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仲間から、無能呼ばわりされた俺。 死んだら神霊にスカウトされて世界を癒す最強の聖者になりました ~俺のこと、無能って言ったやつ、全員地獄行きな?〜

作者: なみゆき

設定はゆるふわです☆


「シオン、お前は回復しかできねぇんだろ? 戦えないなら足手まといだよなぁ?」


——はい出ました、脳筋剣士のありがたいお言葉。

怪我したら真っ先に「シオン!治せ!」って叫ぶくせに、いらなくなったらポイ。

まるで使い捨ての包帯。いや、包帯のほうがまだ感謝される。



「無能は、パーティーに不要だ」


——賢者様のご高説。呪いも治せない、精神も癒せない、魂なんて触れることすらできないくせに、よく言えたな。鏡見てから言え。



「ごめんなさい、でも…あなたがいると、みんなの士気が下がるの」


——聖女様のありがたいお言葉。呪われて発狂したとき、誰が魂を癒したか覚えてないらしい。都合の悪い記憶は消えるのか、便利な頭だな。



そんなこんなで、俺は追放された。

“無能”のレッテルを貼られて、誰にも惜しまれず、誰にも感謝されず、そして、あっさり死んだ。


森で野宿していた俺は、魔物の群れに遭遇。逃げる体力もない。回復魔法も、自分には使えない ——ああ、俺って“無能”だったんだっけ?




 * **

意識が途切れた瞬間、目の前に広がったのは、漆黒の空と、星のない夜。冥界。

そして、そこにいたのは——



「ようこそ、癒しの器よ。ずいぶんと粗末に扱われたな?」


神霊アストレア。冥界の神霊。魂を癒す者を探していたらしい。


「お前の魔法、あれは“魂修復”だ。人間には理解できない力だ」


——は? 俺の魔法って、そんなすごかったの?

ただの回復魔法じゃなかったの?

あいつら、誰も教えてくれなかったけど?



「契約しろ。お前の魂に、神霊の力を宿す。癒しは武器になる。蘇生は裁きになる。そして、お前は“魂癒の聖者”となる」



選択肢はなかった。生き返るか、冥界で腐るか。俺は契約した。



「契約完了。さあ、地上へ戻れ。お前を追放した者たちに、“癒し”の意味を教えてやれ」


体が光に包まれ、魂が焼かれるような痛みとともに、再構築されていく。

神霊の力が、俺の魔法に融合する——その瞬間、世界が反転した。



 * **

目を開けたとき、俺は生きていた。

冥界の加護を受けた“魂癒の聖者”として。


地上に戻った俺が最初に向かったのは、“死にかけの村”。

魔物に襲われ、病気が蔓延し、呪いまで飛び交っている。もうね、地獄のフルコース。


村人たちは俺をただの旅人だと思っていた。


「お、お坊さんですか…?」


とか言ってたけど、違うよ。坊さんじゃなくて、神霊の契約者。


俺の癒しは、ただの回復じゃない。


•呪い? 魂ごと浄化。

•病気? 根源から修復。

•死者? 魂が残っていれば蘇生可能。



癒しの力で村を丸ごと再生したら——


「神様だ…! 神様が来てくださった…!!!」


って、土下座された。いやいや、俺は神様じゃない。

神霊の使徒だって言ってんだろ。

でもまあ、崇められるのは悪くない。

あのクズどもに「無能」って言われてた頃に比べたら、天と地の差。



子どもたちが「シオン様ー!」って走ってくる。

老人たちが「命の恩人です…」って泣く。



その光景を見て、俺は思った——

この力は、癒すためにある。でも、癒す価値のない魂には、断罪を。




 * **

魔王——世界の敵。人類の脅威。

でも、実際に会ってみたら、ちょっと違った。



「貴様が、魂を癒す者か」


その声は、地鳴りのように重く、静かに響く。敵意はなく、むしろ、興味を持っている。



「我が軍の兵は、呪いに蝕まれ、魂が崩壊している。癒せるか?」



——は? 魔王が、癒しを求めてる?



