六人の捕虜のうち、二人が串刺しになって、一人がその間に勝手に死んでしまった。残るは、三人。

 オペイクス様は、そっとパールに尋ねた『この三人の中に、あなたに嫌な思いをさせた者はいますか』と。パールは黙って横に首を振ったんだが、オペイクス様には、その仕草が少し震えて見えた。やはり自分を怖がっているのか。あるいは残り三人をかばっているのか。

 気になるが、オペイクス様は、それ以上、聞けなかった。パールに問い質すなんて、できない。彼女が自分の意志で話し出すまで、無理に話させるなんて、したくないんだよ。

 そこでオペイクス様は、平民たちに同じ質問をした。途端に何人もの平民たちが挙手して、兵士二人の引き渡しを求めた。オペイクス様が許可すると、兵士二人は平民たちから袋叩きにされたそうだ。つまりは、それなりに恨みを買っていたってことだよ。

 さて、これで最後は、元同僚の騎士だ。縛られた騎士はオペイクス様と目が合うと、慌てて反論し出した。『ま、待て。私がどんな酷いことをしたと言うのか。私は領主様にお仕えしただけで、そこらの下衆な兵士たちとは違うぞ』

 この反論を受けて、オペイクス様は平民たちに尋ねた。『彼から、何か暴力を振るわれた事は?』

 平民たちは顔を見合わせてから、口々に答えた。

『そりゃ、まあ、特には無いですが』

『でも、こいつはオペイクス様と違って、身分を鼻にかけて、偉そうにしてましたぜ』

『領主に味方していたんだから、やっぱり懲らしめた方がいいですよ』

 とか何とか、平民たちから見た騎士の印象は、あまりよろしくなかったようだ。

 そしたら、オペイクス様の袖が軽く引っぱられた。パールだよ。彼女は、また首を横に振って、小声で言った。『どうか、許してあげてください。私がこの方と会話したのは、ほんの数回です。酷い事もされませんでした。罰するほどではないと思います』パールは、疲れからか、口調が遅かったそうだ。

 オペイクス様は『分かった』と小声で返して、元同僚の騎士に向き直った。

『君は、たしかペレガミに同行して、ビナシス家のコモドーン城に訪問した事が無かったか?有るなら、行って、今回の一揆の顛末を報告してくれ。そしてビナシス家のご党首様にお伝えするんだ。首謀者のオペイクスが裁きを受けるべく、ここでお待ちしている、と』

 これに対して騎士は『有るには有るが、たった二度ほどで、自力でコモドーンにたどり着けるか自信が無い』とか言い出した。

 それでもオペイクス様は諦めない。『すれ違う行商人や旅人に道を尋ねるとか、何とかして行ってくれ。そして必ず、ビナシス様にお会いするんだ。絶対だぞ。今ここには、君以外に、それをできる人間は居ない』

 続けてオペイクス様は、そばに居た平民に、騎士を縛る縄を解くように言いつけた。

 言いつけられた相手は、少し知恵が回る奴だったみたいでね。指示に従う前に、オペイクス様に念を押した。『行かせるんでしたら、こいつの家族を人質にしておきませんかい?』と。

 でも、もう分かっていると思うが、それをしないのが、オペイクス様だよ。平民の知恵をちょっと褒めただけで『今回は、そこまでしなくてもいいだろう』と。本当に人がいいもんで、縄を解くだけじゃなく、騎士に剣を返すまでしてやったらしい。

 私らに話しながら、オペイクス様は思い出していた。一瞬、パールの意見を聞こうかと思ったんだとさ。しかし、聞くまでもない、と思い直して段取りを進めた。騎士を急かしたんだ。『今すぐ家族と合流して、ビナシス家に向かえ』とね」

 私は、ふーっと息をついた。いつの間にか、固めたはずの拳も緩んでいた。


「で、騎士は指示通りに出発したのね。これで今度こそ、一段落ついたんじゃない?」

「まあ、ついたと言うか、また別の一悶着が持ち上がったと言うか」とセピイおばさんは、ため息をつく。

 えっ、と驚く私をよそに、おばさんは話を進めた。

「オペイクス様はペレガミたちの死体を、屋敷の中庭のど真ん中に転がした。縛られたまま袋叩きの兵士二人も、その隣に座らせて。オペイクス様がおっしゃるには、その二人は成り行きに任せることにしたそうだ。平民たちが時折り来て、報復するも良し。兵士二人が何とかして脱走するも良し。二人は散々痛めつけられていたから、大して遠くに逃げられずに、いずれ事切れるだろう、と。

