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光が徐々に収まっていき、麗奈と悠太の間に人が2人、お互いと向かい合うように立っていた。
雪人と菜月も脱帽した様子で口をあんぐりと開いて2人の人物の顔を交互に見ていた。悠太と麗奈も例外ではない。
泣いて縋って、夢にまで見た人物に会えたのだ。
「もう。悠太ったら無尽蔵に霊力を使わせるんだから」「ほんとほんと、お姉ちゃんもいつからイタズラするようになったのよ。私も霊力使いすぎてバテバテよ」
悠太は自然と涙が込み上げてきて、流れ落ちた。
尊敬し、ずっと背中を追い続けた姉の姿を見て。
麗奈は腰を抜かし、膝から崩れ落ちた。
声と表情を失うほど愛した妹の姿を見て。
正にクリスマスが起こした奇跡。
悠太がおいおい泣いている姿を見て、悠太の姉、葉月は母性を感じさせるような微笑を浮べると、悠太の頭に手を伸ばし、優しく抱きしめた。
「泣かないの?男の子でしょ?久しぶりに会えたんだから……私の部屋に行って愛を確かめ合いましょ?」
「馬鹿葉月。煩悩の数だけ頭に石を投げようか?」
口を開けば、弟を恋愛以上の目で見てしまう残念な姉へと成り下がった彼女は死後、本来であれば叶うことのない感動を盛大にぶち壊した。
「お姉ちゃん。久しぶり。悠太は絶対離しちゃ駄目だよ。隙があったら子孫を残して。葉月に取られないよう既成事実を作っていこ」
こちらもぶち壊しだ。麗奈も若干引き気味だ。
「葉月ー!!!」「葉月ちゃーん!」
雪人と菜月も再会の輪に加わった。
その横では秋山姉妹が久しぶりの再会に抱き合いつつも、どことなく寂しげな雰囲気を漂わせている。
恐らく、悠太が葉月に盗られたようで悲しいのだろう。真姫は姉の胸中を想像して、姉が妹離れしている事を彼女は少し寂しく思いつつも喜んだ。
「悠太は真姫も妹だって言ったのにね」
こっそりと姉が理由を教えてくれた。
自分達がハブられているようで悲しかったのね、と真姫は姉の頭を撫でた。
「おいおい、菜月姉ちゃん、雪兄。真姫ちゃんも麗奈も家族なんだぜ?」
自分と姉を家族の輪に加え、抱きしめあった。この人に姉を任せて正解だった。小さな真姫は、見た目とは不釣り合いな精神年齢で密かに喜んだ。
――――――――――
「各自言いたいことはあると思うけど、力を使いすぎて霊力が残ってないから時間が無いの、持ってあと5分てところね。てことで一言ずつ話そっか」
ひとしきり、感動を味わった後、葉月が言った。
時刻は2時35分、再会から5分と経っていない、悠太と麗奈は今更になってイタズラに力を使いすぎた事を後悔した。
「葉月。俺はお前が好きだ!お前が亡くなった後も、俺はお前を愛している!だから、俺があの世に行ったその時は……結婚してくれ!!!」
雪人の全身全霊の告白に悠太は息を飲んだ。姉はなんと答えるのかドキドキしている。
「無理よ。私は悠太と結婚するの。だから雪人はこっちでいい人探して結婚して。私の妹とかオススメよ。料理は難があるけど気立てはいいし、癒されるし。最高ね」
意外にもスパッと切って捨てた。でもこれは悠太が思う姉なりの優しさだ。
「そうか……ハッハッハ!そうだな!葉月は弟スキーだからな!」
と言って雪人は1歩下がると菜月の背を押した。
「は、葉月ちゃん。なんで、んむ」
菜月が話し始めると葉月が菜月の唇に指を添えて言葉を止めた。
「そんなくだらない事なら後80年後くらいに聞くわ。だから今は菜月の話を聞かせて頂戴」