「癒しは、破壊よりも深い力だ。貴様の力は、我が軍にも必要だ」



…なるほどね。魔王はただの暴力バカじゃなかった。魂の本質を理解している。

だからこそ、俺の力に価値を見出したんだ。



「条件がある。俺に手を出した元仲間たち、あいつらの魂を焼くまで、俺は誰も癒さない」



魔王は笑った。


「良い。断罪の炎を見せてもらおう。癒しとは、選ばれし者の特権だ」




 * **

魔王軍との戦いでボロボロになった勇者パーティー。

勇者カイルは片腕を失い、聖女ミリアは人格崩壊、賢者ザイドは魔力枯渇で廃人寸前。



「シオン…頼む…助けてくれ…」


——は? 忘れたのか?俺を“無能”って切り捨てたことを?

魂の価値すら見抜けなかったくせに、今さら“癒し”を求めるとか、笑わせんな。



「癒しは、選ばれた者の特権だ。お前らみたいな腐った魂には、癒しじゃなくて——断罪が似合ってる」



神霊アストレアが微笑む。


「さあ、魂の裁きを。癒しの聖者よ」



俺は手をかざす。

神霊の力が集まり、光が闇を裂く。癒しの魔法が、断罪の炎へと変わる。



•カイルには“傲慢の断罪”——永遠に戦えない体に。

•ミリアには“偽善の断罪”——記憶を消され、誰にも祈れない聖女に。

•ザイドには“知識の断罪”——魔法を忘れ、ただの凡人に。



彼らは泣き叫ぶ。


「こんなの…癒しじゃない…!」



俺は静かに答える。


「癒しとは、魂を正すこと。お前らの魂は、歪みすぎた。だから、焼いて整えた。それが俺の癒しだ」



 * **

断罪の宴が終わったあと、俺は冥界へ戻った。

神霊アストレアが待っていた。その瞳は、冷静で、どこか哀しげだった。



「癒しとは、裁きではない。お前は癒しを断罪に変えた。それは、神霊の器として正しいのか?」


——は? 今さら説教か?



俺は世界を救った。腐った魂を焼き、俺は世界を救った。腐った魂を焼き、癒す価値のある者だけを導いた。

それの何が悪い?



「癒しとは、魂を正すこと。だが、正すとは、焼き尽くすことではない。導くことだ」



神霊アストレアの言葉が、胸に突き刺さる。

俺は癒しを使って世界を救った。

でも、同時に多くの魂を“焼いた”。

それは、本当に癒しだったのか?



神霊の試練が始まる。

俺は、過去に癒した者たちの魂と向き合う。

村人、魔族、そして——元仲間たち。


彼らの魂は、断罪によって“整えられた”。

だが、そこに“希望”はなかった。

ただ、静かな絶望と、空虚。



俺は問う。


「癒しとは、希望を与えることなのか?」



神霊アストレアは微笑む。


「癒しとは、魂に“選択肢”を与えること。裁きも、赦しも、導きも——すべて癒しの形だ」



その瞬間、俺の中で何かが崩れ、そして再構築された。

怒りだけで癒しを振るうのは、ただの破壊だ。

癒しとは、魂に寄り添い、選ばせること。


俺は、初めて理解した。




 * **

「俺は、魂癒の聖者。癒す者であり、裁く者。そして——導く者だ」



神霊アストレアは頷いた。


「その言葉が、お前の癒しの形ならば、次の地へ進め。癒しの先にあるものを探せ」



俺は地上へ戻る。

今度は、癒しと断罪の両方を持って。

だが、そのどちらも振るう前に、魂に問いかける。


「お前の痛みは、癒されたいか? それとも、裁かれたいか?」


癒しは力じゃない。

それは、魂に寄り添う意志だ。


そして俺は歩き出す。

癒しの先にあるもの——それを探す旅が、今、始まる。

お読みいただきありがとうございます。

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