 これで一揆も、ようやく区切りがついたわけだ。

 そこでオペイクス様は、一揆勢の平民たち全員を向けて言った。『今日は、これで解散しよう。それぞれ帰って、休むように』と。

 合わせて、手当てしてくれた奥さん方に礼を言いつつ、付け加えた。『こちらのパールさんの件で、今後いろいろと頼み事をすると思う。どうか、その時はご協力願いたい』

 奥さん方のすぐ後ろには、ボジェナさんの家族も来ていて、承知してくれた。

 さて、そんなやり取りをしていた時だよ。解散し始めた平民たちの間を縫うようにして、若い男が一人、近づいて来た。オペイクス様の弟さんだ。

『兄さん、これは、どういうことだ』

 周りを見て顔をこわばらせている弟さんとは逆に、オペイクス様は不思議と気持ちが落ち着いたそうだ。

 オペイクス様は答えた。『見ての通り、ペレガミ家に対して一揆を起こした。そして成功させた』

 弟さんは、しばらく絶句して立ち尽くしたが、すぐにオペイクス様に問い質したよ。『こ、こんな事をして、ただで済むと思ってんのか。これから、どうするつもりなんだよ』

 オペイクス様は答えた。『そのことで、お前や父さんに話がある』と。

 それを聞いて、弟さんはお父様のことを思い出したようだ。『その父さんの容態が悪化しているんだ。今すぐ家に戻ってくれ』

 言われて、オペイクス様はパールを見た。パールを連れて行くか、ボジェナさん一家に預けるか。パールの表情にも、遠慮の色が見える。

 しかし、とオペイクス様は思ったそうだ。お父様に、パールとの結婚を認めてもらいたい。そのためにも、まずはパールを紹介したいが、お父様に万が一のことがあったら、その機会すら失ってしまう。

 だからオペイクス様はパールに言った『一緒に来てほしい』と。そして近くにいた平民たちに『ロバを一頭、借りてきてくれ』と頼んだ。

 当然、弟さんはパールのことを尋ねたが、オペイクス様は『説明は家でする』と答えて、パールをロバに乗せて、家路を急いだ。平民も三人ほどが『お供したい、この際、オペイクス様のお家の場所を覚えたい』と言って、ついて来た。

 オペイクス様の家は、平民たちの家より少し大きいくらいだったそうでね。ペレガミみたいに屋敷というには小さすぎるわけだよ。

 隣りの中年夫婦が時々顔を出して、使用人として働いてくれていたそうだ。

 オペイクス様が弟さんに続いて家に入る時にパールも招き入れたんだが、その中年夫婦は彼女を見て、怪訝な顔をしたらしい。

 ついて来た平民たちは律儀なもんで『何かご用があったら、いつでも呼んでください』と外で待ってくれたのにね。

 オペイクス様は病床のお父様のそばに体を屈めながら、パールとお隣りの中年夫婦も部屋に入れた。枕元には、もちろんお母様と弟さんだよ。

 そしてオペイクス様は、その日起こった一揆について語った。息子が領主を殺したと聞かされて、病床のお父様より、お母様の方が驚いて興奮したそうだよ。

 オペイクス様は一旦それをなだめて、話を進めた。一揆のけじめとして、近隣の有力者、ビナシス家の指示をあおぐ予定である事。パールを保護した事。ビナシス家の判断の元、自分が許されて、かつパール本人が良ければ、彼女を妻として迎えたいという気持ち。貴族としてのエクテ家は、弟さんに継がせようという考え。それらをパール本人や、使用人としてのお隣さんにも聞かせようと思って、同席させたわけさ。

 お母様は一瞬だけ絶句したが、すかさず、と言おうか、息子であるオペイクス様に尋ねた。パールの素性を。オペイクス様は正直に話したよ。パールが平民で、身寄りが無い事を、ね。すると、お母様は、また黙り込んだそうだ。

