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お水をください

作者: ぽい

よくあるホラー

「お水をください」

大阪にある田舎の駅で、一人の女性がキャリーバックを枕にして倒れていた。彼女の右手には空のペットボトル、一時間ほど前に駅員が気を使って渡したものである。

「お水をください」

駅を出て右には交番がある。しかし警察官は何かの対応中で彼女に気づいていない。駅から出てくる人は気まずそうにちらりと彼女を見るが、誰も声をかけようとしない。仕事帰りの男は見向きもしない。彼女は、水をもらえないとあきらめたのか、身体の具合が良くなったのか、キャリーバックを杖代わりに歩き出した。



「お水をください」

駅を出て十数分歩いた先にある公園で、彼女はまた水を求める。しかし、駅前より人通りが少なく、日も沈んでいる公園では水をもらえない。彼女の左手にはチョコレート、公園に着いたとき、制服をきた女の子がこれでよかったらどうぞ、と赤くなった目をこすりながら渡したものである。

「お水をください」

くるると彼女のお腹が鳴る。左手のチョコレートを食べたらお腹をごまかすことができるが、喉がより乾く。公園には自販機がある。人はいない。キャリーバックを開いて中を見る。ギッシリと詰められた世界中の札束が地面にこぼれ落ちていく。急に強い風が吹き、お札が公園に舞う。月明かりだけが頼りのなかですべてをひろうのは不可能であった。

「お水をください」



公園を出て数時間、彼女はようやく自分の家に着いた。ドアを開けて水道の蛇口をひねる。勢いよく流れる水を手ですくい口へ運び、満たされた。


―――――


 水を求める女性が駅前で倒れていたとき、少し離れたところから私は見ていた。どこかの芸能人と思うほど整った顔と豪華な服を着た彼女が地べたに倒れているのを見るのは心地よかった。最初は声をかけようと思ったが、娯楽に飢えていた私は話のネタにしようと思って眺めることにした。彼女はずっと同じことしか言わなかった。しばらく待っていると急に歩き始めた。着いた先は公園だった。公園には先客がいた。同じ制服を着た女子。見覚えは無いけど、今日はあの日だし、なんで泣いているかは想像できた。女子がチョコレートを渡していた。水が欲しいって言っているのにチョコレートを渡すなんてひどい。影から見てるだけの私の方がひどいと思うけど。彼女が一人になってベンチにすわっている。相変わらず同じことを言ってる。さすがに飽きたし我慢できないくらい寒くなってきたから、声をかけようと近づいたんだけど、キャリーバックを開け始めたからやめた。そしたら中から大量の紙が舞い散った。暗くて何の紙かはわからなかったけどお札くらいの形をしていた。月明かりに透かしたら一万円札だった。私は必死になって紙をかき集めた。持ってたカバンがパンパンになるくらい集めたときには彼女はいなかった。でもキャリーバッグは残されていたから持って帰ることにした。重くなったカバンと左手にキャリーバッグ、ドキドキしながら家に帰る。緊張しているのか喉が渇く。めまいもする。ここはどこ?それにしても喉が渇く。カバンの奥にある水筒はお札が邪魔して取り出せない。誰か...

「お水をください」

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