就活
よく、夢をつかむなんていうけど、一体どれくらいの人が夢をつかんでるんだろう、と丸山は思う。
「なぁ、おまえどこ受けんの?就活。」
そう、今はいわゆる就職活動の講習中だ。
「おれはさー、将来くいっぱぐれない、医者になる。」
そう答えるのは同期の右島だ。
「それにさー医者だったら合コンとかでもモテモテだぜ!」
「『モテモテ』なんて俺らの親父世代でも使わないような死語だ。」
「うっせぇ。細かいこといってんなよー。女々しいぞ。」
「女々しいの使いどころが間違ってる上に、それは女性差別につながるから気をつけろよ。」
「差別発言してなにか困ることでもあるのか?」
「女性蔑視は、女性の反感を買うぞ。一度ついたイメージは払拭しにくい。
医者だろうが、政治家だろうが、モテには致命的だろうな。」
「そりゃあ・・・・ そうだろうな。」
右島はふてくされたような顔押して、気をつける、と呟いた。
右島のかわいいところはこういう素直なところだ。
「・・・とにかく!」仕切りなおすように右島は言う。
「おれは医者になって経済的にも私生活的にもウハウハな人生をおくる!
薔薇色の人生だろ!」
右島のうっとうしいところは会話に死語が多いところだ。
ついでにテンションが高いのも何とかしてほしいところではある。
まァ、どっちにしろ、問題は。
「あのさ、医者になるには国家試験が必須だよ?」
右島が、とまった。
「もしかして医者の就活面接があるとか、おもってないよね。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・っおれは!社長になる!」
右島につかめる幸せがあるなら、ぜひとも手伝ってやろう、丸山は思う。