 弟さんは『家は、やはり長男が継ぐべきだ』という主張だったみたいだが、お父様が病床から手を上げて、それを止めた。

 そしてお父様は、長男であるオペイクス様の考えを了承してくれたよ。潔く、有力者ビナシス家に頭を下げるのが得策だろう、と理解してくれたんだ。

 そしてオペイクス様の弟さん、次男に向かって『エクテ家はお前が継げ』とも言った。『自分は、もう長くないだろう。だから、ここで、はっきり明言しておく』とね。お父様は体を起こして、お母様や次男さんに羽筆とか羊皮紙とかを用意させて、遺言を遺した」

 セピイおばさんは、そこで話を区切って、深く息をついた。なので、私は口をはさませてもらう。

「別の一悶着って、家族のことなんだね」

「そういうこと」セピイおばさんは葡萄酒を一口だけ呑んだ。

「その日は、ついて来てくれた平民たちを帰して、オペイクス様はパールを家に泊めた。お隣りの中年夫婦に手伝ってもらって、パールのために一部屋を空けたんだよ。オペイクス様自身は、また、お父様と寝床を並べて療養だ。パールたちに手当てしてもらったとは言え、やはりオペイクス様の体は傷だらけだったからね。

 でもオペイクス様は『傷の痛みより、別のことが気になって、なかなか寝付けなかった』とおっしゃっていたよ。

 お母様と弟さんの様子。はっきり口に出したわけじゃないが、目を見れば分かる、と。まあ、血のつながった家族だからね。お母様と弟さんがパールを客人として歓迎していないのは、明らかだった。おそらく気持ちが顔に出ていたんだろう。だからオペイクス様は、パールが安心して寝起きできる場所を確保しなければ、と考えた。

 翌日、オペイクス様はパールを連れて、おばさん女中、ボジェナさんを訪ねた。そして彼女の実家の畑仕事などをパールに手伝わせてほしい、と頼んだ。後で、迎えに来るから、と。

 そうやってパールに一日を過ごさせている間、オペイクス様自身はペレガミ家の屋敷に入った。一揆勢の平民たちに散々荒らされた屋敷の玄関口に座って、ビナシス家の使者を待ったんだ。昨日の今日では、さすがに早すぎるか、と思いながらも、念のためにね。

 屋敷の敷地内には、だいぶ人数は減ったが、まだ平民たちがうろついていた。人でなしペレガミたちの死体に石を投げつけたり、おしっこをかけて辱めたり。そうかと思えば、屋敷の中で何か物を取って、律儀なのか、わざわざオペイクス様のところに来て、許可を求めたりする者も居たそうだ。オペイクス様も今さら、それらを咎めたりしないよ。

 逆に、オペイクス様も彼らと同じことをするか。なるほど、ペレガミたちがパールにした事を思えば、腹わたが煮えくり返って、たとえ死体でも怒りをぶつけたくなる。

 しかしオペイクス様は、しなかった。パールが住む場所、平民たちの将来を考えると、気が気じゃなくて、報復どころじゃなかったのさ。

 まだ生きていた兵士二人も虫の息で、大して動いていなかった。放っておいても、逃げるより先に衰弱死するだろう。

 そんなこんなを考えていると、昨日オペイクス様の家までついて来た、あの平民たち三人が顔を出した。彼らは『オペイクス様が何だか元気が無さそうだ』と心配した。そして、前日と同じようなことを言ったよ『わしらにできることがあったら、遠慮なく言ってください』とね。

 それを聞いて、オペイクス様は、ハッとして顔を上げたよ」

「あっ、パールのこと」と私もピンときた。

「そう。せっかくの味方だ。頼らない手は無いだろ。オペイクス様は、その平民たちに言ってみた『誰か、小屋を一つ、譲ってくれないか』と。

 そしたら、気持ちのいい連中でね。たった三人とは言え、全員が『うちの裏の小屋でよかったら』とか『いや、わしんとこの物置を』とか口々に言ってくれた。

 オペイクス様は彼らに案内してもらって、その三物件を確認したよ。その中でも、例のボジェナさんの家に一番近い小屋を譲ってもらうことにした。

 オペイクス様は『弟と遺産を分けたら、それから代金を支払う』と約束したんだが、相手は固辞する。オペイクス様も、それじゃ気が済まないよ。

 仕方がないんで、残りの平民二人が知恵を出した。『オペイクス様がお支払いしてくださる予定の金は、どうか取っといてくださいませ。それで飢饉とか、戦の時とかに、みんなのために使わせていただきましょう』とね。『何とも、ありがたい心づかいだった』とオペイクス様は私らに話しながら、目が潤んでいたよ。

