鉄板の上 【月夜譚No.287】
こんなに暗い焼肉は初めてだ。
焼肉といえば、数人で鉄板を囲んでワイワイやるのが普通だろう。それが、現状はどうだろうか。中央でジュウジュウと肉が美味しそうな音を立てている中、顔を突き合わせた四人は一様に気まずい表情で誰とも目を合わせようとしない。
その内の一人――青年が重い空気を吹き飛ばすように、片手のジョッキを掲げた。
「ほ、ほらほら、そろそろ焼けたんじゃないか? 乾杯して食べよう……」
勢いよく切り出した言葉も、途中から尻すぼみになる。青年は笑みを凍りつかせて、表情を変えない三人に内心苦い顔をする。
久し振りにプチ同窓会をしようと三人を誘ったのだが、自分の知らない内にとんでもないことになっているとは思わなかった。
何でも、数年前に二人が恋人同士になり、以前から一方に恋心を抱いていた一人が先日浮気を唆して相手に見つかり、修羅場になったそうだ。ここのところ連絡を取っていなかったから、青年は知らずに三人を呼んでしまったというわけである。
青年は口を閉ざし、どうしたものかと考えながら焦げていく肉を皿に避難させた。