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「あぅ、ごめんね……私ね。今蓮さんの会社で社長秘書として働いてるの!凄いでしょ!葉月ちゃんより大人になって胸だってほら!葉月ちゃんより大きくなって…………おねえぢゃんも、っと、いっじょに、いだ、がっだっぁ」

もっと伝えたいことはあるだろうに、最後まで言いきれず、菜月は感極まって泣き始めた、そんな妹を元気づける様に葉月は泣きじゃくる妹を抱きしめて頭を撫でた。


「私ももっと、菜月と一緒に居たかったわよ。いっぱい背負わせて時間が来るまで抱きしめてて上げる。悠太、後2分ね……お姉ちゃんとお話ししましょ」


悠太は首を横に振った。弟の行動を葉月には理解が出来ない。

何故。自分を尊敬して、愛して、非行にまで走った弟が、自分との会話を拒否した。


「葉月姉ちゃんは、菜月姉ちゃんと楽しんでてくれ。俺は」

それだけ言うと悠太は視線を葉月から麗奈と話している真姫に移した。

「真姫ちゃん。麗奈との話しを邪魔してごめんな?俺ともどうだ?あと2分だって、3人で話そうぜ」


葉月は理解した、誰よりも優しかった弟は自分を選ばなかった訳では無い。

優しい弟は自分とも話したいのを我慢して、真姫を安心させる、喜ばせる為に真姫を選んだのだ。


「いいの?葉月と話せるんだよ?」

悠太とは話してみたかったけど大切な時間を自分に使う悠太に真姫は嬉しくも困惑した。


「姉ちゃんとはまた、話せる。言ったろ?麗奈は俺の家族だから麗奈の妹の真姫ちゃんも家族だ。俺はお兄ちゃんだからな、妹に優しくするのは当然だ」


「……悠太、ありがとう」

麗奈が礼を言った。悠太が頷いて答える。


「今は力のお陰で話せるし笑ってるけど、無表情で声の出せない真姫ちゃんのお姉ちゃんは俺が必ず幸せにするから、安心して欲しい」


悠太が頭を撫でてくれた。女の子見たいな顔なのに、白い歯を見せて笑うボーイッシュな悠太を真姫はかっこよく感じ始めていた。


「うん!ねえねえ悠太!」

「なんだ?」

「お兄ちゃんって読んでもいい?」

「もちろんだ。俺も真姫ちゃんみたいに可愛い妹が欲しかったんだ」

「あれ?お姉さんは?無口でミステリアスなお姉さんは?」

「麗奈みたいな姉も欲しかったぞ。うん。うちは姉づくしだけどな」

「わーいお兄ちゃーん!!!」


姉妹に揉みくちゃにされる悠太の姿を見て、葉月はそっと微笑んだ。


永遠にも感じられる尊い時間は無常にも過ぎていき、葉月と真姫の体がうっすらと透け始めた。

楽しかった時間の終わりがきたのだ。


「時間だね。真姫と思い付いたイタズラだったけどこうも上手くいくとは思わなかったわ。悠太、麗奈ちゃんありがとうね」

「菜月も、雪人も、お姉ちゃんもお兄ちゃんも、長生きしてね。ありがとう」


どんどんと、体が薄くなっていく2人を全員で見送っている。

そこで悠太が1歩前に踏み出し、口を開いた。


「姉ちゃん。俺は馬鹿ばっかりしちまったけど、今は約束を守って、姉ちゃんの弟だって胸張って言えるつもり!だから姉ちゃんも安心してくれ」

悠太は恐らく今生の別れになるであろう姉に、涙を堪えて本心を告げた。

「大丈夫。私はずっと見守ってる。ゆうた……」


言葉の途中で消え去った姉の口は確かに愛してると言っていた、それだけで悠太の心は暖かく、満たされていた。


室内を2人が出てきた時同様、眩い光が包んでいく。

彼らの未来を照らすように。


〜fin〜

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