 小屋の持ち主は早速、荷物を移動させて中を空にしてくれたそうだ。オペイクス様もエクテ家に戻って、寝具や衣類とか、とにかく使いそうな物をかき集める。それを荷車に積んで運んでいたら、また平民たちが手伝ってくれて。

 オペイクス様は出て行く時に、ご家族に簡単に説明したらしい。『自分は、これを機にここを出て、パールさんと小屋で暮らす』と。後事を弟さんに託して、お父様の容態が悪化したら知らせてもらえるよう、小屋の場所も伝えた。

 しかし弟さんもお母様も、オペイクス様を引き止めようと、ぶつくさ言ったみたいだね。でもオペイクス様も、聞かなかった。弟さんに向かって『エクテ家の跡継ぎはお前だ、と父さんも決めただろ』とか反論して、生家から去ったそうだ」

「うーん、仲違いはさせたくないけど、今回は正解でしょうね」と私。

「ああ、まったくだよ。お母様も弟さんもオペイクス様を説得しようとしながら、パールに関しては一言も無かったそうだ。悪口さえ無し。『まるでパールが存在しないかのような振る舞いだった』とオペイクス様も話しながら、うつむいていたもんさ」

 うーん。セピイおばさんの補足に私は、またしても唸る。が、言葉は出ない。せっかく、事態が好転したと思ったのに。

「とにかく、オペイクス様は引っ越しを手早く済ませた。で、続けてパールを迎えに行く。

 すると、ボジェナさんの家族はパールに、パンとか果物とか、食べ物を少し持たせてくれていたよ。『畑仕事を手伝ってくれたお礼に』とか言ってね。

 パールは遠慮したんだが、ボジェナさんたちは食べ物を引っ込めない。オペイクス様も家から持ってきた銀貨とかを渡そうとしたが、それも受け取らない。

 ボジェナさんは言った『そのお金は、二人の結婚生活にお使いください』と。

 ボジェナさんの旦那さんも言った『騎士様は、わしらのために傷だらけになって戦ってくださったじゃないですか。そのお返しに、こんなパンじゃ全然足りません。どうぞ遠慮なさらず、お持ち帰りください』とね」

「うーん、良い人たち。これならパールが『迷惑をかけられない』とか遠慮するわけだわ」

 聞いていて私も嬉しかったが、その分オペイクスの家族の反応が残念でならない。

「オペイクス様は感激で胸がいっぱいになりながら、パールを小屋に連れて帰った。

 そして二人で、それらの食べ物を分け合って食べた。パールはオペイクス様に、多めに取らせようとしたらしい。オペイクス様の方が体が大きいし、多く食べた方が傷の治りも早くなるだろう、と。オペイクス様はその心づかいに感謝したが、パールと同じ量で通したよ。少し残して、翌日に回したりしてね。

 で、後は床に入って、休むことになったんだが」

 セピイおばさんは、ちょっと言い淀んだ。私も、つい予想してしまう。


「オペイクス様は、自分が実家から運び込んだ寝床を、パールに使わせるつもりだったみたいだね。自分は、土間になっている部分に粗布とかを敷き詰めて、そこで寝ようと。で、二人の間に垂れ幕代わりの布も下げようとした。

 ところがパールは、そんなオペイクス様の手を、そっと止めたよ。まず、寝る場所を入れ替えるべき、とパールは主張した。『オペイクス様は、しっかり傷を治してください』と言うんだ。

 でもオペイクス様は断った『騎士たる者、土間で寝るぐらいが修行を兼ねて、ちょうどいい。この方が強くなれる』ってね。あの方のことだから、パールに微笑んであげたんだろうよ。とにかくオペイクス様は、パールを土間に寝かす事だけは認めなかった。

 すると、パールは少し考えてから言った。

『では、この寝床で私と一緒に寝てください』

 言いながら、パールは服を脱ぎ始めた。それを止めようと、オペイクス様が手を伸ばすと、パールは目に涙を浮かべながら、オペイクス様をひたと見つめる。オペイクス様は、彼女のそんな様子に気圧されて、動けなくなる。その間に、パールは裸になってしまった。

 立って自分の裸を晒すパールの姿に、オペイクス様は一瞬、林の小屋での領主ペレガミの振る舞いを思い出したよ。『胸がズキリとした』とオペイクス様は、おっしゃったね。ペレガミに腕を引っぱられて、裸を隠せず、目を閉じて、人でなしどもの視線に必死に耐えていたパールの姿。それと目の前の彼女が重なって見えた、と。

