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守りたい

陽菜はゆっくり目を開ける。寝ていたようだ。正面には蛍光灯が明るく光っている。

覚醒したての意識で状況を理解しようとする。周りを見た感じ、病院のようだ。

左右を少し見ると、右の方にうたた寝をしている女性が二人いた。なんか見たことあるような…

そう考えていると、そのうちの一人が目を覚ましこちらに顔を向ける。そして、


「徳姫さん、徳姫さん!彼女、目を覚ましましたよ!」

「んんん……どした……?」


片方の人―――徳姫は寝ぼけながらもこちらに目を向ける。

「あっ…目、覚めたんだ!」

そう言うと徳姫はほっと胸を撫で下ろした。


そして私は気づく。彼女たちはあの時いた二人の魔法戦士なのだと。確かに、雰囲気がどこか似ているような感じはした。


目を覚ましたあと、私は医師や看護師に囲まれて簡単な問診を受けた。

その後もいくつか検査が続き、気づけば時計の針は昼過ぎを指していた。

どうやら大きな異常はなかったらしく、その日のうちに退院していいと言われた。


親は既に一度見舞いに来たらしく、目覚めの知らせを聞いて母が仕事を切り上げて迎えに来てくれるようだ。

来るまでの間、私は二人と話すことにした。


「私は平岡(ひらおか) 徳姫(とき)って言います。」

「私は熊田(くまだ) 天音(あまね)と申します。」


二人の名前を聞いて私は気付いた。

「あれ…もしかして同じ高校じゃないですか?」

確か一つ上の世代でかなり人気のある二人だったはず。


「…ねえなんで私たちどっちも学校中に名が知れ渡ってるんだろ…」

「なんででしょうねぇ…」

二人は少し困りつつ答えた。


そして私からも自己紹介を行う。

桜庭(さくらば) 陽菜(ひな)って言います。この前いた男の子は優地って言って…」

そこまで言ってようやく気づいた。

優地。いろんなことがあって忘れていたが、彼はどうなったのだろうか。


「そういえば…優地はどうなりましたか…?」

私はおそるおそる聞く。それに対し、天音が答える。


「彼は…無事ですよ。」

その言葉に私は安堵する。続けて徳姫が言う。


「あなたがぶっ倒れたあと、無事回復したよ。でも、重体だったから救急車に運んでもらって、今は別の病院にいるらしいけど…。」

「…ありがとうございます、お二人とも。」

私は頭を下げてお礼を言う。


「いやいや、とんでもない…むしろ助けたのはあなただよ。」

「私が回復し始めた時、彼の状態は辛うじて生きてはいるが放置していたら危険な状態でした。ですが、あなたがあそこに来てくれたおかげで、彼の命を繋ぎ止めることができました。本当に、ありがとうございました。」

実際助けてくれたのはお二人なのに…と思いつつ、スマホを開いて優地に連絡を取ろうとする。

…昨日の夜から毎時間LINEが来てるが、彼は本当に重体なのだろうか…?


その後、私は二人からある話を聞いた。

”魔除庁”の管轄に入り、自分らの仲間にならないか、と。


魔除庁。それは、対魔獣のためにアポカリプスの一年後に作られた組織であり、主に管理を行っているのは天国コーポレーションという会社である。現在、日本には各県に最低二つの支部があり、都内には本部兼天国コーポレーション本社ビルの新宿本庁がある。

そして魔除庁の管轄に入れば、公認の魔法戦士として活動できる。基本的に公認されると、各地の支部への出入りが自由となり、活動で破壊してしまった建造物等も代わりに賠償を行ってくれる。そのため、基本的には魔法戦士になると公認させてもらうのが基本である。


勿論、魔法戦士になった以上は自分もそうするべきだと思っていたので、手続きをしようと思っていた。ただし、やり方がわからないのでどうすればいいか聞こうとしたところ、スマホがなった。

お母さんだ。どうやら病院の駐車場についたらしい。


ひとまず続きはまた明日ということにして、私は一度帰らせてもらうことにした。



駐車場まで二人にはついてきてもらった。検査自体に異常はなかったものの、やはり心配だったので駐車場まではついていくことにしてもらったのだ。


駐車場に着くと、お母さんの車が止まっていた。

けれど、運転席ではなく、後部座席の窓が少しだけ開いている。

「……?」

不思議に思って近づいた、その時。

「おい」

聞き慣れた声に、私は思わず肩を跳ねさせた。

次の瞬間、後部座席の窓から優地がぬっと顔を出した。


「優地!?」

思わず素っ頓狂な声が出る。というか私より重体なのになんでもう退院してるのか。後ろを見ると二人も困惑していた。


「…病院は脱走してきた。金払えないし。」

納得ではあったがもう少し休んでいたほうが良いのではないか。私がそう心配すると―――


「だって、お前のほうが心配だし。」

と返してきた。思わず頬が赤くなる。

「おーラブラブだねー。」

お母さんがそう言うと私は恥ずかしくて悶えてしまう。後ろに二人もいるのに…

「ところでその二人は?」

お母さんが聞いてきた。そう言えば、どう答えれば良いのだろうか。そう悩んでいると、


「友達なんです。陽菜さんが怪我をしたとのので心配で…」

それを聞いて、お母さんは納得した顔をする。一方、奥にいる優地は後ろの二人をめっちゃ睨んでいた。



まもなく私を乗せた車は病院を後にする。

ひとまず優地の家へ向かう車の中で私と優地は久しく会話をした。

「…無事で良かった。」

「うん。私も。」

そう言うと二人で手を絡める。


「なぁ……その……」


優地が、珍しく言い淀む。

いつもならもっと軽く話すくせに、今は違った。


「お前……変身してたよな……」


その声に、私は小さく息を呑んだ。

見られていたんだ。


「……ごめん。陽菜」


「え……?」


「俺があの時、あんな無茶しなきゃ……お前が怪我することも、変身することもなかった」


絡めていた手に、少しずつ力がこもる。


「なあ、陽菜」


優地は、私を真っ直ぐ見た。

「お前はもう、()()()()()。」


それを聞いて私は驚く。

「どうして…?」

「魔法戦士として戦うってことは…もしかしたらまた陽菜が傷つくってことだろ…。今回はあれですんだが…もしも、もっとやばいやつが来た時、もしもお前が死ぬことがあったら…」


そもそも、魔獣と戦うことは命がけだ。

一歩間違えば普通の人より頑丈だとしても死ぬ場合はある。

優地の懸念は当然のことだった。


「でも…やっと守る力を手に入れられたんだよ。これがあればきっと…」

「きっとじゃない。」

反論しようとする私を優地が遮る。

「どのみち…一歩間違えれば死ぬことは変わりない。だから、戦うのはやめろ。」

その言葉に、私はすぐには何も返せなかった。

嬉しいはずなのに。

優地が私を想ってくれている、そのはずなのに―――

胸の奥に、小さな痛みだけが残った。

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