 しかし今はパールにだけ、裸にさせておけない。オペイクス様も慌てて服を全部、脱いだ。

 パールは、オペイクス様の手を引いた。自分は寝床に腰掛け、そして背も倒して仰向けになって。『どうぞ』と言って、オペイクス様の手を引き続けた。

 それにつられてオペイクス様はパールの上に覆い被さりそうになったが、逆にパールの背に腕を回して、そっと体を起こした。

『待って。待ってくれ、パール。たしかに私は今、あなたが欲しくてたまらない。正直、あなたを抱きたい。しかし、それは私の勝手な欲望なんだ。あなたが付き合わなければならない、というわけじゃない』

 とかオペイクス様なりに言い聞かせようとしたんだが。パールの指がそっと伸びてきて、オペイクス様の唇を軽く押さえた。

『あなた様のしたいようになさってください。私は、あなた様の役に立ちたいんです。恩返しをさせてください。お願いです』

 そう言ってパールは、またオペイクス様の手を引く。オペイクス様は、そんなパールの手をそっと引っぱり返した。

『だったら、気にしないで。あなたは、もうすでに、このオペイクスの役に立っている。

 私は、なかなかペレガミに立ち向かえなかった。勇気が無かったんだ。でも、あなたのおかげで私は奮い立つ事ができた。私に勇気をくれたのは、パール。あなただ。

 それに、恩返しだなんて、とんでもない。もっと早く駆けつけて、ペレガミに立ち向かわなければならなかったのに』

 なんて理屈を展開して、オペイクス様はパールを納得させようとしたんだ。服もかき集めて、パールに持たせてね。

 ところがパールは、ぽろぽろと涙をこぼして、服を抱えている手を濡らすじゃないか。

 オペイクス様が驚いていると、パールは泣きながら、言った。

『私が・・・あの人たちに弄ばれたからですか。あの人たちに汚されたから、オペイクス様は私を抱いてくださらないのですか』

『そんなんじゃないっ』

 オペイクス様は思わず声を荒げてしまったそうだ。

 もちろんオペイクス様は、その事をすぐに謝ったよ。そして言った。

『あなたは汚れてなんかいない。綺麗だ。だから私は今も、あなたを妻に望んでいる』

『だったら』とパールは泣き濡れたまま、すかさず反論した。『私に遠慮しないでください。あなたが望むままに、私を抱いてください』

 そこまで言われて、オペイクス様は数秒、固まったそうだ。で、考えてからパールに応えた。『分かった。では、こうしよう』

 オペイクス様は、まずパールに寝床から降りてもらって、自分が寝床に仰向けになった。その状態で、パールの手を引いて、自分の上に彼女を乗せる。自分の胸板に、パールの顔を埋めさせる。

『これが私の望みだ。これが、あなたに対して私がしたい事だ』そう言って、彼女の髪を撫でた。

 パールは泣いたよ。静かに泣いて、オペイクス様の胸板を濡らしたそうだ」

 セピイおばさんが、また深く息をつく。私も唸ってしまったが、言葉は出ない。パールの気持ちを考えると、簡単に発言なんてできない。

 セピイおばさんは話を続ける。

「オペイクス様は、パールが泣くのにまかせながら、力を加減して抱きしめ、髪を撫でる。そうしながら薄暗い天井を見上げた。そして少しずつパールに語りかけた。

 小屋を譲ってくれた平民が『この小屋はオペイクス様の城だ。あなた様にお城を差し上げたなんて、孫の、その孫にまで自慢できます』なんて言ってくれた事。本当は、その平民は『オペイクス様の屋敷』と言ったんだが、オペイクス様がペレガミ家の屋敷を連想して『やめてくれ』と頼んだらしい。そしたら『城』と言い換えたというわけなんだが。オペイクス様は、そんな経緯まではパールに聞かせなかったよ。

 それより、話をこんなふうに続けた。平民たちが『小屋が城なら、パールさんは城の奥方様だ』と言ってくれた事。オペイクス様は『それが嬉しかった』とパールに話した。

 そして言った。『だから、ここは、あなたの城。あなたの住まいだ。ここに在る物は、すべて、あなたの物』と。

 オペイクス様は、そこで話を中断して、少し体を起こした。パールを乗せたまま、自分の背の下に少し隙間をつくったわけさ。そこにパールの腕を回させる。

『そのまま私を抱きしめてくれるかい?』

 オペイクス様が頼むと、パールはオペイクス様の顔を見上げながら、細腕に力を込めたそうだ。

 その感触を確かめてから、オペイクス様は話を再開した。

『分かるかい?このオペイクスも、あなたの物だ。私は欲張りだから、あなたの夫にもなりたいが、あなたの騎士にもなりたい』

 パールは泣きながら、またオペイクス様の胸板に顔をうずめた。そして泣き声が大きくなった。パールは、いやいやする子どもみたいに、オペイクス様の胸板に顔を擦りつけんばかりに、首を横に振った。

『あなた様は、あなた様は私なんかの物になってはいけません。私があなたの物になります。私があなた様に従うのです』

 オペイクス様は・・・『このパールの言葉が痛かった』と、私らに話してくださったよ。『ペレガミの人でなしどもに殴る蹴るされるより、斬りつけられるより、この言葉の方がよほど痛かった』と」

 セピイおばさんがそこまで話すと、私たち二人は、また黙り込んだ。そうだ。きっと、オペイクスもパールに言われた瞬間、こんなふうに絶句したんだろう。

 セピイおばさんは、大きくため息をついてから、話を続けた。

「オペイクス様は、まずパールに謝った。『言い間違えた』と。『物という表現が間違いだった。でも夫と騎士は、やめないよ』とね。そして、できるだけ笑みをつくって、続けたのさ。『だから、あなたも物とは言わないで。あなたは私の物じゃない。大切な人だ』と。

 その後、パールはオペイクス様の胸で、しばらく泣いていたそうだ。オペイクス様は言わなかったし、私らも聞かなかったが、おそらくオペイクス様もその時、一緒に泣いていたはずだよ。

 そうやって二人して体を重ねていたら、だ。オペイクス様のあそこが元気になっちまったらしい。まあ、パールが服を脱いだ時から目覚めていたそうなんだが。オペイクス様は私らに言ったよ。『このスケベな男を笑ってくれ』とね」

「でも笑えないね」と私も苦笑いになる。

「ああ、私ら四人も、どんな顔をしたらいいのか、分からなかったよ。でもオペイクス様が続けた話では、ちょっと吹いちゃってね」

 セピイおばさんは、そこでニヤリとして見せた。

「パールが顔を赤らめながら、腰を浮かせたそうなんだよ。『このままじゃ、私がオペイクス様を、押し潰してしまいます』とか言って。その後、二人は顔を見合わせて、くすくす笑い出したとさ」

「オペイクスは、おちんちんを潰されずに済んだんだね」って私も、とうとう言ってしまう。

「ああ。それで私ら四人も笑い出して、オペイクス様も照れ笑いしていた。私らは笑いながら内心、ホッとしたよ。オペイクス様の笑顔を久しぶりに見た気がしたんだ」

 途端に、おばさんの笑みに翳りがさして見えた。

「話をパールとオペイクス様に戻すと、パールはそのまま、オペイクス様のあそこを自分の股に導いた。

 オペイクス様は『待った』と言ったが、パールは『いいんです』と言って続ける。それどころか、オペイクス様と交わった状態の自分の腰をオペイクス様につかませようとしたり、乳房を触らせようとしたりする。

 オペイクス様は正直、迷ったそうだ。すけべ心にまかせて、パールがさせてくれるようにするべきか。しかし、それは悪いことのような気がする。パールの表情を見ていると、何となく、そんな気がする。何か、パールは無理しているのでは。本当は嫌な気持ちを我慢して、このオペイクスに肌を触れさせているのでは。彼女に我慢など、させたくない。むしろ、男がすけべ心を我慢する方が当たり前じゃないか。オペイクス様は、そう言おうか、とも思ったんだが」

「だめだわ。さっきの問答の繰り返しになるだけ。パールは、また『遠慮しないで』って言うに決まっているよ」

「だからオペイクス様も、さっきと同じ事をしたよ。自分の上にパールを寝かせる。自分の胸板でパールの顔を受け止め、その髪、その背に腕を回して、そっと抱きしめる。撫でる。

 上になったパールは、そこから首を伸ばしてオペイクス様に何度も口づけした。

 やがてオペイクス様は達しそうになって、精を放つ前に陰茎を引き抜くべきか、パールに確認したよ。するとパールは慌てて首を横に振った。『抜かないで』と。『そのまま思い切り出してください』と。パールは、オペイクス様に顔をうずめたまま言ったよ。で、オペイクス様は果てた。パールの中に精を放ったんだ。

 しばらく二人は体を重ねたまま、荒れた息を整えた。

 と思ったらパールが、また泣き出した。声を上げて、泣いてオペイクス様の胸板を濡らす。オペイクス様は、パールが痛がって泣いたのでは、と心配したよ。

 しかしパールは、また首を横に振る。『嬉しいんです』と。『あなた様の精を受ける事ができて嬉しい』と言うんだよ。

 オペイクス様は感激した。ついにパールが自分の子を産んでくれる気になったんだ、と思ったのさ。前回は領主ペレガミに騙されたが、今回は自分を騙そうにも、奴は、もう居ない。パールは誰に強制されるでもなく、自分の意志で私の精を受け止めてくれたんだ。

 そう思い至ると、感極まってオペイクス様はパールに言った。『子どもが産まれたら、二人で大切に育てよう。私は、ビナシス家にお仕えして、今以上に働くよ』

 オペイクス様は、そんなふうに夢を描いてみせたんだが。なぜかパールの泣き声は、一層ひどくなる。オペイクス様は、パールのこの反応をどう解釈したらいいのか分からず、戸惑ったよ。自分は一体、何をやらかして彼女を悲しませてしまったのか。

 オペイクス様が恐る恐るパールに尋ねても、彼女は泣き続けて、しばらく答えなかった。やがて泣き顔を上げて、オペイクス様をひたと見つめて言った。

『私は・・・もう一つ、あなた様に謝らなければなりません。私は・・・不生女です。私は、あなた様の子を産めません』

 オペイクス様は驚いて、息をのんだよ。それでも気を取り直して、先ほどよりもさらに慎重にパールに尋ねた。『医者に言われたのか』と。

 パールは、またオペイクス様の胸板に顔を擦りつけて、首を横に振った。

『誰かに言われたわけじゃありません。でも。分かります。自分の体ですから』

 オペイクス様は、これに何と返すか、必死に考えた。

『気にしすぎ、じゃないかな?案外、今、子どもが授かっているのかもしれないよ』

 そう言ったが、パールは泣き止まない。

『仮にそうだったとしたら、どこかの孤児を引き取ろう。こんな世の中だ。不幸な子どもは、幾らでも居る。あなたは良いお母さんになるだろう。もしかしたら神様が私たち二人に、そういう役割を望んでおられるのかもしれないよ』

 オペイクス様は、そんな説まで組み立ててみたんだが、やはりパールは泣き止まない。

 この事について、オペイクス様は私らに、こんなふうに言うんだ。

『オーカー君やアズール君と違って、今でも女性の心理に疎い私だからね。どうも私は言い間違えて、パールを悲しませたらしい。でも、それがどこか、私には思いもつかないんだ。情けない男だと笑ってくれたまえ』

 これを聞いて、すかさずイリーデが口をはさんだ。『でも、オペイクス様に悪気は無かったはずです。パールさんを慰めてあげたかったんでしょ?』と。

『もちろん』とオペイクス様は力無く答えた。『しかし、つもり、では済まない。悪気は無かった、では済まない、ということだよ。パールを悲しませたのだから』

 すると、今度はシルヴィアさんが意見した。『オペイクス様には失礼ですが。

 否定してあげるべきだったんですよ。ひたすらに。パールさんの推測を否定してあげるべきだったんです。そんなことはない。あなたは不生女なんかじゃない、と。ただ、それだけ。それだけをパールさんは、あなた様に望んでいた。

 孤児を引き取るの何のは、まだ、ずっと後でいいんです』

 オペイクス様はこれを聞いて、はじめは泣き笑いのような顔をして『やっぱり自分は情けないな』とか自嘲していたんだが。やがて、ぼろぼろと涙をこぼして、頭を抱えた。

 シルヴィアさんも、それを見て、謝ったよ。『すみません。言い過ぎました』と静かに、うつむいて。

 オペイクス様はそれに対して答えた。『いや、いいんだ。むしろ、よく言ってくださった。シルヴィアさんに加わってもらった甲斐があった』とね。

 まあ、例によって、イリーデはシルヴィアさんを睨んでいたが」

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